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フォルトゥナと守護騎士
女神光臨②
しおりを挟む「あの……、女神様のお話とは…… 」
「あらぁ~、零くんから聞いてな~い? 私がぁ、貴女に会いたいと言ってるって事ぉ…… 」
「あ、はいっ、その事についてはお聞きしております」
キャサリンの言葉に、フオルトゥナはにっこりと笑う。
「フォルトゥナ、話は戻ってからだ。此処は話をする場所じゃない」
「そうですね、私も零の意見に賛成です」
ストップを掛ける零に、ヘンディクが同意する。
「そおねぇ、確かに」
フォルトゥナはそう言って頷くと零を見やり、カラカラとした口調で言い放った。
「んじゃ、レーイ。私達、先に帰ってるわねぇ」
と、唐突にである。
思わず、
「はあっ? 」
と、零は言い返すが、唯我独尊の女神はあっけらかんと言い放った。
「だってぇ、久し振りの旦那様の人型なんだも~ん! ちょっとくらい察してよね~。あんた達もこの際だから、仲、深めて、チューくらいしてみせなさいよ」
と、フォルトゥナは至極さり気なく爆弾を投下すると、『先に帰るのはマズいでしょう』と唸るヘンディクを引き摺って、この場からかき消えてしまった。
その場には、唖然とする零とキョトンとするキャサリンがぽつねんと取り残されるのみであった。
「ちっ…… 」と、零が小さく舌打ちをするが、その顔の大半がフードに隠れていたせいで、キャサリンには彼の悔しげな舌打ちは聞こえなかったのだった。
それでも数秒後には復活した零は、キャサリンに向き直って言葉を掛けた。
「驚いたでしょう。女神があんなに女神らしく無くて…… 」
キャサリンにも分かったフードの中の零の微苦笑。
それに対して、キャサリンは左右に首を振る。
「何だかお二人、仲が良くて羨ましかったですわ。わたくしは家族に嫌われて居ましたから…… 」
そう言うと、キャサリンは寂しげに微笑んで見せた。
そんな時だった。
「違う!違うの、キャサリン!! 」
そう叫んだのは、側でキャサリン達の様子を窺っていた女性と、その家族。
そう、それは、キャサリンの両親と兄であった。
彼等が、不安げな顔で彼女と零を見ていたのだ。
とっさに零がキャサリンをかばい、彼女を自身の後ろに隠す。
けれどキャサリンは、零の腕に触れ、
「零様、わたくし、家族ときちんとお話ししとう存じます。其の後でなら、何処へでも着いて行く所存ですわ。宜しいでしょうか? 」
決意に溢れた強い瞳で、彼女はそう言った。
零がフードの中からジッとキャサリンの目を見つめると、彼女の揺るぎない意志が瞳に現れている事に気付く。
そんな彼女に、零がふっと笑みを零した。
けれど、誰もそれに気付かない。
キャサリンでさえも。
でも、それで良いのだ。
「良いよ。それくらいの時間、君の為に取っても問題有るまい。キャサリン…… 」
「はい……… 」
「後悔の無いように…… 」
零はそう言うと、横にそっとズレて彼女に正面を明け渡した。
彼等とキャサリンが対峙する為に…… 。
最初にキャサリンに声をかけたのは、彼女の父親だった。
「キャサリン、済まなかった。お前に随分寂しい思いと、辛い思いをさせてしまった。本当に申し訳なかった」
「お父様…… 」
キャサリンの父が、背中を曲げて娘に対し頭を深く下げる。
そして、母や兄もそれに習ってキャサリンに頭を下げたのだ。
そのまま2人は顔を上げると、母親が口火を切った。
「謝って済む問題では無いと言うのは良く解っています。けれど、謝罪の言葉しか思い付かなくて……。いくら操られていたとは言え、その時の記憶も感情も、私は、しかと覚えて居ますもの。本当は貴女が可愛くて仕方が無かったと言うのに、わたくしは…… 」
キャサリンの母親がワッと泣き崩れた。
彼女の嘆きは本物だ。
勿論、その言葉も本心だ。
死神と呼ばれる繊細な彼だからこそ解る、人の心の機微。
零は、今更だろうと呆れつつ、こればっかりは彼女の問題と。
口出しするのも憚れる。
と、彼は思うのだ、多分。
「お母様、そのお気持ち、私は嬉しく思います。けれども、もう遅いのです。ご両親様、お兄様、皆様の心中、お察し致します。けれど、わたくしの事は、もう、死んだ者とお考え下さいませ。わたくし、彼と共に行き女神様にお会いして来たく存じます。女神様がこんなわたくしを所望して下さるのなら、わたくしは女神様に従いたいと思います」
キャサリンは、そう三人に宣言すると零に向き直った。
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