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王弟 ファルク
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即位式を終え、ヴァントデンの王と王妃になった俺とアルミナは多忙な日々を送った。
最終的な目的であるアストエダム国との関係強化に向け、動き出したのだ。
これまで聖女に国防を任せきりのアストエダムに対して、積極的に手を貸そうという申し出だ。そもそも元老院の許可を取る段階で苦労した。
ヴァントデンとアストエダム。この二つの国は隣り合う関係にありながら、お互いの領土に手出しすることは歴史上ほとんどなく、ずっと友好関係にあった。
なぜかというと、ヴァントデン側から攻めて勝つことが困難だったのだ。アストエダムは、魔物を天然の防御装置として国を守っていた。人の手が入らない森のように、討伐されることのない魔物は、魔物同士で喰い合うことで手が付けられないほど強力となっている。
それでも聖女の祈りがある限り、街や村は守られる。為政者の視点から見れば、なかなか賢い手段といえた。
また、アストエダム側からヴァントデンを攻めて勝つ算段も立たなかったことだろう。こちらは国民のほとんどが獣人であるため、アストエダムの普通の人間に比べて肉体的な強さが段違いなのだ。
そういった理由により、平和条約を結び、物と人の交流だけに留めていた。であるのに、わざわざ他国に干渉しようとするのだ。いくら王となっても、元老院を説得する理由が必要だった。
「このまま聖女が現れず、ヴァントデンにまで危機が迫ってからでは遅い」
「兄弟国に先んじて手を貸せば、経済的に有利な条約を結べる」
この二つを、俺は何度も何度も主張した。言い方を変え、予測される最悪の未来を語り、最高にヴァントデンに利益がある条約案も出した。
やっと元老院を説得してアストエダムに提案を出せたのは、アルミナとベリンダが約束をした期日の8日前だ。
最早、返事を待つ猶予もなかった。
そうして俺とアルミナは、視察の名目でアストエダム国に堂々と入国をした。俺がベリンダと暮らした懐かしい国境の街、リューブ街だ。
王と王妃という身分なので、王室の馬車を使用した。護衛の行列も前後に長く、全員式典用の盛装を着用し、馬にまで豪奢を誇るきらびやかな飾り付けがなされた。
着の身着のまま、教会の手先に追われて逃げ出したあの日とは全く違う。沿道には大勢の人が詰め寄り、珍しい客を笑顔と歓声で迎えてくれた。新しい王妃が聖女と同等の神聖力を持っている、という噂はここまで届いているからだ。
「歓迎されるのは慣れているけど、王妃として馬車から手を振るのは新鮮な気分」
アルミナはこそりと俺の耳元に話しかけ、俺にだけ見せるいたずらっぽい笑みを浮かべた。
なぜか、突如として得体の知れない不安がこみ上げる。彼女があまりに愛おしく感じたせいだろうか。俺は微笑みを崩さないようにした。
リューブ街の目抜き通りを俺たち一行はゆっくりと進み、迎賓館の前庭で馬車は泊まった。
水瓶の月、10日まであと3日と迫っていた。
聖女一行、つまりベリンダと護衛は明日に到着するらしい。どうせ入れ替わりを解消するわけではないので、再会が前倒しとなっても問題はなさそうだ。
俺は久しぶりにベリンダに会いたかった。また、未だ嘗てこの目にしたことのない、アルミナの生まれついた外見も見たかった。ちょっとした好奇心だ。
アストエダムの外務大臣、フルニエ卿と官吏たちの歓待を受けながらそのときを待った。
最終的な目的であるアストエダム国との関係強化に向け、動き出したのだ。
これまで聖女に国防を任せきりのアストエダムに対して、積極的に手を貸そうという申し出だ。そもそも元老院の許可を取る段階で苦労した。
ヴァントデンとアストエダム。この二つの国は隣り合う関係にありながら、お互いの領土に手出しすることは歴史上ほとんどなく、ずっと友好関係にあった。
なぜかというと、ヴァントデン側から攻めて勝つことが困難だったのだ。アストエダムは、魔物を天然の防御装置として国を守っていた。人の手が入らない森のように、討伐されることのない魔物は、魔物同士で喰い合うことで手が付けられないほど強力となっている。
それでも聖女の祈りがある限り、街や村は守られる。為政者の視点から見れば、なかなか賢い手段といえた。
また、アストエダム側からヴァントデンを攻めて勝つ算段も立たなかったことだろう。こちらは国民のほとんどが獣人であるため、アストエダムの普通の人間に比べて肉体的な強さが段違いなのだ。
そういった理由により、平和条約を結び、物と人の交流だけに留めていた。であるのに、わざわざ他国に干渉しようとするのだ。いくら王となっても、元老院を説得する理由が必要だった。
「このまま聖女が現れず、ヴァントデンにまで危機が迫ってからでは遅い」
「兄弟国に先んじて手を貸せば、経済的に有利な条約を結べる」
この二つを、俺は何度も何度も主張した。言い方を変え、予測される最悪の未来を語り、最高にヴァントデンに利益がある条約案も出した。
やっと元老院を説得してアストエダムに提案を出せたのは、アルミナとベリンダが約束をした期日の8日前だ。
最早、返事を待つ猶予もなかった。
そうして俺とアルミナは、視察の名目でアストエダム国に堂々と入国をした。俺がベリンダと暮らした懐かしい国境の街、リューブ街だ。
王と王妃という身分なので、王室の馬車を使用した。護衛の行列も前後に長く、全員式典用の盛装を着用し、馬にまで豪奢を誇るきらびやかな飾り付けがなされた。
着の身着のまま、教会の手先に追われて逃げ出したあの日とは全く違う。沿道には大勢の人が詰め寄り、珍しい客を笑顔と歓声で迎えてくれた。新しい王妃が聖女と同等の神聖力を持っている、という噂はここまで届いているからだ。
「歓迎されるのは慣れているけど、王妃として馬車から手を振るのは新鮮な気分」
アルミナはこそりと俺の耳元に話しかけ、俺にだけ見せるいたずらっぽい笑みを浮かべた。
なぜか、突如として得体の知れない不安がこみ上げる。彼女があまりに愛おしく感じたせいだろうか。俺は微笑みを崩さないようにした。
リューブ街の目抜き通りを俺たち一行はゆっくりと進み、迎賓館の前庭で馬車は泊まった。
水瓶の月、10日まであと3日と迫っていた。
聖女一行、つまりベリンダと護衛は明日に到着するらしい。どうせ入れ替わりを解消するわけではないので、再会が前倒しとなっても問題はなさそうだ。
俺は久しぶりにベリンダに会いたかった。また、未だ嘗てこの目にしたことのない、アルミナの生まれついた外見も見たかった。ちょっとした好奇心だ。
アストエダムの外務大臣、フルニエ卿と官吏たちの歓待を受けながらそのときを待った。
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