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36 動画2
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(ゆ……夢に見そう……)
絶対に悪夢だと断言できる。背中を汗がたらりと流れる。乱れた呼吸を繰り返し落ち着けると、長い溜息を吐いた。
「…………」
「タキ、どうした?」
「タキちゃんセンパイ、犬苦手でした?」
西山と嶋田とは明らかに違う内容の動画だ。真岡を見れば、彼も緊迫が走った顔をしている。そうして、深刻な顔で西山と嶋田を交互に見た。
「……おまえらには、犬の動画に見えたんだな?」
「かわいいポメラニアンの動画でしたけど」
「そう。子犬のワルツって感じの。……なに、おまえらは違ったの?」
「……俺が観た映像には和室が出てきたけど、タキは?」
「オレが観たのにも和室は出てきました。部屋中に術符が貼られていって……」
「同じっぽいな。黎さんは……」
「瀧と真岡と同じ内容だ」
「えっ、なんでオレとシマだけ心温まるポメ動画だったわけ?! 同じ動画だったんだよな?」
なんで? と不思議がる西山に、梓玥が口を開いた。
「……考えられる可能性がひとつ。西山と嶋田は本当にただのヒトで、真岡と瀧には神族や陰陽師の素養があるということ」
梓玥が言うと、西山は「タキはわかる。陰陽師の家の子だもんな」と納得が早い。
「でも真岡ん家って陰陽師だっけ」
「親戚はいるけど……俺はただのヒトだと思う」
「潜在的なものを引き出せていないだけ……ということもありえる」
梓玥の真岡を見る視線は意味ありげに見えたが、一瞬だったので気のせいかもしれない。
「はー、そういうのもあるんすね……」
感心したように何度も頷く嶋田は、メモ帳に何か書いている。知識として覚えておくつもりだろう。
梓玥はそれぞれのタブレットを回収すると、薄いサコッシュにしまいこんだ。膨らんでいる様子もない。本当にあのサコッシュはどういう仕組みになっているのだろう。
「この動画の削除に関しては、私のほうから陰陽寮へ連絡しておく」
「イトコに動画は削除するって報せて大丈夫ですか?」
「報せてあげて。きっとその子の兄上も、すぐに見付かる。迷っているだけだから、もう陰陽師が見つけるだろう」
「ありがとうございます!」
早速スマホを取り出した西山と嶋田に手のひらに乗るサイズの小さな札が差し出される。
「この符を持っていて。今晩だけで構わない」
「えっ、何かあるんですか」
「瀧と真岡と同じ空間にいたから、怪異が起こるかもしれない。けれどこれならせいぜい悪夢を見る程度で済む」
「悪夢……やだなぁ……」
けれど悪夢で済むなら怪異に襲われるより安い、と納得したらしく、しぶしぶとふたりはバッグへしまい込んだ。西山はメールかSNSかでイトコに連絡を取っているらしい。
「あの……黎さん、俺は……」
「君はこちら。親戚も頼っていい。……正直に言えば、褒めてくれる」
ふたりより少し大きな符を差し出すと、真岡はそっと受け取る。
「……そうでしょうか」
「うん」
「……言ってみます」
梓玥と真岡の間に何かあったのだろうか。そういえばふたりが来るのが遅かった時があるが、あれは何だったのだろう。何を話していたのだろう。今さら気になってきた。
(いや別に……関係ないと言えば関係ないんだけどさ……)
それにしてはこのモヤモヤはなんだろう。割りきれないでいると、梓玥に背中をぽんと叩かれた。
「瀧は、私がいるから大丈夫」
そう言われてしまうと、照れていいのか憤慨していいのかわからないが、出会った初っ端から梓玥の力は見てきたから「大丈夫」と言われた言葉を疑うことはない。
今日はひとまず解散し、それぞれが帰路につく。
瀧はいつも通り梓玥と帰宅した。
+++++++
絶対に悪夢だと断言できる。背中を汗がたらりと流れる。乱れた呼吸を繰り返し落ち着けると、長い溜息を吐いた。
「…………」
「タキ、どうした?」
「タキちゃんセンパイ、犬苦手でした?」
西山と嶋田とは明らかに違う内容の動画だ。真岡を見れば、彼も緊迫が走った顔をしている。そうして、深刻な顔で西山と嶋田を交互に見た。
「……おまえらには、犬の動画に見えたんだな?」
「かわいいポメラニアンの動画でしたけど」
「そう。子犬のワルツって感じの。……なに、おまえらは違ったの?」
「……俺が観た映像には和室が出てきたけど、タキは?」
「オレが観たのにも和室は出てきました。部屋中に術符が貼られていって……」
「同じっぽいな。黎さんは……」
「瀧と真岡と同じ内容だ」
「えっ、なんでオレとシマだけ心温まるポメ動画だったわけ?! 同じ動画だったんだよな?」
なんで? と不思議がる西山に、梓玥が口を開いた。
「……考えられる可能性がひとつ。西山と嶋田は本当にただのヒトで、真岡と瀧には神族や陰陽師の素養があるということ」
梓玥が言うと、西山は「タキはわかる。陰陽師の家の子だもんな」と納得が早い。
「でも真岡ん家って陰陽師だっけ」
「親戚はいるけど……俺はただのヒトだと思う」
「潜在的なものを引き出せていないだけ……ということもありえる」
梓玥の真岡を見る視線は意味ありげに見えたが、一瞬だったので気のせいかもしれない。
「はー、そういうのもあるんすね……」
感心したように何度も頷く嶋田は、メモ帳に何か書いている。知識として覚えておくつもりだろう。
梓玥はそれぞれのタブレットを回収すると、薄いサコッシュにしまいこんだ。膨らんでいる様子もない。本当にあのサコッシュはどういう仕組みになっているのだろう。
「この動画の削除に関しては、私のほうから陰陽寮へ連絡しておく」
「イトコに動画は削除するって報せて大丈夫ですか?」
「報せてあげて。きっとその子の兄上も、すぐに見付かる。迷っているだけだから、もう陰陽師が見つけるだろう」
「ありがとうございます!」
早速スマホを取り出した西山と嶋田に手のひらに乗るサイズの小さな札が差し出される。
「この符を持っていて。今晩だけで構わない」
「えっ、何かあるんですか」
「瀧と真岡と同じ空間にいたから、怪異が起こるかもしれない。けれどこれならせいぜい悪夢を見る程度で済む」
「悪夢……やだなぁ……」
けれど悪夢で済むなら怪異に襲われるより安い、と納得したらしく、しぶしぶとふたりはバッグへしまい込んだ。西山はメールかSNSかでイトコに連絡を取っているらしい。
「あの……黎さん、俺は……」
「君はこちら。親戚も頼っていい。……正直に言えば、褒めてくれる」
ふたりより少し大きな符を差し出すと、真岡はそっと受け取る。
「……そうでしょうか」
「うん」
「……言ってみます」
梓玥と真岡の間に何かあったのだろうか。そういえばふたりが来るのが遅かった時があるが、あれは何だったのだろう。何を話していたのだろう。今さら気になってきた。
(いや別に……関係ないと言えば関係ないんだけどさ……)
それにしてはこのモヤモヤはなんだろう。割りきれないでいると、梓玥に背中をぽんと叩かれた。
「瀧は、私がいるから大丈夫」
そう言われてしまうと、照れていいのか憤慨していいのかわからないが、出会った初っ端から梓玥の力は見てきたから「大丈夫」と言われた言葉を疑うことはない。
今日はひとまず解散し、それぞれが帰路につく。
瀧はいつも通り梓玥と帰宅した。
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