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14 夜の出来事2
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瀧をロックオンしてからの動きは速かった。数回跳んだだけで間近にやってくる。やはり図体は大きかった。ビルの四階ほどの上背があるだろうか。
瀧が思わず後ろに仰け反った瞬間だ。それは大きな壁にぶち当たったように、急に動きを止めた。そうして何故前へ進めないのかわからないというように、目の前の見えない何か――おそらく結界――を叩き始める。
「どうして……結界は」
壊れているわけでも死んでいるわけでもない。あの青年のような存在が寝起きしているのなら、それはもう強固な結界が張られているはずなのに、この屋敷を守るだけの用途しかない結界だけなのだろうか。
叩く音は聞こえない。だが、徐々に強い力で叩いていることは察せられる。破ろうとしている。見開かれた大きな瞳が血走り、瀧を捉えて離さない。
「……ッ」
ヤバい。
本能が警鐘を打ち鳴らす。
(本気でここまで来る気だ……!)
瀧の全身の毛が逆立つような感覚に襲われる。
陰陽師の家に生まれたが、陰陽師としての力はほとんどない。せいぜい式神の狐を操れる程度だ。まともに妖魔鬼怪と戦ったこともない。
その場から逃げられなかった時点で、魅入られたのは瀧のほうだったかもしれない。
にたりと不気味に笑んだ化物が、だらだらと汚い涎を垂らしているのが見えた。完全に瀧を獲物として――食糧として見ている目。見られているだけなのに圧迫感がある。まったく不愉快だ。
「消えてくれ……!」
腕を顔の前で交差するのは化物の視線から逃れたかったから。漏れた言葉は懇願なのに命令じみた響きになった。
目を開けるのが怖くて、開けるか躊躇していた時だ。
「……君が怪異を引き寄せる天才なのか?」
「っ?」
慌てて目を開け、声がしたほうを向けば、この邸宅の主であろう彼が傍にいた。
月明かりの下で見る彼は、浴衣の肩に上着を引っかけ、夜を統べる者のような落ち着きと静謐な美しさがある。きっと男女問わず彼には見惚れてしまうだろう。
(助かった……)
きっと、彼がまた怪異を祓ってくれたのだ。安心して息を吐く。
「いや、別にオレじゃないと思いますし、今のはオレのせいかもしれないですけど今日に限って言えば西山さんのせいです。今までこんなことはなかったんですが……」
言葉は言い訳がましくなったが、事実だと思う。
青年は気にした様子もなく、瀧を見る。
「……どうして庭に?」
「おかしな夢を見て目が覚めて、眠れなくて……気分でも変わるかと思って庭に出てみたんです。……すみません」
「構わない。……どんな夢を?」
「え? ええと……夢の中でオレは狐神族で、小さな家に住んでて……小さな竜の子どもが遊びに来た、っていう夢なんですけど」
「…………」
美形に真っ直ぐ見つめられるのがこんなに居心地が悪いものだとは知らなかった。瀧は変に目を逸らすこともできず、内心で狼狽える。
瀧が思わず後ろに仰け反った瞬間だ。それは大きな壁にぶち当たったように、急に動きを止めた。そうして何故前へ進めないのかわからないというように、目の前の見えない何か――おそらく結界――を叩き始める。
「どうして……結界は」
壊れているわけでも死んでいるわけでもない。あの青年のような存在が寝起きしているのなら、それはもう強固な結界が張られているはずなのに、この屋敷を守るだけの用途しかない結界だけなのだろうか。
叩く音は聞こえない。だが、徐々に強い力で叩いていることは察せられる。破ろうとしている。見開かれた大きな瞳が血走り、瀧を捉えて離さない。
「……ッ」
ヤバい。
本能が警鐘を打ち鳴らす。
(本気でここまで来る気だ……!)
瀧の全身の毛が逆立つような感覚に襲われる。
陰陽師の家に生まれたが、陰陽師としての力はほとんどない。せいぜい式神の狐を操れる程度だ。まともに妖魔鬼怪と戦ったこともない。
その場から逃げられなかった時点で、魅入られたのは瀧のほうだったかもしれない。
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「消えてくれ……!」
腕を顔の前で交差するのは化物の視線から逃れたかったから。漏れた言葉は懇願なのに命令じみた響きになった。
目を開けるのが怖くて、開けるか躊躇していた時だ。
「……君が怪異を引き寄せる天才なのか?」
「っ?」
慌てて目を開け、声がしたほうを向けば、この邸宅の主であろう彼が傍にいた。
月明かりの下で見る彼は、浴衣の肩に上着を引っかけ、夜を統べる者のような落ち着きと静謐な美しさがある。きっと男女問わず彼には見惚れてしまうだろう。
(助かった……)
きっと、彼がまた怪異を祓ってくれたのだ。安心して息を吐く。
「いや、別にオレじゃないと思いますし、今のはオレのせいかもしれないですけど今日に限って言えば西山さんのせいです。今までこんなことはなかったんですが……」
言葉は言い訳がましくなったが、事実だと思う。
青年は気にした様子もなく、瀧を見る。
「……どうして庭に?」
「おかしな夢を見て目が覚めて、眠れなくて……気分でも変わるかと思って庭に出てみたんです。……すみません」
「構わない。……どんな夢を?」
「え? ええと……夢の中でオレは狐神族で、小さな家に住んでて……小さな竜の子どもが遊びに来た、っていう夢なんですけど」
「…………」
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