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17 喉元過ぎた後2
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「あの……黎さまは、どういった御用で、私たちに……?」
言葉を練っていたのかもしれないが、結局真岡の問いかけはストレートで簡潔なものになった。そうして、返された言葉も簡潔だった。
「この大学に入学した」
「え」
「二年への編入だ」
神族はヒトの上位存在だから、通常ヒトの学校へ入学することはありえない。神族の身内となった稀有なヒトが神族の学校へ通うことはあるようだが、こちらも本当に極稀な例だ。
上位も上位の神族(あくまで瀧たちの想像だ)がヒトの大学へ編入するなど前代未聞ではないだろうか。おまけに瀧と同じ学年。何かの意図を感じるが、気のせいだと思いたい。
梓玥は続けて言う。
「それにともない、君たちの同好会に入会したい」
「えっ?!」
これには心底驚かされた。四人ともが口も目も丸くして、同じ顔をしている。
梓玥はあくまで理性的に理由を教えてくれる。
「君たちは怪異や異形、妖魔鬼怪に興味がある。私はそれらに対して有効で安全な手段。――どうだろうか」
言い出された内容にも驚かされたが、それよりこの青年が、まさか自分をオカ研に『有効で安全な手段』として売り込んでくるとは思わなかった。
上位神族ならヒトに対して命令すればいいだけのことだ。それなのにこの男はそれをしない。
(ど……どういうこと……)
意図が、真意が読めない。
瀧以外の三人も同様のことを思ったに違いない。それに、命令あるなしに関わらず、どのみち神族相手のことなのだからヒトである四人に拒否権など最初からあるわけがなかった。
「……俺たちは、とっても、ものすごく、足手まといになると思いますが、それでもいいということですか?」
立ち直りが早かったのは真岡だ。真っ当なことを訊く。これは保険ともいう。
「良い」
きっぱり言い切ってくれた。
傍目には自分たちと同じ歳くらいに見えるのに、言葉のひとつひとつに重みがある。だから彼が「良い」と言うからには、オカ研メンバーはどういう状況であれ身体に不安を覚えることにはならない、ということ。
それを大言壮語と切り捨てるには、彼の本性が見えなさすぎる。神族だろうというのも一方的な予想に過ぎないが、気のせいとは言い切れない。何しろ、今だって、こんなに人目を惹く美貌がいるというのに、誰もこのテーブルを気にしている様子がない。彼が何かしているに決まっていた。
「そこまでするほど、あなたに、黎さまに利があるとは思えませんが……」
「利益は度外視。彼に興味がある」
内心が読めない無表情だったのに、そう言った時だけ少し雰囲気が和らいだ気がした。
ただ、その柔らかさが自分に向けられているとなると話は別だ。挙動不審になってしまう。
「お、オレ?」
「……タキに?」
意外そうに三人が瀧を見る。
(そ、そんな風に見られても……)
自分に彼をそうさせるだけの何があるというのだろう。
「それから、こういう場所や仲間に丁寧に話すのはおかしいだろう。もっと砕けて話してくれて良い。誰も咎めない」
そう言われていきなりすぐに砕けた言葉遣いで梓玥と話せる豪胆はいないだろう。
「お……追々、砕けさせてください……」
「うん」
無礼講というわけではないだろうが、破格の待遇を得られていることを疑問に思う。こちらはただのヒトが四人だ。彼の周囲にはヒトがいないはずだから、珍しがられている可能性はある。
こういう経緯で、オカ研は五人目の部員を迎えることになったのだった。
*******
言葉を練っていたのかもしれないが、結局真岡の問いかけはストレートで簡潔なものになった。そうして、返された言葉も簡潔だった。
「この大学に入学した」
「え」
「二年への編入だ」
神族はヒトの上位存在だから、通常ヒトの学校へ入学することはありえない。神族の身内となった稀有なヒトが神族の学校へ通うことはあるようだが、こちらも本当に極稀な例だ。
上位も上位の神族(あくまで瀧たちの想像だ)がヒトの大学へ編入するなど前代未聞ではないだろうか。おまけに瀧と同じ学年。何かの意図を感じるが、気のせいだと思いたい。
梓玥は続けて言う。
「それにともない、君たちの同好会に入会したい」
「えっ?!」
これには心底驚かされた。四人ともが口も目も丸くして、同じ顔をしている。
梓玥はあくまで理性的に理由を教えてくれる。
「君たちは怪異や異形、妖魔鬼怪に興味がある。私はそれらに対して有効で安全な手段。――どうだろうか」
言い出された内容にも驚かされたが、それよりこの青年が、まさか自分をオカ研に『有効で安全な手段』として売り込んでくるとは思わなかった。
上位神族ならヒトに対して命令すればいいだけのことだ。それなのにこの男はそれをしない。
(ど……どういうこと……)
意図が、真意が読めない。
瀧以外の三人も同様のことを思ったに違いない。それに、命令あるなしに関わらず、どのみち神族相手のことなのだからヒトである四人に拒否権など最初からあるわけがなかった。
「……俺たちは、とっても、ものすごく、足手まといになると思いますが、それでもいいということですか?」
立ち直りが早かったのは真岡だ。真っ当なことを訊く。これは保険ともいう。
「良い」
きっぱり言い切ってくれた。
傍目には自分たちと同じ歳くらいに見えるのに、言葉のひとつひとつに重みがある。だから彼が「良い」と言うからには、オカ研メンバーはどういう状況であれ身体に不安を覚えることにはならない、ということ。
それを大言壮語と切り捨てるには、彼の本性が見えなさすぎる。神族だろうというのも一方的な予想に過ぎないが、気のせいとは言い切れない。何しろ、今だって、こんなに人目を惹く美貌がいるというのに、誰もこのテーブルを気にしている様子がない。彼が何かしているに決まっていた。
「そこまでするほど、あなたに、黎さまに利があるとは思えませんが……」
「利益は度外視。彼に興味がある」
内心が読めない無表情だったのに、そう言った時だけ少し雰囲気が和らいだ気がした。
ただ、その柔らかさが自分に向けられているとなると話は別だ。挙動不審になってしまう。
「お、オレ?」
「……タキに?」
意外そうに三人が瀧を見る。
(そ、そんな風に見られても……)
自分に彼をそうさせるだけの何があるというのだろう。
「それから、こういう場所や仲間に丁寧に話すのはおかしいだろう。もっと砕けて話してくれて良い。誰も咎めない」
そう言われていきなりすぐに砕けた言葉遣いで梓玥と話せる豪胆はいないだろう。
「お……追々、砕けさせてください……」
「うん」
無礼講というわけではないだろうが、破格の待遇を得られていることを疑問に思う。こちらはただのヒトが四人だ。彼の周囲にはヒトがいないはずだから、珍しがられている可能性はある。
こういう経緯で、オカ研は五人目の部員を迎えることになったのだった。
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