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無実の罪で投獄された令嬢
投獄された令嬢⑦
しおりを挟むそして、キャサリンとばっちり目が合った事にはっとして、零は慌てて床に落としていた外套を頭から被った。
因みにコレも闇色である。
そう、彼は全身黒で包まれていたのだ。
「キャサリン壌、すまない。この顔、気味が悪いよな。ちょっと後ろ向いてて、外套をちゃんと着るから」
そう言う彼の声音は、あのお風呂で聞いた声と同じでとても優しい。
キャサリンは彼にあまりの美しさに驚いて見惚れたと言う自分の所業を、誤解してほしく無いと切実に思った。
後ろを向いて外套を正しく着込む彼に、キャサリンは慌てて彼の背中に声を掛けた。
「気味が悪いなんて……。そんな事有りませんわ。貴方様が余りにもお美しくて、かっこよかったものですから、わたくし、見惚れてしまいましたの…… 」
そう言ったキャサリンは恥ずかしさのあまり、顔を耳まで朱に染めて俯く。
「え? 」
外套のフードを目深に被った零が、そんな彼女の言葉に、慌ててキャサリンを振り返った。
もう口元しか見えない彼に、少し、いやかなり残念に思うキャサリンが、まだ服を着ていない事に気付いた零は、慌てて外套から手を出してキャサリンをその中に包み込んだ。
「何で、まだその格好!? 凍えるだろうが! 」
自然と語尾はキツくなる。
「あ、そうでした。足元が凄く暖かかったものですから、全く気になりませんでしたわ。でも、早く着なきゃ淑女としては失格ですわね…… 」
にこりと笑うキャサリンに、零が眩しいものでも見るように彼女を見ていた事に、誰も気付かない。
当たり前か。
顔の殆どをフードで隠しているのだから。
キャサリンは零の外套の中から出て、手早くワンピースを着てしまうと、美しいカーテシーを作ってお辞儀をして見せた。
その美しい姿勢に、零は息を呑む。
そして、ふっと口元を緩めた。
そんな零を認められたのは、ヘンディクだけだ。
彼は微笑まし気に零とキャサリンを交互に見るとヒンと軽く鳴いて笑った。
勿論、零が目を眇めて見た事には気付かない振りを決め込んだが、外套からキャサリンが出て行った時、少し淋しく思えた自分の感情に驚いて愕然としていた事に気を取られ、直ぐに意識をヘンディクから外してしまった。
そして零は、キャサリンを見詰めた儘黒金剛石のような瞳を緩く細めて、懐かしい物でも見るように優しく輝かせていた。
「さてと、もう本題に入れるかな? 」
あれから数分、ワンピースの他に、キャサリンは、お揃いの生地で作られた手袋と帽子、マフラーと言う小物を零からどんどん身に付けさせられて、すっかり身体は温もっていた。
零のストレージからは、色々な物が引き出されて、牢屋の中はかなり快適に過ごせるようになってしまっていた。
ただ、寒さだけはまだそこらかしこに残っている。
だから、と言う訳かどうかは解らないのだが、このキャサリンの重装備っ振りの説明を付けるとするならば、『寒さ』しか無いと言えた。
それに加え、ふかふかの毛足の長い絨毯の上に、クッションを3つ程転がして、逸れをキャサリンの周囲に置いて座りやすくしておくと言う徹底ぶりは最早、過保護としか言えなかった。
そして零は外套を着たまま、キャサリンの向かい側に胡座を掻いて座り込んだ。
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