【完結】狐と竜の怪異専門探偵事務所~千年前に構った竜の子に現世で再会、溺愛執着されています~

オジカヅキ・オボロ

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55 解決編5(断罪)

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「あの……黎さん、いろいろ、どこから訊いていいかわからないんですけど……」

 瀧にも視線をくれる。それはそうだ、この狐姿は真っ先に気になるところだろう。先ほどはそれを問うより早く、このふたりが邪魔をしたようなものだ。

「彼らが私に喧嘩を売り、水落鬼をプールへ放たせ、あの動画を作った。……名乗れ」

 梓玥の言葉を、ふたりは咎めることができない。梓玥は今、ヒトの姿だ。神族の特徴は隠したまま。本来なら神族らしい姿をしているふたりは梓玥に不敬を言いたかったに違いない。
 ふたりを動けなくさせているのは、術としてはポピュラーな捕縛術だろう。ポピュラーゆえに、術者の力量がそのまま出る。彼らが動けないということは、彼らより格上の者が術を使っている証拠。それをふたりもわかっているから大人しくしているに違いなかった。

「狐神族宰相が次男、柯静峨カ・セイガ
「竜神族白竜王が三男、敖栢葯ゴウ・ハクヤク

 妙な間が空きかけ、真岡がぺこりと頭を下げる。

「……あ、……真岡涼です」
「西山渉です……」
「壬司瀧です」
「嶋田浩二です……」

 なんだかとても間抜けな絵面ではなかろうか。だが梓玥が気にした様子はない。

「私は黎梓玥レイ・シゲツ。……かつてゴウ梓玥だった。と言えば、敖栢葯には私のことがわかるな?」

 俯いたままの栢葯の肩がびくりと震える。口から何か言葉がいくつか漏れたようだったが、瀧には聞こえなかった。

「おまえたちふたりが、害意・敵意・過度の関心をもって水落鬼を放ち、あの動画に手を加え、彼らがあの動画に関わるように仕向けた。……違いないか」
「……はい」
「…………はい」

 これは断罪というのではないか。瀧たちオカ研としては、謎が解ければそれで良かったのだが。
 ふたりはまるで親か教師に叱られている子どもだ。やや俯いた顔は仏頂面というより、どこかふて腐れて見える。

「目的を」

 最初に口を開いたのは静峨だ。

「古より、九尾への監視と対策は狐神族の責務のひとつ。約二十年前、倭国にその兆しありと報せが入った時から、兆しの周辺に見張りを付けていました」

 顔を上げて話し出す顔は、何を考えているのかわからない無表情。

「倭国の竜は栢葯どのほど九尾を危険視しておらず、本国への報告は不要としたようですが、我が狐神のほうは倭国から報せを受け、兆しの中の狐を封印することで、ひとまず状況を見ていこうと考えました。まだ何もしていない者を、していないうちから裁くのは問題がありますから」

 落ち着いた様子で紡ぐ静峨の言葉は真摯に思える。静峨の理性的な雰囲気がそう思わせるのか、狐神族がそういうところを見せるのが得意なのか。ただこの場限りのことなのかはわからない。

「九尾を危険視しつつも我らの考えに賛同してくれたのが土御門、壬司の陰陽師家。そのため、この二家と狐神とで兆しへそれぞれ封印を施しました」
「封印……って?」

 西山の問い。

「彼らの問いにも私の問いと同じように答えよ」

 梓玥が促すと、静峨が答える。

「狐として目覚めることがないように、記憶、力、そういうものを封じました」
「封印が完全でない、あるいは作動しなかった場合には、狐神も同じような考えだったのだろうな」
「……さあ、そこまでは私にはわかりません」

 そこまでの地位にいないので、と静峨は答えるが、きっと梓玥の言った通りなのだろう。
 神族の、ヒトに対するそんな部分は恐ろしい。
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