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フォルトゥナと守護騎士
黒衣の騎士と守護騎士
しおりを挟む「レイさまっ! 」
颯爽と歩いてくる零を、うっとりと見詰めるキャサリン。
自分の中に、芽生えた感情が一体何なのか、気付いた所だったのに、今、はっきりと解った零の事。
彼の姿を認め、絶望と言う名の悪夢に捕らわれるキャサリン。
彼の外套の中の姿は、そう、騎士のそれだった。
剣だって帯刀している。
── こんなのって、無いですよね。私、気付いた途端に失恋なのでしょうか? ──
フォルトゥナの守護騎士。
キャサリンの脳裏に浮かんだのは、そんな言葉。
誰もが知っている事実。
フォルトゥナの守護騎士と言うのは、女神だけのただひとりの騎士。
別名、女神の夫君。
運命の女神フォルトゥナの神話を知る者なら誰でも知っている、守護騎士と呼ばれる彼女の夫の存在。
それが零だったとは……。
女神の御使いの正体は、死神では無く、女神の夫である守護騎士。
キャサリンの目の前が、徐々にぼやけてゆく。
彼女を見て、微笑みを浮かべていた零の表情が俄かに曇る。
悠然と歩いていた足が早足になり、遂には駆け出してキャサリンの元に馳せ参じていた。
それもこれも総て、キャサリンの目尻に溜まる大粒の涙のせいだ。
「どうした!? 何処か怪我でもしたのか? それとも痛いのか? 」
焦っているのが有り有りとしている零の声音。
その言葉と声を聞いてキャサリンは静かに頭を振った。
零を見上げ、意を決して小さな唇を開く。
「レイ様は守護騎士だったのですね…… 」
「へっ? 」
「わたくし、非礼ばかり……、申し訳有りません。女神様の夫君に対してわたくしは…… 」
「えっ、えっ、ちょっ、ちょっとタンマっ、ち、違うっ、キャサリン、それ、誤解だからっ!!! 」
キャサリンの言葉を聞いて、慌てふためくのは、零の方だった。
「俺はただの騎士、フォルトゥナの守護騎士はあっちぃ!! 」
そう言って零が指刺したのは、なんと、
神馬、ヘンディク=アトラタンだった。
「えっ? ええっ!? でもっ、ヘンディクさんは神馬さんですよ? 」
「単に馬に化けているだけです。あの人は元々獣人で、元来、人型で生活してます。あの人…… 」
がっくりと肩を落とした零は、ジトンとヘンディクを横目で睨み付けた。
まるで誤解を解いてくれと、言わんばかりに。
「しょうがないですねぇ……。このまま知らんぷりをするのも面白いんですが、何せ不詳の弟子は、泣く子も黙る死神ですからねぇ……。後が滅法、怖いので…… 」
と、言うとヘンディクは、パアッと身体を光らせると、それが終息する頃には人の姿に変わっていた。
其処に立っていたのは、真っ白な騎士服とマントに身を包んだ、美丈夫だった。
彼は、零とは対称的に真っ白であった。
流れるような長い銀髪に、金色の瞳を持っている。
正に白馬がそのまま人間になった、そんな感じであった。
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