40 / 50
3章 Dedicated to an angel
#34 夢と母親
しおりを挟む
_____ルリアは、ゆっくりと目を覚ます。
それと同時に頬を伝って落ちてゆく水滴の感覚がし、寝起きで頭が働かない中でもそれが涙だと気付くと、どうして自身が泣いていたのかが分からず数度瞬きをする。
____なにか、夢を見ていたけれど思いだせない。
彼女は涙で濡れた頬を擦りながらゆっくりと起き上がると、先程見た夢の内容を思い出そうとするが思い出せず、心の中でそう呟く。
そしてふと、昨日の事を思い出し自身の手に視線を落とした。
___昨日の出来事で、女性の血で真っ赤になっていた手は何故か一切血がついておらず、能力の代償で痕が残ってしまった傷が所々に見えるだけで、身に纏っているドレスにも一滴の血も付いていなかった。
それはまるで、あの出来事が夢だと疑う程に無かった様になっているのだが、ルリアの手には女性の頭を能力で壊した際、まるで静電気の様に指にピリッと電流の様なものが走った感触と、血の匂いは鼻から消えていなかった為、彼女はあれが夢では無いのだと改めて実感する。
____そして、ルリアはまた自身の能力のせいで人を殺してしまい、悲しそうに手を見つめるのだった。
『____おはようございます、ルリア様。今日は早起きですね?』「お、おはようございます…!」
暫くルリアは手を見つめていたのだったが、部屋の扉が開く音と、ジェシカとカミーユの声が聞こえると顔を上げ、声の方を向く。
「うん…なんでか早くおきちゃったの……」
『早起きは良い事です、さ、着替えましょう?』
ルリアはジェシカの瞳を見つめながらその言葉に頷き、ジェシカは何時もの笑みを浮かべながら言うと彼女を抱きかかえる。
そして、何時もの様に着替えをし食事の席につくと、ルリアは何時もと変わらずナイフとフォークを持ち、食事を始めた。
「____ねぇ、カミーユ。」
ジェシカは他の仕事がある為に部屋を出、長い時間をかけ食事が終わり、ルリアにデザートを渡す際、彼女はテーブルに近付いてきたカミーユの名を呼ぶ。
呼ばれたカミーユは何かあったのかと表す様に首を傾げ、彼女の言葉を待っていた。
「________私のこと、こわく、ないの…?」
少しの静寂が2人を包み、ルリアはゆっくりと息を吐くと途切れ途切れになりながらもそう言葉を紡ぐ。
昨日の出来事があったからなのか、カミーユがそれを知らないかもしれないという考えも思い浮かばないまま思っている事を口にする彼女は、心の底から "怖がられたくない" と考えているのだろう。
その証拠に彼女の声は震えていて、今にも泣きそうなのであった。
「安心して下さい、怖くなんてないですから。…正直、お嬢様より私の母親の方が怖いです……」
カミーユは彼女の言葉を聞くと、にこりと明るい笑みを浮かべ安心させる為に優しい口調で答えるが、途中で自身の母親の事を思い出したのか困った様に笑みを浮かべる。
ルリアは母親という言葉を聞き、数度瞬きをした。
「カミーユのお母様ってどんな人なの…?」
「え、んーと…普段は優しいのですが、怒るととてつもなく怖かったですね……」
先程とはうってかわり、興味深そうに尋ねるルリアを見、カミーユは自身の母親の事を簡単に説明をすると、彼女はもっと知りたいのか目を輝かせていたのだが、デザートが冷めてしまう事に気付き慌ててデザートを食べるのであった。
「___カミーユのお母様のこと、もっと知りたい…」
デザートを食べ終わり、ベッドに腰掛けたルリアは食器の片付けをしているカミーユを見つめながら言葉を零す。
「何も面白い事はないですが…それでもいいんですか?」
カミーユは少し考え込んだ後、ルリアにそう問いかけるが彼女が頷いた為、何を話そうかと悩み始めた。
「…あ、母親はとっても料理が下手で、すぐに焦がしたりしちゃってたんです。懐かしいなぁ…」
「へぇ……。……どうして、ひとりだったの?」
懐かしそうに目を細め語るカミーユを見、ルリアは心の中に何か嫌なものが貯まる様な感覚に陥り、少し声色を下げながら相槌を打つが、ふと、彼女が森で倒れていた時は一人だった事を思い出し、そう尋ねる。
ルリアの言葉の意図が掴めなかったのか、カミーユは少しきょとんとした顔をしていたのだが、悲しそうに笑うと目線を下に移した。
「その…魔女狩りで、殺されちゃって……私も殺されそうだったのですが、逃げて…それで……」
魔女狩り
ルリアは初めて聞く単語に首を傾げるのだが、殺されたという言葉を聞き、目を見開く。
そして何も言わずカミーユの傍に近寄ると、翼をはためかせ宙に浮き、少し戸惑うがそっと彼女の頭を撫でるのだった。
それと同時に頬を伝って落ちてゆく水滴の感覚がし、寝起きで頭が働かない中でもそれが涙だと気付くと、どうして自身が泣いていたのかが分からず数度瞬きをする。
____なにか、夢を見ていたけれど思いだせない。
彼女は涙で濡れた頬を擦りながらゆっくりと起き上がると、先程見た夢の内容を思い出そうとするが思い出せず、心の中でそう呟く。
そしてふと、昨日の事を思い出し自身の手に視線を落とした。
___昨日の出来事で、女性の血で真っ赤になっていた手は何故か一切血がついておらず、能力の代償で痕が残ってしまった傷が所々に見えるだけで、身に纏っているドレスにも一滴の血も付いていなかった。
それはまるで、あの出来事が夢だと疑う程に無かった様になっているのだが、ルリアの手には女性の頭を能力で壊した際、まるで静電気の様に指にピリッと電流の様なものが走った感触と、血の匂いは鼻から消えていなかった為、彼女はあれが夢では無いのだと改めて実感する。
____そして、ルリアはまた自身の能力のせいで人を殺してしまい、悲しそうに手を見つめるのだった。
『____おはようございます、ルリア様。今日は早起きですね?』「お、おはようございます…!」
暫くルリアは手を見つめていたのだったが、部屋の扉が開く音と、ジェシカとカミーユの声が聞こえると顔を上げ、声の方を向く。
「うん…なんでか早くおきちゃったの……」
『早起きは良い事です、さ、着替えましょう?』
ルリアはジェシカの瞳を見つめながらその言葉に頷き、ジェシカは何時もの笑みを浮かべながら言うと彼女を抱きかかえる。
そして、何時もの様に着替えをし食事の席につくと、ルリアは何時もと変わらずナイフとフォークを持ち、食事を始めた。
「____ねぇ、カミーユ。」
ジェシカは他の仕事がある為に部屋を出、長い時間をかけ食事が終わり、ルリアにデザートを渡す際、彼女はテーブルに近付いてきたカミーユの名を呼ぶ。
呼ばれたカミーユは何かあったのかと表す様に首を傾げ、彼女の言葉を待っていた。
「________私のこと、こわく、ないの…?」
少しの静寂が2人を包み、ルリアはゆっくりと息を吐くと途切れ途切れになりながらもそう言葉を紡ぐ。
昨日の出来事があったからなのか、カミーユがそれを知らないかもしれないという考えも思い浮かばないまま思っている事を口にする彼女は、心の底から "怖がられたくない" と考えているのだろう。
その証拠に彼女の声は震えていて、今にも泣きそうなのであった。
「安心して下さい、怖くなんてないですから。…正直、お嬢様より私の母親の方が怖いです……」
カミーユは彼女の言葉を聞くと、にこりと明るい笑みを浮かべ安心させる為に優しい口調で答えるが、途中で自身の母親の事を思い出したのか困った様に笑みを浮かべる。
ルリアは母親という言葉を聞き、数度瞬きをした。
「カミーユのお母様ってどんな人なの…?」
「え、んーと…普段は優しいのですが、怒るととてつもなく怖かったですね……」
先程とはうってかわり、興味深そうに尋ねるルリアを見、カミーユは自身の母親の事を簡単に説明をすると、彼女はもっと知りたいのか目を輝かせていたのだが、デザートが冷めてしまう事に気付き慌ててデザートを食べるのであった。
「___カミーユのお母様のこと、もっと知りたい…」
デザートを食べ終わり、ベッドに腰掛けたルリアは食器の片付けをしているカミーユを見つめながら言葉を零す。
「何も面白い事はないですが…それでもいいんですか?」
カミーユは少し考え込んだ後、ルリアにそう問いかけるが彼女が頷いた為、何を話そうかと悩み始めた。
「…あ、母親はとっても料理が下手で、すぐに焦がしたりしちゃってたんです。懐かしいなぁ…」
「へぇ……。……どうして、ひとりだったの?」
懐かしそうに目を細め語るカミーユを見、ルリアは心の中に何か嫌なものが貯まる様な感覚に陥り、少し声色を下げながら相槌を打つが、ふと、彼女が森で倒れていた時は一人だった事を思い出し、そう尋ねる。
ルリアの言葉の意図が掴めなかったのか、カミーユは少しきょとんとした顔をしていたのだが、悲しそうに笑うと目線を下に移した。
「その…魔女狩りで、殺されちゃって……私も殺されそうだったのですが、逃げて…それで……」
魔女狩り
ルリアは初めて聞く単語に首を傾げるのだが、殺されたという言葉を聞き、目を見開く。
そして何も言わずカミーユの傍に近寄ると、翼をはためかせ宙に浮き、少し戸惑うがそっと彼女の頭を撫でるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる