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16 喉元過ぎた後1
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ゴールデンウィークから二週間後のこと。
第一食堂、窓際のいつもの席。オカ研がいつも溜まるテーブルは、瀧より先に三人がすでにテーブルにいるようだった。
が、様子がおかしい。
三人ともテーブルの向こう側、こちらを向いて座っている。どうやらこちらに背を向けて座っている誰かがいるようだが、それにしても三人の俯いた顔、表情は固い。顔色など蒼白と言っていい。
「どうしたんですか、そんな変な顔、し、て……」
テーブルの側に行くと、言い切る前に三人の身の上に起きた異変を理解した。
(う……嘘だろ……)
瀧に気付いた西山が、助けを求める小動物の目で見上げてくる。そんな目で見ないでほしい。自分だって何もできない。
「……お客様、に、なるんですか……?」
オカ研に?
滑稽な質問だと思いつつ、真岡に問いかける。答えにならない答えを返してくれたのは、三人を挙動不審にさせている本人だった。
「自己紹介もまだだった。私は黎梓玥」
名乗られてしまった限りには、名乗り返さねばならない。それが礼儀だ。
「部長の、真岡です……」
「副部長の、西山です……」
「二年の壬司です……」
「……一年の嶋田です……」
ひと通り自己紹介したところで、事前に打ち合わせたわけでもないのに全員が梓玥に対して深く頭を下げた。
「……その節は、大変ご面倒をおかけし、またお世話になりまして……」
「ヒトは怪異や妖魔鬼怪に抗う術がないから仕方ない。好奇心も止められないものだろう。無事に帰ることができたようで何より」
「ありがとうございます……」
咎められもせず、無事に帰れてよかったとまで言われてしまうのは恐縮どころではない。寛容な言葉に全員が胸を撫で下ろす。
無事に帰宅できたのは、やはり梓玥のお陰だ。車がなくなったから近くの駅まで送ってくれたし、電車代まで出してくれた。たとえ親であっても、本当のことを言ったとしても信じてはもらえないだろう。
「…………」
このまま沈黙するのは針の筵に座っているようなものだ。瀧、西山、嶋田がちらちらと真岡に視線をやる。部長なのだから、代表して質問をするのは何もおかしいことではない。
他方、瀧の居心地を悪くしているのはこの場を支配している沈黙だけではなかった。
どういう理由なのかわからないが、梓玥は真っ直ぐと瀧を見つめている。顔も視線も上げにくい。
背筋が真っ直ぐ伸び、人目も心も奪うような、百花の王のごとき風貌。ただ彼を遠くから見、見惚れているだけならよかったのに、どうしてこんな間近で見つめられなければならないのか。
(心臓に悪いんだけど……?)
あの夜もそうだが、今も、靱さを感じる透き通った薄青の瞳は鼓動を乱す作用でもあるかのようだ。
このことは他の三人は気付いていないらしい。きっとそれどころではないからだろう。
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