【完結】女神に殺されて死神にされました。でも助けた令嬢がドストライクで困ってます

黄色いひよこ

文字の大きさ
14 / 34
無実の罪で投獄された令嬢

投獄された令嬢⑧

しおりを挟む

ヘンディクも、零の後ろに小さな馬の形で光を放ち浮かんでいる。


「改めて、初めまして。私は『女神フォルトゥナ』の代弁者。御使いをしております、レイ=ツツイと申します。此方は神馬、ヘンディク=アトラタンと言います。貴女は、キャサリン=レイアース伯爵令嬢でお間違い有りませんね。女神の要請により、貴女を保護しに参りました」


そう言って、零はキャサリンに頭を下げた。 

目を見開いて呆然としているキャサリンに、零は軽く首を捻るように傾げた。


「俺の言う事、解りますよね? 運命の女神フォルトゥナの事、御存知でいらっしゃいますよね? 」


普通よりもやや乱暴な言葉使いであった彼が、丁寧な言葉使いに変えて、疑問符を飛ばす。

それこそ御使いらしい口調で。

逸れを聞いてキャサリンは、ぼんやりと彼らを見ていた事にはっと気付いて、慌てて、


「はっ、はいいっ!! 知ってますぅ、ごめんなさい! 」


と、コレが素の彼女なのだろう、砕けた言葉で非礼を詫びたのだった。








「あの……、ですね。御使い様に対し、大変申し上げ難いのですが、わたくし、お話をする時には目を見てお話しする事を心情としておりますの、宜しければ、フードを取ってお話し頂けませんか? 」


零は、キャサリンに丁寧にそうお願いされて、目を見張った。

確かに、顔を見せずに話をするのは礼儀に反していると言うのは、零にも思う所はあったのだ。

けれど顔を晒すのは彼に取って少し、嫌かなり躊躇する行為だったから、キャサリンにも目深くフードを被った形で対応していたのだが……どうやらそうも言ってられないようだった。

だから零は、キャサリンに顔を隠す理由を正直に掻い摘まんでだったが、説明する事にしたのだ。




それは、つい最近の出来事だった。

この顔が、人を狂わせる事になった。

初めて地上に降り立った時、通りかかった男女に道を聞いた。

ただ、逸れだけだった。

なのに、一瞬の内に女が零に一目惚れをした。

その時、慌ててヘンディクがやって来て、零を咄嗟に背中に乗せて、その場を後にした。

飄々として何事にも動じないように見えるが、そうしなければこの男は自分を責めて心を壊しかねない。

それだけ心が優しすぎるのだ。

零の美貌を見る事によって起こる結末を、彼にに見せる訳には行かないと、ヘンディクは結論付け、飛び立ったのだった。

ヘンディクは、この時自分の落ち度に舌打ちしたものだった。

馬だから実際には舌打ちなど出来ないのだが……。

ヘンディクが犯した落ち度とは。

その時、其処に居たのは女だけでは無かった。

男も彼女の隣に居て、二人は仲睦まじいカップルだったのだ。

その瞬間までは……。

女だけで無く、隣にいた男も零に思いを抱き、彼が欲しくなったのだ。

それはもう、死にたくなる程に。

その結果、男女は行き過ぎた喧嘩となり、それは殺し合いに発展したのだった。

思いを寄せる本人が其処に居ないと言うのにだ。

ヘンディクは、その殺し合いを見る事無くその場を立ち去ったが、彼ならみなまで見る事無く解った。

そう、己も昔、同じ体験をしたから。

『フォルトゥナの守護騎士』にならない限り魂の輝きは止まらない。

しかも、零の魂の輝きはヘンディクの比では無かった。

並外れた善行の持ち主なのだ、零と言う男は。

魂の輝きは顔と体をそれに見合った形に変化させる。

良しきに付け、悪しきに付け。

零は今、昔のヘンディクと同じ道を歩いているのだ。

けれどこの事はヘンディクしか知らない。

そして教える事も出来ない。

彼は零の後ろで見守るしか無かった。

零は己の人を魅了し、破滅に導く己の姿の事をキャサリンに説明し終え、ヘンディクにどうするか、お伺いを立てて見た。


「ヘンディク、どうだろう? 」


と。

そうすると、ヘンディクはしばし考え、


「フォルトゥナ様が会いたいと仰った女性です。彼女なら大丈夫ではないかと思います…… 」


と、言う言葉で零はフードを取る決心をし、それと同時に、ぱさりとフードを跳ね上げ、キャサリンを強い黒金剛石の瞳で見詰めた。

嫌、見つめ合ったのだ。

キャサリンの瞳も、強い力で零を見詰めていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...