【完結】狐と竜の怪異専門探偵事務所~千年前に構った竜の子に現世で再会、溺愛執着されています~

オジカヅキ・オボロ

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 不意に、顔を逸らした梓玥が薄らと眉を寄せる。溜息を漏らしたように見えたが、すぐに顔はこちらへ向いた。見たくないもの、あるいは不快なものを見たような態度だ。何があったのだろう。

「梓玥サン、質問していいですか?」

 砕けた口調を求められた後、名を呼ぶのに瀧だけ名前を呼んでほしいと要請された。激しい葛藤があったが、結局
『さん付け』をすることで妥協してもらっている。他のメンバーは『黎さん』だ。
 梓玥はほんのりと微笑み、頷く。

「何でもどうぞ」
「梓玥サンの容姿はヒトの世界では……その、めちゃくちゃ目立つんですけど、周りが気にしてなさそうなのは……何かしてるんですかね……?」

 オカ研メンバーの中での予想として、梓玥は神族の中でもトップの竜神族だ。先ほど竜王のことを引き合いに出されたから、瀧の中では確信に変わっている。

 竜神族といえば、全体的に若木のようなしなやかさと逞しさを持つ美男、嫋やかで艶やかな美女が多く、黒髪に白い肌、鹿神族と似たような角、長い尾の色は様々らしいが、優美と決まっている。そうして基本的に穏やかな性質だが、怒らせるとどうなるかわからないところは神族で一、二を争う。

 商業のほうでは、表に出ることを好まないが、水資源関係にはよく関連していた。
 そんな神族の御方がヒトに混ざっていて浮いて目立たないわけがないのに、梓玥が編入してきて約一ヶ月半になるが、噂にすらなっていない。


 そんなはずはないだろう。


 あるとすれば、術か何かを使っているはずだ。
 読み通り、梓玥は頷いた。

「そう、隠蔽の術を使っている。気配も極端に薄くしているつもり」
「そんなことできるんですね……」
「神族がヒトの領域に立ち入る時は、隠蔽術を使うのが基本。目立ってしまうのは本意ではないから」
「なるほど……」

 はぁ、と感心の息を吐いた時、嶋田が離れた場所から手を振ってきた。

「タキちゃんセンパイ、黎センパイ! 真岡センパイが呼んでまーす!」
「え? ここじゃないの?」
「待ち合わせに全員でいたほうがいいから、とにかく来てくれって。六号棟の横のベンチっす。おれも向かう途中なんで」

 行きましょー、と元気に言う嶋田が、一番慣れが早かったかもしれない。梓玥に対して物怖じしないタイプだ。
 なんとなく嶋田を先頭にして食堂棟の隣、六号棟の東側へ向かう。すでに真岡と西山はベンチの前にいた。夏の日差しに溶けそうになっているのは瀧だけではないが、梓玥だけが涼しい顔をしている。

(暑さを感じないのかな……そういえばずっと長袖だし)

 はあ、と吐いた息まで熱い気がした。

「お、揃ったな」
「お疲れ様です」

 六号棟の東側へ到着すると、ベンチには真岡と西山が座っていた。こちらに気付くと立ち上がって伸びをする。

「真岡さん、食堂じゃないとこで全員集合ってどうしたんですか? こんな空調もない外で」
「オカ研で呼び出されたんだよ。人目があんまりないところがいいって」
「オカ研で? 全員ですか? 誰から?」
「そう。時間だから、もう来るはず」
 時間に正確なやつなんだ、と真岡が言ったところで、十三時のチャイムが鳴った。
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