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第1章
002
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マリティムは男に臆することなく、これまた無邪気に訊ねる。
「あんた誰?」
国王様に向かって無礼だぞ! と叫ぶように口を挟んだのは、先ほどのエルフとテーブルを挟んで、対面に座っていた男である。
几帳面そうな顔をしたその男は、身長170センチ程で細身の体型をしており、服装は長袖に長ズボンと、動きやすそうな格好である。
30代後半という年齢から、目元に年相応の疲れがにじみ出ているが、癖のない髪質の黒髪をショートヘアーにカットしていることで、実年齢よりも幾分かは若く見える。
国王と呼ばれた男が手を動かして制すると、穏やかな声で部下をなだめた。
「よい、ペルフェクト。まだほんの小さな子供だ」
ペルフェクトと呼ばれた男が、かしこまるように姿勢を正すのを見届けてから、国王はマリティムへと視線を移す。
「俺はハランヘルト・スグニメシダス。この国の国王だ」
国王と聞いても、マリティムは少しもかしこまる事なく、不思議そうにハランヘルトの顔を見つめていた。
ドラゴンには人間社会の地位など、一切関係ないのだ。
「それで、なぜこの国を滅ぼそうとするんだ」
ハランヘルトの口調に敵意はない。
ただ、幼い少女がどうしてそう思ったのか、純粋な興味から聞いているような感じであった。
マリティムは新しいおもちゃを手に入れた子供のように、瞳を輝かせながら元気いっぱいに答える。
「飛んでたらみっけたの!」
「そんな理由で、この国を滅ぼそうというのか?」
「そうだよっ!」
呆れるほどふざけた理由である。
しかし無邪気に答えるマリティムの姿を見ていると、ハランヘルトも怒るに怒れず、どうしたものかと思案してから再び口を開く。
「滅ぼす目的はなんだ!?」
質問を受けたマリティムは胸を張って目的を話す。
「破滅竜はね、国を滅ぼして一人前だって! おとーちゃんがゆいごんって言ってた」
今の話からすると、マリティムの父親である破滅竜はすでに亡くなっているらしい。
破滅竜とはいえ、親を失えば悲しみもあるだろう。そう思うと、ハランヘルトはいたたまれない気持ちになってしまい、マリティムを直視できなくなり、ペルフェクトと目を合わせた——その時。
ぐうぅ~っ! と大きな音が室内に鳴り響いた。
マリティムが、お腹すいた、と呟きながら腹部を撫で回す。それからくるりと踵を返し、先ほど壊した壁から身を投げ、そのまま飛び降りてしまったではないか。
これに国王たちは大慌て。
「ぬおぉーっ!!」
「きゃーッ!!」
「うええぇーっ!?」
一斉に叫びながら上体をのけ反らせてしまう。
ハランヘルトとペルフェクトが慌てて壁に駆け寄り、穴から顔を出すと、眼下にマリティムの姿を発見した。
地面に落下したはずのマリティムは、まるで何事もなかったかのように歩いている。
何かを探しているのか。
時々立ち止まってはしゃがんだりして、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと歩き回っていた。
「あんた誰?」
国王様に向かって無礼だぞ! と叫ぶように口を挟んだのは、先ほどのエルフとテーブルを挟んで、対面に座っていた男である。
几帳面そうな顔をしたその男は、身長170センチ程で細身の体型をしており、服装は長袖に長ズボンと、動きやすそうな格好である。
30代後半という年齢から、目元に年相応の疲れがにじみ出ているが、癖のない髪質の黒髪をショートヘアーにカットしていることで、実年齢よりも幾分かは若く見える。
国王と呼ばれた男が手を動かして制すると、穏やかな声で部下をなだめた。
「よい、ペルフェクト。まだほんの小さな子供だ」
ペルフェクトと呼ばれた男が、かしこまるように姿勢を正すのを見届けてから、国王はマリティムへと視線を移す。
「俺はハランヘルト・スグニメシダス。この国の国王だ」
国王と聞いても、マリティムは少しもかしこまる事なく、不思議そうにハランヘルトの顔を見つめていた。
ドラゴンには人間社会の地位など、一切関係ないのだ。
「それで、なぜこの国を滅ぼそうとするんだ」
ハランヘルトの口調に敵意はない。
ただ、幼い少女がどうしてそう思ったのか、純粋な興味から聞いているような感じであった。
マリティムは新しいおもちゃを手に入れた子供のように、瞳を輝かせながら元気いっぱいに答える。
「飛んでたらみっけたの!」
「そんな理由で、この国を滅ぼそうというのか?」
「そうだよっ!」
呆れるほどふざけた理由である。
しかし無邪気に答えるマリティムの姿を見ていると、ハランヘルトも怒るに怒れず、どうしたものかと思案してから再び口を開く。
「滅ぼす目的はなんだ!?」
質問を受けたマリティムは胸を張って目的を話す。
「破滅竜はね、国を滅ぼして一人前だって! おとーちゃんがゆいごんって言ってた」
今の話からすると、マリティムの父親である破滅竜はすでに亡くなっているらしい。
破滅竜とはいえ、親を失えば悲しみもあるだろう。そう思うと、ハランヘルトはいたたまれない気持ちになってしまい、マリティムを直視できなくなり、ペルフェクトと目を合わせた——その時。
ぐうぅ~っ! と大きな音が室内に鳴り響いた。
マリティムが、お腹すいた、と呟きながら腹部を撫で回す。それからくるりと踵を返し、先ほど壊した壁から身を投げ、そのまま飛び降りてしまったではないか。
これに国王たちは大慌て。
「ぬおぉーっ!!」
「きゃーッ!!」
「うええぇーっ!?」
一斉に叫びながら上体をのけ反らせてしまう。
ハランヘルトとペルフェクトが慌てて壁に駆け寄り、穴から顔を出すと、眼下にマリティムの姿を発見した。
地面に落下したはずのマリティムは、まるで何事もなかったかのように歩いている。
何かを探しているのか。
時々立ち止まってはしゃがんだりして、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと歩き回っていた。
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