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第二章 銃学科編

妹とは時には真摯に

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「平松さん、三井くんと、向井さん、生徒会入りおめでとう。私のクラスから三人も生徒会入りするなんて、誇らしいわ」

 銃学科C組担任である早見咲はアメリカ魔法工科大学の銃学科を卒業した秀才だ。アメリカの中でのトップの大学だ。早見は大学を卒業した後、アメリカの魔法工学部隊に所属していたという噂もあったが目の前にいるほんわかしている人とは思えなかった。

「私と湊は、雑用ですけどね」

桜子は湊の背中を叩きながら謙遜けんそんする。あまりにも強く叩いてしまったので湊はむせていた。

「ゴホゴホ、俺もそうですね」

「私も、この前、初めて入ったので、まだまだです」

平松は恥ずかしそうにしながら、髪の毛をいじる。

「この学校の自治をしているのは生徒会です。強い権限がある生徒会であなたたちの活躍を期待しています」

早見はそれだけを言うと、会話もなく、湊たちを帰らせた。


「早見先生って、何考えているかわからないところあるよな」

湊は帰り際、桜子と平松と話す。

あの一件以来、湊は桜子と平松と一緒に行動することが多くなった。今日は生徒会がなかったため、三人で早めの下校だった。

「そうね。私も何考えているかわからなくて怖い時ある。訓練の授業の時も、冷静にこうなんというか、こなしているという感じだし」

平松は下駄箱でローファーに履き替えながら答える。

「私はいい先生だと思うけどな。そうに思ってたの。こよリン?」

桜子は平松小和のことをこよリンと呼んでいる。平松本人も「こよリン」という名前に最初は抵抗していたが、諦めたように、今は何も言わない。

「平松、そうだよな。なんかオーラみたいなのを感じる」

「なにさ。二人は剣のプロフェッショナルだからわかるかもだけど。通じ合っているみたいで。ずるい」

平松を放課後呼び出してしまったことで、クラスの人間には湊、桜子、平松の三角関係を疑いが持たれている。否定しているが、より疑いを持たれるのが今の現状だ。

「そんなことないよ。私たちも、プロフェッショナルと呼べるような力量じゃないし。ただ、そう思っただけ。そうだよね、湊くん?」

急に下の名前を呼ばれた湊は反応が遅れてしまう。

「あ、ああ、そうだな」

桜子の疑いの目を強く、向けられてしまう湊。

「何か、二人、怪しい?もしかして、付き合ってるの?」

疑惑の目を向けられた小和と湊は慌て、ふためて否定する。

「ち 違うよ。桜子ちゃん」

「ち、違うんだよ。桜子」

桜子は明後日の方向を見ながら、湊と小和の話を聞いていた。

「ふーん。それなら、いいけど」


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湊が帰ると、道場の方から竹刀の音が聞こえた。

「おっ、やってるなめぐみ?さすがだな」

「なんですか、お兄ちゃん。ラブコメの匂いがぷんぷんします。近寄らないでください」

めぐみは何事も無かったように、素振りを再開し始める。

「ラブコメの匂いって何だよ?」

「女の匂いということです」

湊は最近、桜子と平松と帰っているため、そのことを咎められていた。

「俺も久しぶりに練習していいか?」

「勝手にすればいいです」

めぐみは一瞥もしないで話す。

道場着に着替えると小さい頃と同じように、めぐみの隣で素振りを始める。



「はぁ~」

「めぐみどうした?」

湊はめぐみの大きなため息に驚く。冷めたような目でめぐみは話しはじめる。

「しょうがないから、試合をやってあげますよ。お兄ちゃん」

めぐみはやれやれ感を出しながら、湊を試合に誘う。

「おっ、試合やりたかったのか。いいぜ」

港はやる気満々に答えると、めぐみのため息が大きくなったような気がした。


「お兄ちゃん、試合は3本勝負です」

めぐみは魔法の刀デバイスを展開して、構える。

「前と同じルールだよな?」

湊も同じように魔法の刀デバイスを展開をする。めぐみと湊は小さい頃から試合をしている。湊の方が兄であるため、勝つことが多かったが、最近は恵の方が優勢だった。

「お兄ちゃんなんて、こてんぱんにして。女と遊んでいる暇なんてないと、わからせてあげます」

めぐみは強く、デバイスの柄を握る。

「あのな。何回も言っているが生徒会の用事で遅くなったりしていて、部活できないくらい忙しいんだよ。九条会長がこき使うから」

「また、美人会長さんの話ですか?問答無用」

疾風伝来しっぷうでんらい

相手の間合いにすぐに入り、中断から上段に切り込みを入れる。刀の魔法の中でも、風を使う者はあまりいない。めぐみの刀技で得意なものの一つだ。

湊はいきなりの斬り込みに、少々驚いた。湊の太刀がめぐみの太刀を払いのけた。

「めぐみ、お前、いきなりは危ないじゃないか」

「お兄ちゃんに喋っている暇はありません。」


黒風白雨こくふうはくう


力強い太刀筋で、細かい雨までもが、湊に襲いかかる。

「お、おい、さっき道場着に着替えたのに。びしょ濡れだよ」

「こうなったら、泉源水狸せんげんすいり

湊も水源から溢れ出す水でめぐみに対抗する。

「ちょっとお兄ちゃん、びしょ濡れじゃんか!」

「俺だって、台風が来た後みたいに服がひどいことになったぞ」

互いにびしょ濡れになった道場着を見せ合う二人。もう勝負なんか関係なく、どちらが、ずぶ濡れにするかを勝負することになっていた。

「次でお兄ちゃんのパンツまで濡らせてあげますよ」

「おい、女の子なんだから、言い方!というか、やめろよ?」

必死にめぐみを止めようとするが、めぐみは、刀のデバイスを空中に掲げる。

「くらえ、沛雨はいう!」

道場の中は、シャボン玉くらいの雨粒が降り注ぎ、当たり前だが、大惨事となる。




「またしても、くらっちゃったわね」



道場の中には、お母さんがいた。お母さんはエプロンを着たまま、ふつふつと肩を震わせていた。


「えっお母さん?違うんだよ。これはお兄ちゃんが汗かいたから、水を出してくれないかと言われたんだよ」


めぐみは、ものすごい勢いで嘘をでっち上げる。


「おいおい、嘘つくなよ。元はめぐみが水魔法使ったからじゃんか。母さん、違うんだよ。俺は最初止めたんだよ」


お母さんは、道場の悲惨な床を見る。当然だが、学校の設備ではない道場で魔法を使えば、道場の床に水溜りができていた

「あなたたち、本当に兄妹喧嘩が好きなのね?」

お母さんは、湊が通っていた魔法高等学校の出身で腕時計デバイスを展開させる。

「#青天白日__せいてんはくじつ__」

みるみるうちに、まわりの水溜りがひいていき、乾く。


「あなたたち、この水溜り、どうするつもりだったの?」


「「・・・・・」」



「何も言えないようね」

お母さんの魔法のおかげで床は乾いたが、未だに3人の服は濡れたままだ。

「あなたたちに罰として、一時間その床で正座しなさい。その後お風呂入りなさい。お母さんは先にお風呂入って、夕食の準備するから」

「風邪引くといけないから。ウォーム」

お母さんは慈悲で水に濡れてしまった服を簡易魔法で乾かしてくれる。

「「ありがとう」」

二人は感動で声を合わせて感謝を言う。

「それじゃあ」

正座する二人を後にお母さんは出て行った。



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「なんでお母さん、タイミングいつも悪いのかな」

めぐみが正座で痺れてきた足を少しばたつかせた。

「そうだな。でも、今回は水溜まりを作るほどやっためぐみが悪いと思う」

「なによー。お兄ちゃんだって調子に乗って、泉源水狸せんげんすいりを使ったじゃん。

お、お兄ちゃんのせいで、私のし、下

着、ずぶれだったんだったから」

胸に手を当てて、めぐみが話すものだから、湊は隣にいるめぐみを凝視してしまう。

「へっ、変態!」

すかさず、膨よかな胸を自分の腕で隠す。しかし、余計にめぐみの胸が強調されてしまう。

「俺は、そういう意味で見たわじゃなく・・・」

湊の言い訳はもう通用しなかった。痛烈なビンタが湊にお見舞いされたのは言うまでもなかった。

「痛っあ」

湊は久しぶりのビンタの痛さに半泣きになる。めぐみが未だに胸を両手で隠しながら、話し始める。

「私だって、桜子さんや美人生徒会長さんみたいに可愛い女の子として見てもらいたいんですから。デリカシー持ってください」

めぐみは湊にそう告げると無言になってしまったのであった。



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