57 / 68
56 解決編6(断罪)
しおりを挟む
(序列が下だからだろうけど、それで納得したくはないな……)
話を聞きながら瀧は思う。
神族はヒトを差別することはほとんどないというが、それは圧倒的序列差によって、取るに足らない者という認識のせいかもしれない。
(……前世は狐だったことは考慮されないんだな……)
それとも狐だったからこそなのだろうか。
「ただ、陰陽師たちは存在の抹消よりは封印することのほうにこだわっていたようではありました」
瀧は壬司家に嫁いだ土御門家の女の胎に宿った。ヒトの体に宿ったものだから、何か起こる前に存在を抹消するには女の――母親ごと殺し、封印するしかない。堕ろすだけではすぐに別の体へ移ってしまう可能性が高いからだ。胎にいるうちに封印するのであれば、存在は胎の中に固定されているから成功率が高い。
堕胎にしろ母親ごと殺すにしろ壬司家は猛反発しただろうし、土御門も遠縁とはいえ一族の女を殺すことをすぐに了承することはなかったはず。
(……結果としてオレはここにいるわけだけど……)
本当に、運命はどう回るのかまったくわからないものだ。
「水落鬼は狐神族単独でのことか。では動画は」
梓玥の尋問は続く。答えたのは栢葯。静峨と違い、栢葯のほうは跪かされているのが心底から不本意そうに見えた。プライドが高いのかもしれない。
「産まれる前から監視対象を監視していたのは、倭国の狐だ。狐神にしても我が竜神にしても、またあの狐を世に放つのは危険だと共通認識があり。できるなら早期に屠るのが安全と思っていた」
「それは竜神族の考えか」
梓玥の声が一段低くなり、冷ややかさを増した。氷の刃物を首許に当てられたような空気。
「いえ、某の考えです」
栢葯は慌てたように首を振る。
(まあ……そう言っておかないと、竜神族の全員が梓玥に反目したってことになるし……梓玥は神様だから、すごい罰を与えることもありそうだもんな)
同族だからと容赦していては、他の神族にも示しが付かないだろう。それを彼らもわかっているはずだ。
「そう」
続けて、と促す梓玥の声の冷たさは、出会ってから今まで聞いたことのない、鋭い刃物のような冷え。
(……つまり、狐のオレを殺そうって思った考えが気に食わないんだろう、けど……)
千年もの間、瀧を――瀧耀を探し続け、そのために神様にまでなった男の執着の一端を見た気がした。物騒なのは瀧にも、瀧以外の三人にも恐ろしいので避けてもらいたい。
話は続いた。
「その狐から、数ヶ月前から異変が生じているようだと連絡が届き、直ちに詳細を調査させました」
狐のことだからだろう、静峨が答えた。
「何かわかったか?」
「……水落鬼の件が片付けられた後、大学の同級生と暮らしていることはわかりました。壬司家のほうからも、そのようにしか返事を得られず……」
悔しげな静峨に対し、梓玥はあくまで冷ややかだ。梓玥が、自分のことを探っている者の存在に気付いていて、隠そうとしたなら、彼らが気付くのは不可能に近い。だから悔しがるだけ無駄だ。そう言っても納得できるかは別問題だろうが。
(格上相手の術は破れないのが基本だもんな……)
神の術など、神にしか破れないだろう。
壬司家、瀧の実家が梓玥のことを言わなかったことは不思議ではある。何か口止めか禁言術をしていたのだろうか。
「水落鬼の目的は」
話を聞きながら瀧は思う。
神族はヒトを差別することはほとんどないというが、それは圧倒的序列差によって、取るに足らない者という認識のせいかもしれない。
(……前世は狐だったことは考慮されないんだな……)
それとも狐だったからこそなのだろうか。
「ただ、陰陽師たちは存在の抹消よりは封印することのほうにこだわっていたようではありました」
瀧は壬司家に嫁いだ土御門家の女の胎に宿った。ヒトの体に宿ったものだから、何か起こる前に存在を抹消するには女の――母親ごと殺し、封印するしかない。堕ろすだけではすぐに別の体へ移ってしまう可能性が高いからだ。胎にいるうちに封印するのであれば、存在は胎の中に固定されているから成功率が高い。
堕胎にしろ母親ごと殺すにしろ壬司家は猛反発しただろうし、土御門も遠縁とはいえ一族の女を殺すことをすぐに了承することはなかったはず。
(……結果としてオレはここにいるわけだけど……)
本当に、運命はどう回るのかまったくわからないものだ。
「水落鬼は狐神族単独でのことか。では動画は」
梓玥の尋問は続く。答えたのは栢葯。静峨と違い、栢葯のほうは跪かされているのが心底から不本意そうに見えた。プライドが高いのかもしれない。
「産まれる前から監視対象を監視していたのは、倭国の狐だ。狐神にしても我が竜神にしても、またあの狐を世に放つのは危険だと共通認識があり。できるなら早期に屠るのが安全と思っていた」
「それは竜神族の考えか」
梓玥の声が一段低くなり、冷ややかさを増した。氷の刃物を首許に当てられたような空気。
「いえ、某の考えです」
栢葯は慌てたように首を振る。
(まあ……そう言っておかないと、竜神族の全員が梓玥に反目したってことになるし……梓玥は神様だから、すごい罰を与えることもありそうだもんな)
同族だからと容赦していては、他の神族にも示しが付かないだろう。それを彼らもわかっているはずだ。
「そう」
続けて、と促す梓玥の声の冷たさは、出会ってから今まで聞いたことのない、鋭い刃物のような冷え。
(……つまり、狐のオレを殺そうって思った考えが気に食わないんだろう、けど……)
千年もの間、瀧を――瀧耀を探し続け、そのために神様にまでなった男の執着の一端を見た気がした。物騒なのは瀧にも、瀧以外の三人にも恐ろしいので避けてもらいたい。
話は続いた。
「その狐から、数ヶ月前から異変が生じているようだと連絡が届き、直ちに詳細を調査させました」
狐のことだからだろう、静峨が答えた。
「何かわかったか?」
「……水落鬼の件が片付けられた後、大学の同級生と暮らしていることはわかりました。壬司家のほうからも、そのようにしか返事を得られず……」
悔しげな静峨に対し、梓玥はあくまで冷ややかだ。梓玥が、自分のことを探っている者の存在に気付いていて、隠そうとしたなら、彼らが気付くのは不可能に近い。だから悔しがるだけ無駄だ。そう言っても納得できるかは別問題だろうが。
(格上相手の術は破れないのが基本だもんな……)
神の術など、神にしか破れないだろう。
壬司家、瀧の実家が梓玥のことを言わなかったことは不思議ではある。何か口止めか禁言術をしていたのだろうか。
「水落鬼の目的は」
1
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる