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第1章
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穏やかな昼下がり。
雲ひとつない青空の下、ひとりの幼女が翼竜のような翼を力強く羽ばたかせ、意気揚々と大空を飛んでいた。
幼女は、赤茶色の髪を背中まで無造作に伸ばしており、茶色いシンプルなデザインのワンピースに、サンダルといった出立ちである。
外見は人間とそう変わらない姿をしているが、幼女の額からは白くて小さな角が2本生えていた。それにエルフのように長い耳と、ワンピースの裾からはみ出た大きく赤い尻尾が、一見して人間とは別の種族であることを語っていた。
そんな幼女のはるか前方に、大きな町が見え始める。町の奥には丘があり、その上には息を呑むほど荘厳で美しい城が建っていた。
城を目にした幼女が無邪気につぶやく。
「あのお城にしよう」
そう言うと、城目掛けて一直線に飛んでいった。
* * *
城内にある執務室の外壁が、突然の轟音と共に崩れ落ちる。まるで城を攻め落とす際の投石でも当たったかのような衝撃に、室内のソファーに腰掛けていた3人の人物は弾かれるように立ち上がり、きゃあ! 何事ですか!? 敵襲か!? と口々に叫び声を上げていた。
3人が壁の方に注目する。
壁には小さな子供がひとり通れる程度の穴が空いており、その穴の前に佇む幼女は、何事もなかったかのように穏やかな口調で、
「お邪魔しまーす」
と挨拶した。
未だに状況を飲み込めない3人は、ただ呆然と幼女を眺め続ける事しか出来なかったが、ようやく1人が口を開く。
「その白い角に赤い尻尾、もしかして……破滅竜?」
そう呟いたのは、壁から一番離れた席にいるエルフの女であった。
長命種であるエルフの実年齢は不明だが、人間でいう20代後半くらいに見える。
ブロンドの艶やかな髪を背中まで伸ばしており、青く澄んだ瞳が美しい。身にまとった青色のローブが、白い肌をしたエルフによく似合っていた。
身長は160センチとやや小柄だが、ローブ越しでも分かるほど豊満な胸にくびれた腰から、抜群のプロポーションであることが窺い知れる。
エルフの言葉に即座に反応したのは、上座に座っていた男だった。
その男は30代前半と若く、180センチの高身長に威厳のある顔立ちから、ある種の風格を感じさせる。サイドを短くカットしたブロンドのショートヘアーに、派手さはないが仕立ての良い服を身につけ、長いマントを羽織った姿も、威厳のある雰囲気に一役買っていた。
男は信じられないといった様子で声を漏らす。
「300年前、東の大国を滅ぼしたと言う伝説の破滅竜……その子供か!?」
緊張感に襲われた男の額に汗がにじむ。
しかし、ただ立ち尽くしていても問題は解決しない。
男は5歳児位にしか見えない幼女に対して、慎重に声をかける。
「お前は何をしに来た?」
「マリティムだよ!」
「えーと……何をしに……」
「マリティムだよっ!」
どうにも話が噛み合わない。
人を揶揄っているのでは無さそうなことは、幼女の真剣な表情からもすぐに理解できた。
マリティムというのが幼女の名前ではないかと悟った男は、対話に戸惑いながらも改めて訊ねてみる。
「あー、うん……マリティムは何をしに来たのかな?」
「この国を滅ぼしに来ました!」
無邪気に答えるマリティムの幼い顔とは対照的に、その発言はあまりにも物騒過ぎた。
これには質問した男も度肝を抜かれ、のけ反りながら「なっ!?」と驚愕の声を漏らすことしか出来なかった。
雲ひとつない青空の下、ひとりの幼女が翼竜のような翼を力強く羽ばたかせ、意気揚々と大空を飛んでいた。
幼女は、赤茶色の髪を背中まで無造作に伸ばしており、茶色いシンプルなデザインのワンピースに、サンダルといった出立ちである。
外見は人間とそう変わらない姿をしているが、幼女の額からは白くて小さな角が2本生えていた。それにエルフのように長い耳と、ワンピースの裾からはみ出た大きく赤い尻尾が、一見して人間とは別の種族であることを語っていた。
そんな幼女のはるか前方に、大きな町が見え始める。町の奥には丘があり、その上には息を呑むほど荘厳で美しい城が建っていた。
城を目にした幼女が無邪気につぶやく。
「あのお城にしよう」
そう言うと、城目掛けて一直線に飛んでいった。
* * *
城内にある執務室の外壁が、突然の轟音と共に崩れ落ちる。まるで城を攻め落とす際の投石でも当たったかのような衝撃に、室内のソファーに腰掛けていた3人の人物は弾かれるように立ち上がり、きゃあ! 何事ですか!? 敵襲か!? と口々に叫び声を上げていた。
3人が壁の方に注目する。
壁には小さな子供がひとり通れる程度の穴が空いており、その穴の前に佇む幼女は、何事もなかったかのように穏やかな口調で、
「お邪魔しまーす」
と挨拶した。
未だに状況を飲み込めない3人は、ただ呆然と幼女を眺め続ける事しか出来なかったが、ようやく1人が口を開く。
「その白い角に赤い尻尾、もしかして……破滅竜?」
そう呟いたのは、壁から一番離れた席にいるエルフの女であった。
長命種であるエルフの実年齢は不明だが、人間でいう20代後半くらいに見える。
ブロンドの艶やかな髪を背中まで伸ばしており、青く澄んだ瞳が美しい。身にまとった青色のローブが、白い肌をしたエルフによく似合っていた。
身長は160センチとやや小柄だが、ローブ越しでも分かるほど豊満な胸にくびれた腰から、抜群のプロポーションであることが窺い知れる。
エルフの言葉に即座に反応したのは、上座に座っていた男だった。
その男は30代前半と若く、180センチの高身長に威厳のある顔立ちから、ある種の風格を感じさせる。サイドを短くカットしたブロンドのショートヘアーに、派手さはないが仕立ての良い服を身につけ、長いマントを羽織った姿も、威厳のある雰囲気に一役買っていた。
男は信じられないといった様子で声を漏らす。
「300年前、東の大国を滅ぼしたと言う伝説の破滅竜……その子供か!?」
緊張感に襲われた男の額に汗がにじむ。
しかし、ただ立ち尽くしていても問題は解決しない。
男は5歳児位にしか見えない幼女に対して、慎重に声をかける。
「お前は何をしに来た?」
「マリティムだよ!」
「えーと……何をしに……」
「マリティムだよっ!」
どうにも話が噛み合わない。
人を揶揄っているのでは無さそうなことは、幼女の真剣な表情からもすぐに理解できた。
マリティムというのが幼女の名前ではないかと悟った男は、対話に戸惑いながらも改めて訊ねてみる。
「あー、うん……マリティムは何をしに来たのかな?」
「この国を滅ぼしに来ました!」
無邪気に答えるマリティムの幼い顔とは対照的に、その発言はあまりにも物騒過ぎた。
これには質問した男も度肝を抜かれ、のけ反りながら「なっ!?」と驚愕の声を漏らすことしか出来なかった。
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