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その後順調に勝ち上がり見事優勝を掴み取った。チームメイトとハイタッチをして勝利を喜ぶことをせずさっさと教室へ戻った。
今日の授業はこれで終わり、魔力もだいぶ減ってしまったためさっさと帰り補給のため帆走しなければ、そんなことを考えながら帰宅の準備をしているとふわりと甘く柔らかい香りが漂った。
「ユナイデル、少しいいか」
いつぞやの2番目のようにドア付近に立ち声をかけてきたのはヴァイス先生だった。
黒く肩あたりまで伸びた艶やかな髪の毛と私とは正反対の美しいルビーのような瞳。背が高く女生徒からかなり人気の高い美しい顔立ちをしている。くたびれたロングTシャツと黒いパンツ、サンダルを履きすこしだらしない印象に感じる。女生徒はそのだらしなさが母性本能をくすぐると話していた。何がいいのか良くわからない。
嫁がいるいないだの恋人がいるいないだのかなり遊んでいるだの色々噂されている。
教室を後にしヴァイス先生の後をついていく。先生はかなりとても優秀で魔法は強く、授業は分かりやすい。しかし、かなりのものぐさであり適当なことを言うことが多い。ペタペタとサンダルを鳴らし歩く姿やたまに見かける煙草を吸う姿などだらしない部分が気になり必要以上に関わりを持ちたくない教師でもあった。
魔力の補充ができなくなりどうしても対処法が分からなく困った時、苦渋の決断でヴァイス先生に相談をした。親身に相談に乗ってくれ、対処を必死に調べる姿は好印象に映った。
しかし、先生でも解決策はわからず、謝りながらも「知り合いにも聞いてみる」と言い調べ続けてくれていた。時々体調の変化やあれからの情報など声をかけ気にかけてくれていた。
後ろを歩き着いたのは実技講師専用準備室という名の先生のサボり部屋、第三準備室。
ドアを開き中へ入れば枕と掛け布団の置かれたソファーと何も乗っていないソファーが向かい合って置いてあり、その間にあるテーブルの上には本とコップ、それと大量のタバコが積まれた灰皿が置いてある。小さなキッチンの上にはポットが置かれており、その隣には小さな冷蔵庫がおいてある。たくさんの本が詰まった棚に囲まれた部屋はタバコの匂いはせず甘いムスクの香りで満たされている。
あんなにタバコを吸ってるのに匂わないのは空気浄化魔法でもかけたのだろう。
向かい合って座り煙草を吸い始める先生。
「ふぅー⋯⋯なぜ呼ばれたか分かるか?」
白い煙を吐き出しこちらを一瞥する。美しい瞳を縁取る長いまつ毛が影を落とす。先ほどから香るムスクのような匂い。どこかで嗅いだ気がするが思い出せない。
「⋯⋯魔力、のことでしょうか」
「そうだ。どう補充したんだ?」
あれほどまでに枯渇していた魔力がトーナメント戦を全て行えるほど戻ったのだ。気になるに決まっている。
しかし、私が実は淫魔の血を受け継いでおりその能力が出てきてしまい男性の精液を摂取しないと魔力変換できないため夜な夜な男性の部屋に入り精液を摂取しているなどと言えるはずもない。
「あ、えーと⋯⋯自分なりに考え編み出した魔力変換の行路を使用し補充しています」
なんとか言い訳をするがそんなの信じるはずもなく、疑わしくこちらを見てくる。目を逸らせば勘繰られるだろう。あくまで自然に目を合わせる。
「⋯⋯はぁー。まぁいい。魔力の補充ができるようになったのなら今までできてなかった実技の復習でもしとけよ」
「はい」
「あー。それで、だ。最近は休めてるか?」
「まぁ。はい。休んでます」
「そうか⋯⋯」
「はい⋯⋯」
歯切れ悪く話す先生。今夜は2、3人程度摂取していきたいと考えているため早めに帰りたい。それに優秀な人だ。何の拍子でバレるか分からない。できるだけ関わらないようにしたい気持ちもある。そろそろ帰る声かけをしようと口を開く前に先生が話し始める。
「あー、お前は頑張っているんだ。無理をしすぎるとまた倒れるぞ。休息は大事だ。たまには休めよ」
「⋯⋯はい」
また?最近倒れたのは主席の部屋に行った次の日だった。
──まさか、。
意識を集中させ先生の香りを嗅いでみる。脳が甘く痺れるようなこのムスクの香り。思い出した。あの日、あの倒れた日掠れゆく意識の中嗅いだ匂いだ。
意識を集中させたせいか多く匂いを取り込みフェロモンが溢れ始めた。こんなところで教師を発情させてしまえば恐ろしい未来が見える。この香りから離れなければ。
「すいません。用事があるのでこれで失礼します」
「は?おいっ」
口早に伝え返事も聞かず急いで部屋を後にする。
小走りで教室に向かい鞄を手に取り帰宅する。ふと見た鏡に写った私の瞳孔が蛇のように縦長に見えた。立ち止まり鏡の中の自分を見ても瞳孔に変化はない。
──見間違えたのかしら。
たしかに最近色々あって休めていない。今度の休日はゆっくりしてみよう。何をしたいか考えながら自宅に向かい歩き始めた。
今日の授業はこれで終わり、魔力もだいぶ減ってしまったためさっさと帰り補給のため帆走しなければ、そんなことを考えながら帰宅の準備をしているとふわりと甘く柔らかい香りが漂った。
「ユナイデル、少しいいか」
いつぞやの2番目のようにドア付近に立ち声をかけてきたのはヴァイス先生だった。
黒く肩あたりまで伸びた艶やかな髪の毛と私とは正反対の美しいルビーのような瞳。背が高く女生徒からかなり人気の高い美しい顔立ちをしている。くたびれたロングTシャツと黒いパンツ、サンダルを履きすこしだらしない印象に感じる。女生徒はそのだらしなさが母性本能をくすぐると話していた。何がいいのか良くわからない。
嫁がいるいないだの恋人がいるいないだのかなり遊んでいるだの色々噂されている。
教室を後にしヴァイス先生の後をついていく。先生はかなりとても優秀で魔法は強く、授業は分かりやすい。しかし、かなりのものぐさであり適当なことを言うことが多い。ペタペタとサンダルを鳴らし歩く姿やたまに見かける煙草を吸う姿などだらしない部分が気になり必要以上に関わりを持ちたくない教師でもあった。
魔力の補充ができなくなりどうしても対処法が分からなく困った時、苦渋の決断でヴァイス先生に相談をした。親身に相談に乗ってくれ、対処を必死に調べる姿は好印象に映った。
しかし、先生でも解決策はわからず、謝りながらも「知り合いにも聞いてみる」と言い調べ続けてくれていた。時々体調の変化やあれからの情報など声をかけ気にかけてくれていた。
後ろを歩き着いたのは実技講師専用準備室という名の先生のサボり部屋、第三準備室。
ドアを開き中へ入れば枕と掛け布団の置かれたソファーと何も乗っていないソファーが向かい合って置いてあり、その間にあるテーブルの上には本とコップ、それと大量のタバコが積まれた灰皿が置いてある。小さなキッチンの上にはポットが置かれており、その隣には小さな冷蔵庫がおいてある。たくさんの本が詰まった棚に囲まれた部屋はタバコの匂いはせず甘いムスクの香りで満たされている。
あんなにタバコを吸ってるのに匂わないのは空気浄化魔法でもかけたのだろう。
向かい合って座り煙草を吸い始める先生。
「ふぅー⋯⋯なぜ呼ばれたか分かるか?」
白い煙を吐き出しこちらを一瞥する。美しい瞳を縁取る長いまつ毛が影を落とす。先ほどから香るムスクのような匂い。どこかで嗅いだ気がするが思い出せない。
「⋯⋯魔力、のことでしょうか」
「そうだ。どう補充したんだ?」
あれほどまでに枯渇していた魔力がトーナメント戦を全て行えるほど戻ったのだ。気になるに決まっている。
しかし、私が実は淫魔の血を受け継いでおりその能力が出てきてしまい男性の精液を摂取しないと魔力変換できないため夜な夜な男性の部屋に入り精液を摂取しているなどと言えるはずもない。
「あ、えーと⋯⋯自分なりに考え編み出した魔力変換の行路を使用し補充しています」
なんとか言い訳をするがそんなの信じるはずもなく、疑わしくこちらを見てくる。目を逸らせば勘繰られるだろう。あくまで自然に目を合わせる。
「⋯⋯はぁー。まぁいい。魔力の補充ができるようになったのなら今までできてなかった実技の復習でもしとけよ」
「はい」
「あー。それで、だ。最近は休めてるか?」
「まぁ。はい。休んでます」
「そうか⋯⋯」
「はい⋯⋯」
歯切れ悪く話す先生。今夜は2、3人程度摂取していきたいと考えているため早めに帰りたい。それに優秀な人だ。何の拍子でバレるか分からない。できるだけ関わらないようにしたい気持ちもある。そろそろ帰る声かけをしようと口を開く前に先生が話し始める。
「あー、お前は頑張っているんだ。無理をしすぎるとまた倒れるぞ。休息は大事だ。たまには休めよ」
「⋯⋯はい」
また?最近倒れたのは主席の部屋に行った次の日だった。
──まさか、。
意識を集中させ先生の香りを嗅いでみる。脳が甘く痺れるようなこのムスクの香り。思い出した。あの日、あの倒れた日掠れゆく意識の中嗅いだ匂いだ。
意識を集中させたせいか多く匂いを取り込みフェロモンが溢れ始めた。こんなところで教師を発情させてしまえば恐ろしい未来が見える。この香りから離れなければ。
「すいません。用事があるのでこれで失礼します」
「は?おいっ」
口早に伝え返事も聞かず急いで部屋を後にする。
小走りで教室に向かい鞄を手に取り帰宅する。ふと見た鏡に写った私の瞳孔が蛇のように縦長に見えた。立ち止まり鏡の中の自分を見ても瞳孔に変化はない。
──見間違えたのかしら。
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