夏の想いは春に咲く~年下くんに絆されて愛されます~

オジカヅキ・オボロ

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「……ぅ……」
 小さく声を漏らした葵が、薄らと目を開ける。心底からホッとした。
「葵。よかった……」
「……真柄、さ……? なんで……」
「話は具合が良くなってからにしよう。気持ち悪いとかない? どこか痛いとか……」
「あたま、おもいです……」
「喉とか体に痛いところは?」
「関節は、いたいです……たぶん、熱のせいで」
 小さい頃から熱を出すと関節が痛くなるのだと、どこか億劫そうに教えてくれた。まだ熱でしんどいのだろう。葵が目覚める前に買ってきた非接触型の体温計で計ったら、三十八度も熱があった。
 よしよしと頭を撫でる。着替えさせる時、ホットタオルで上半身は拭ったが、また汗が浮いているようだ。タオルでこめかみや髪の生え際を拭う。
「熱だけなら、解熱剤でいいか。……何か食べられそう? 固形のものが難しいなら、おかゆとか……アイスとか、ゼリーとか、林檎をすってもいいけど」
 どれも用意してあるよと伝えると、アイスがいいと言われる。
 頭の後ろや背中にクッションをあてて上体を少し起こさせると、カップのアイスを持って葵の傍に帰ってくる。
「食べられる? 大丈夫?」
 カップまで開けると、スプーンを渡す。葵はこくりと頷くと、端からアイスを食べ始める。小さなカップを買ったが、食べきれるだろうか。
 葵が食べている間に、薬も用意しておく。喉の痛みもなく、鼻水もないようだ。純粋に熱だけなら、疲労からきたものかもしれない。ついこの前まで試験の山場だったのだ、ストレスや勉強による疲労など、原因はいろいろ考えられる。
 もくもくと少しずつアイスを食べる葵を眺める。頑張ったんだな、と教え子を見守る教師のような心境になった。空のカップを受け取ると、薬と白湯を渡した。
「ん、食べられたね。よかった……また寝るといいよ。起きてるとしんどいでしょ」
「…………」
「ん? どうかした?」
 葵が無言で訴えかけてくるのに気付き、顔を覗き込む。あの、とか細い声で葵が口を開いた。
「……ねたら、……かえりますか?」
 頼りなげな目で見上げられるのは、なかなか反則だ。ないはずの庇護欲が刺激されてしまう。
「大丈夫。熱が下がるまでいるよ。咲子さんからも言われてるからね」
 未成年でひとり暮らしの子なんだし、具合が悪くなったら心細くなるだろうから、熱が下がるまではそばについていてあげなさい、と電話口で言われたのだ。それに、この頼りない様子を見れば放っておけない。
 葵の頭を撫でると微笑んだ。
「安心して眠りなよ。次に目が覚めたらもう少し元気になってるはずだし」
「……はい」
 目を閉じた葵をもう一度撫でる。寝付くまではそばにいて、片付けなどはその後にしよう。予定を算段すると、綺麗な寝顔を飽きずに眺めた。
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