【完結】女神に殺されて死神にされました。でも助けた令嬢がドストライクで困ってます

黄色いひよこ

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フォルトゥナと守護騎士

黒衣の騎士と王太子

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「うわあああああああ~っ!! フィーネ、フィーネ!! 貴様ーっ!! 」


半狂乱で叫ぶ王太子が、腰に下げた装飾剣を抜刀し、零に襲い掛かった。

ひらりと宴席を飛び越え襲い来る王太子の剣を、彼は手にする刀で無造作に受け流す。

骨だけの腕で王太子を凪払った零は、無様に横転した王太子の胸を、これまた骨だけの左足(ブーツを履いているのでそうは見えないが)で踏みつけ、喉元に刀を突きつけて一瞥した。

零は騎士だ。

嗜みで剣を習う王太子とはレベルが天と地程に違う。

逸れを王太子も解って居たのか、総てを諦めた声音と表情で言った。


「殺せ……、殺してくれ。フィーネの居ない世界で生きていくなど考えられない。そもそも、お前に一矢報いよう等、出来るとは思って無い」


総てを投げ捨て、大の字に転がる王太子は、零を睨み付け瞳の力で懇願している。

零は身体をくの字に曲げて、力を込めた左足に肘を着いて、王太子に美麗過ぎる顔を寄せた。

普通なら此処で、ヒロインのように頬を染めるのだが、王太子の態度は全く持って変わらなかった。

そう、心から愛するものが居れば、彼のように零に纏わされる事は無いのだ。


「珍しいな、あの女はお前程、お前の事を愛しては居なかったのに、お前はあれを愛するのか」

「愛する事に、愛される見返りなど必要無い。確かに、愛し愛されれば本望だが、愛は自由だ」

「へぇ……、それがあんたの持論? ははっ、この偽善者が。愛する事の自由を説くのは個人の自由だが、だからと言ってそれが、他者を傷付けていい理由にはならねえんだよ。お前、知ってるか? そう言う考えを、エゴと言うんだよ。よお~く、周りを見て見ろ…… 」


零がそう言いながら横手を目線だけでチラリと見ると、王太子も首を横に向けた。

其処には、操られた者の末路が見て取れた。

其処には、累々とした屍の中に点在する立ち竦む人が、指折り数えられる程度に居る。

屍の中に呻き声が転々と聞こえて、キャサリンの叱咤によって正気に戻った人が、彼女の指示を得て呻く人々を救出していた。

その光景を見て、王太子は驚愕した。


「コレがあの女が断罪された最大の理由だよ。王太子、この光景を良く見ろ。これでもまだ死にたいと思うか? 王太子とあろう者が、彼等を見捨てて、逃げるのか? 」

「くっ…… 」


王太子が思わず顔を背けた。

零はその行動すら許さない。


「顔を背けるな! その節穴の目でよく見ろ! 愛してたなら、何故こうなるまでほうって置いた!? 何故、止める勇気を示さなかった!? 簡単だ、嫌われたく無かったからだ。見返りなど求めんという口で、お前は『嫌われたく無い』と言う見返りを求めた! お前の言うことは、ただの詭弁だっ!! 」


痛い所を突かれた。

まさしく、言われた通りだった。

王太子は言い訳の言葉すら見つけられず、口を閉ざした。

完膚無きまでに叩きのめされた。

そして、今になって漸く目が覚めた。


「王が病床にある事は解っているんだろう? ならお前がこの国を立て直せ。誠意を見せろ。いい加減、目を覚ませ……… 」


零はそう言って踏みつけていた足をどけ、王太子を立たせた。

そうして、ようやく零は愛刀を鞘に納めた。

そして、改めて辺りを見渡す。

零は、ヘンディクを見止めると其方に向かって緩やかに一歩を踏み出した。


「死神っ、私は、それでも彼女を愛してるんだっ…… 」


王太子が投げ掛ける言葉に、振り返った零はふっと笑みをこぼした。


「別にいーんじゃねぇの。一人くらいそんな酔狂な奴が居ても。まぁ、せいぜい祈ってやんな。あの馬鹿が改心する事をさ。必死に祈れば、運が良けりゃフォルトゥナに届くかもよ。あんたの祈りがさ…… 」


そう言って零は踵を返して、ヘンディクとキャサリンの元へ、戻って行った。
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