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フォルトゥナと守護騎士
女神光臨
しおりを挟む「こっちの方がよっぽど『フォルトゥナの守護騎士』らしいよ」
零は肘でコツコツとヘンディクを小突くと、更に彼の背中を押し出す。
「ちょっ、ちょっと零」
そうやってキャサリンの前に押し出されたヘンディクは、眉尻を下げたへの字眉で彼女を見やった。
「まぁ……、アレです。零の言う通りですよ…… 」
そうヘンディクが言った時だった。
零の後ろから透き通るような高音で緩くて甘く柔らかな物腰の声が響いたのだ。
少しアホっぽいのが玉に瑕な声が。
「あらぁん、零くんだって、一応『フォルトゥナの守護騎士』なんだけどなぁ~。ふぅぅぅ~っ」
そして最後の言葉と同時に、零の耳に風が当たる感触を感じて、彼は思わず叫んだ。
「うわぁっ!? 何すんだっ!? この阿呆女神っ」
その言動は、身も蓋もない。
「何って、耳に息吹きかけただけじゃな~い」
零が、一瞬しゃがんで女神のたおやかな腕と言う拘束から抜け出す。
そう、其処に浮遊していたのは、フォルトゥナ自身だった。
逸れを認めた零が、声を荒げてフォルトゥナにまくし立てた。
「あんた、こんな所で何してんだよ! 降りてきて大丈夫な訳無いだろうがっ」
だが、そんな調子でまくし立てられても、フォルトゥナは些かも動じない。
それどころか、のほほんとした口調で零に言い返した。
「零くんがヒロインを葬送ってくれたから、この世界が私の管轄に戻ったのよ」
そう、その口調は確かに嬉しがって弾んでいる。
本音がだだ漏れなのだ。
そして相変わらずフォルトゥナは俺様女神であった。
「んで~、零くんまだそんな格好してんの? もう、戦闘は済んだんでしょ。だったらぁ、サッサと私の御使いに戻りなさい! 」
零の言葉には大した反応は見せなかったフォルトゥナだったが、どうやら彼の死神姿はお気に召さなかったらしい。
無理矢理零のフードを跳ね上げると、骸骨の片顔に手をやって、カチッと固定されていた面を取り去った。
そんなフォルトゥナの暴挙に、零は思わず片手で顔を覆う。
その手は骸骨等では無く、普通に肉の付いた骨ばった手であった。
「いきなり剥ぐなっ!! 」
「だってぇ、やだったんだもんっ! 」
零の怒りに、ものともしないフォルトゥナである。
「こらこらレティ、そんな事をしてはいけませんよ。零が怒るのも無理も無い……」
そんな彼女を窘めたのは、ヘンディクだった。
その隙に零もフードを目深に被り、今度は口元だけを残して総てをおおい隠してしまった。
「あらぁ~、本当に顔を見られるのが嫌なのね。とても綺麗な顔をしているのに、本当、残念だわぁ」
と、全く悪びれず、ヘンディクの諫めも通じないフォルトゥナに、零の口調は著しく冷たく堅い。
そして、投げる言葉はぞんざいで、はっきり言ってどっちもどっちだ。
その証拠に、零の態度と口調のそれは女神を敬うそれでは無かった。
「ほっといてくれ。嫌なものは嫌なんだよ。それより、今一度聞く。あんた、何しに此処に降りて来た。俺をおちょくる為じゃ無いだろう」
そんな零の言葉に、フォルトゥナは不敬とも思わないのか、ただプクッと河豚のように頬を膨らませて零の問に答えた。
「だってさぁ、待ちくたびれたんだよ。キャサリンを連れてきてって言ったのに、零くんったらとんでもなく遅いんだから」
頬を膨らませたままの女神に、零は呆れるしか無い。
キャサリンを助け出す為に神殿を出た時より、かなりフランクで子供っぽく変化した女神に、零は困惑していた。
この女神、その身に何人かの人格を抱えている。
そうすることで精神を若返らせ、幾つもの世界を渡っているのだ。
勿論、何故女神がそう自分を造っているのか、零には知る由もない。
知りたいとも思わない。
ただ、今はまるで、我が儘な妹を相手にしているようだと思っていた(生前は妹では無く姉が居たのだが…… )。
そんな女神の言い分に、零は吐息を吐くしか無かった。
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