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不幸な三角関係
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みんな、恋に堕ちている。
***
わたしは、恋をしてはいけないひとに恋をした。憧れだったその思いはいつしか恋に変わった。
――だけど、あのひとはわたしを見ない。愛してくれることなんて、一生ない。
「おはよう、ユウカ。今日も学校頑張れよ」
「……ありがと、トモにぃ」
好きなひとへ精一杯の笑顔を返す。彼は気付かずにお弁当をくれた。今日はリップの色を大人っぽくしてみたのに。前に、テレビで『これいいな』って言ってたやつなのに。
「学校まで送ろうか?」
社会人の兄は過保護で心配性で、毎日のようにそう言ってくれる。好きなひとと二人きりなんて心臓が持たないから、わたしはいつものセリフを言う。
「マコと行くからいらないよ」
「……そっか。なら、玄関まで見送るよ」
わざわざ朝に見送れるように近くの会社を選んで、早起きして。でも――それは、わたしのためじゃない。
ピンポーン、とチャイムが鳴った。時間的にマコだろう。
「ほら、マコちゃん来たぞ」
「うん」
玄関まで二人で歩いて、楽しそうなトモにぃの顔を見て、そっと扉を開けた。
「――おはよう、ユウカ!」
「……おはよ、マコ」
親友が笑顔で待ってて、来なくていいのに、と思ってしまった自分に吐き気がする。
ああほら。また見ちゃった。
「いつもありがとう、マコちゃん」
「いいえ! したくてやってることですから!」
――マコを見る、幸せそうなトモにぃの笑顔。
目眩がする。親友を睨みそうになって、慌てて玄関を出る。
「も、もう行くから! じゃあ行ってきますトモにぃ!」
「いってらっしゃい、二人とも」
お願いだから、わたしに向けてその笑顔をちょうだい。キスなんていらないから、幸せそうにこっちを見て。
――わたしの好きなひとは、わたしを見ない。
***
私の好きな人は今日も表情が暗い。心臓が痛む。だって、私のせいだから。
「ユウカ、暗い顔してる。大丈夫?」
白々しくもそう聞くと、優しい彼女は固い表情ながらも笑ってくれた。
「だいじょうぶ。ごめんね」
「ううん、こっちこそ聞いちゃってごめん……あれ? 今日いつものリップと違うやつ?」
すっごく可愛い。似合ってる。ユウカは女の子らしいピンクがよく映える。
「そう!」
彼女の顔がパッと明るくなった。嬉しそうに笑っている――そのひとみは、誰に向いている?
「変えたの! 前にCMやってて、かわいいって言ってたから。気づかれなかったけど」
――トモキさんに? ……なんて、意地悪しない。彼女が実の兄を好きなのも、彼が私を好きなのにも気付いてる。
「好きなひとには気づかれなかったけど、親友に言われたのなら許せるね」
ふふ、と笑うユウカに返事が遅れた。いつも言われてるのに、やっぱり傷ついてしまう――“親友”という立場。
「ユウカの好きなひとより先にかわいいって言えて、嬉しい」
大好きな人へ、精一杯の独占欲。私は彼女を見守りたい。あわよくば共に生きたい。立場は親友でもいいの。
――延々と続く幸福に、私はいっそ死んでしまいたい。今死ねば、彼女は想いに気付かない。
私の好きな人は、私を友達としていさせてくれる。だから、愛さなくていいから。お願いだから、視界に入れて。
***
俺の好きな子は俺を嫌いだ。だって、彼女の好きな人が俺を好きだから。
ユウカの恋は憧れに近いものだと俺は思うけれど、彼女にとっては敵視するものらしい。そして、俺は彼女の視線を歓迎している。
朝ユウカを見送るのだって、あの憎悪に似た目を向けてほしいからだ。愛してくれないのならそれ以外が欲しい。
――俺は、欲張りなんだ。
俺にとって恋とは、甘くて絶望的で、延々と続く奈落のようなもの。全身を包む多幸感に、抗おうとは思わない。彼女によく思われまいと、奈落に堕ちているのなら仕方ない。
妹は俺を好きだ。俺は妹の友人が好きだ。妹の友人は妹が好きだ。
けれど。
妹は妹の友人の想いに気付いてすらない。
俺は妹に対して家族として以外は見るつもりがない。
妹の友人は俺を嫌っている。
そんな、救われない三角関係。
――俺たちは、みんな地獄に堕ちている。
***
わたしは、恋をしてはいけないひとに恋をした。憧れだったその思いはいつしか恋に変わった。
――だけど、あのひとはわたしを見ない。愛してくれることなんて、一生ない。
「おはよう、ユウカ。今日も学校頑張れよ」
「……ありがと、トモにぃ」
好きなひとへ精一杯の笑顔を返す。彼は気付かずにお弁当をくれた。今日はリップの色を大人っぽくしてみたのに。前に、テレビで『これいいな』って言ってたやつなのに。
「学校まで送ろうか?」
社会人の兄は過保護で心配性で、毎日のようにそう言ってくれる。好きなひとと二人きりなんて心臓が持たないから、わたしはいつものセリフを言う。
「マコと行くからいらないよ」
「……そっか。なら、玄関まで見送るよ」
わざわざ朝に見送れるように近くの会社を選んで、早起きして。でも――それは、わたしのためじゃない。
ピンポーン、とチャイムが鳴った。時間的にマコだろう。
「ほら、マコちゃん来たぞ」
「うん」
玄関まで二人で歩いて、楽しそうなトモにぃの顔を見て、そっと扉を開けた。
「――おはよう、ユウカ!」
「……おはよ、マコ」
親友が笑顔で待ってて、来なくていいのに、と思ってしまった自分に吐き気がする。
ああほら。また見ちゃった。
「いつもありがとう、マコちゃん」
「いいえ! したくてやってることですから!」
――マコを見る、幸せそうなトモにぃの笑顔。
目眩がする。親友を睨みそうになって、慌てて玄関を出る。
「も、もう行くから! じゃあ行ってきますトモにぃ!」
「いってらっしゃい、二人とも」
お願いだから、わたしに向けてその笑顔をちょうだい。キスなんていらないから、幸せそうにこっちを見て。
――わたしの好きなひとは、わたしを見ない。
***
私の好きな人は今日も表情が暗い。心臓が痛む。だって、私のせいだから。
「ユウカ、暗い顔してる。大丈夫?」
白々しくもそう聞くと、優しい彼女は固い表情ながらも笑ってくれた。
「だいじょうぶ。ごめんね」
「ううん、こっちこそ聞いちゃってごめん……あれ? 今日いつものリップと違うやつ?」
すっごく可愛い。似合ってる。ユウカは女の子らしいピンクがよく映える。
「そう!」
彼女の顔がパッと明るくなった。嬉しそうに笑っている――そのひとみは、誰に向いている?
「変えたの! 前にCMやってて、かわいいって言ってたから。気づかれなかったけど」
――トモキさんに? ……なんて、意地悪しない。彼女が実の兄を好きなのも、彼が私を好きなのにも気付いてる。
「好きなひとには気づかれなかったけど、親友に言われたのなら許せるね」
ふふ、と笑うユウカに返事が遅れた。いつも言われてるのに、やっぱり傷ついてしまう――“親友”という立場。
「ユウカの好きなひとより先にかわいいって言えて、嬉しい」
大好きな人へ、精一杯の独占欲。私は彼女を見守りたい。あわよくば共に生きたい。立場は親友でもいいの。
――延々と続く幸福に、私はいっそ死んでしまいたい。今死ねば、彼女は想いに気付かない。
私の好きな人は、私を友達としていさせてくれる。だから、愛さなくていいから。お願いだから、視界に入れて。
***
俺の好きな子は俺を嫌いだ。だって、彼女の好きな人が俺を好きだから。
ユウカの恋は憧れに近いものだと俺は思うけれど、彼女にとっては敵視するものらしい。そして、俺は彼女の視線を歓迎している。
朝ユウカを見送るのだって、あの憎悪に似た目を向けてほしいからだ。愛してくれないのならそれ以外が欲しい。
――俺は、欲張りなんだ。
俺にとって恋とは、甘くて絶望的で、延々と続く奈落のようなもの。全身を包む多幸感に、抗おうとは思わない。彼女によく思われまいと、奈落に堕ちているのなら仕方ない。
妹は俺を好きだ。俺は妹の友人が好きだ。妹の友人は妹が好きだ。
けれど。
妹は妹の友人の想いに気付いてすらない。
俺は妹に対して家族として以外は見るつもりがない。
妹の友人は俺を嫌っている。
そんな、救われない三角関係。
――俺たちは、みんな地獄に堕ちている。
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