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かっとうの章
第三十三話:迎撃準備
パークスの話によると、召集に応じない者には問答無用で斬りかかって来たという。『あいつら一体何をとち狂ったんだ』と、パークスは困惑気味に、ほんの半刻ほど前に起きた出来事を語る。
「相手の戦力はどのくらいか分かります?」
「八十人くらいは集まってたな。殆どは街のチンピラって感じの奴等だったが、何人か知った顔の傭兵崩れも交じってる」
それを聞いた護衛騎士やアレクトール達が目を瞠る。パークスは傭兵を辞めた後は開拓作業員として真面目に働いているが、傭兵時代の顔見知りの中には、街の権力者の下で用心棒や汚れ仕事を生業にしている者も少なくないらしい。
「私達に味方してくれそうな人達って、どのくらい居ます?」
「俺を含めて召集に応じなかった連中はバラバラに逃げちまったからなぁ……」
呼び掛ければこちら側に付くとは思うが、今から探しに行くのは無理があるとパークスは唸る。
「多分、そろそろ集まってた奴等が襲撃に来るんじゃねーかな」
「そっか。じゃあ私達だけで対処しましょうかね」
「聖女様、宜しいでしょうか」
事も無げにいう呼葉だったが、護衛騎士の隊長が発言の許可を求めたので促す。
「どうぞ」
「恐れながら、情報が確かなら敵の数があまりに多いようです。ここは速やかに街を脱出する事を進言致します」
「シド君、馬車の様子はどうだった?」
「抑えられてた」
護衛隊長の進言に、シドへの問い掛けで答える呼葉。馬車も馬も、既に抑えられていると聞いて、護衛の騎士達は顔を見合わせる。
「大丈夫よ、一人辺り十人も相手すれば勝てるから」
「そ、それは……」
今回の慰問巡行に同行している護衛の騎士達は、呼葉のパルマム奪還戦での活躍を話に聞いてはいるが、実際にその力を目にした者は居ない。
夕刻に起きた騒動で『聖女の祝福』を体感したものの、実戦でどれほどの効果を期待出来るのか、彼等にとってはまだ未知数なのだ。
慎重と言うよりも、明らかに怖じ気づいているように見える護衛の騎士達に、アレクトール達は若干の呆れを抱きながらも、致し方ない部分もあると内心で理解を示す。
安全な後方の田舎街への慰問巡行という事で、護衛につけられた彼等はいずれも王宮貴族の身内の者ばかり。騎士団の中で実力はあると認められているが、戦場に出る事はまず無い。
騎士団で僅かばかりの下積み期間を経て直ぐ士官職に上がり、後は軍施設内で書類を捌く日々を送る事が約束されている、良家の嫡男達なのである。ぶっちゃけ、聖女様御一行の護衛に選ばれたのも、箔付けの為と言う意味合いが強いのだ。
そんな若き護衛騎士達の内情を知る由もない元傭兵のパークスは、弱腰な騎士達を鼻で笑いつつ言った。
「俺は聖女の嬢ちゃんに付くぜ。あの祝福がありゃあ魔族軍の大鬼型にだって負ける気がしねぇ」
戦うなら助太刀するから雇ってくれとアピールする。
「それじゃあパークスさんには助っ人として参加してもらおうかな。報酬の取り決めとか任せていい?」
呼葉は現地で傭兵を雇った場合のアレやコレについて、アレクトール達に丸投げする。
護衛の騎士達からは積極的に反対する声も上がらなかったので、パークスの雇用はこの場で決定。必要書類の作成や手続きをするからと、パークスは一旦ザナムが連れて行った。
軽く夜食など摂りつつ、ロビーの大広間で待機する事しばらく。もうすぐ夜明けという頃に事態は動いた。
「宿前の広場に武装した集団が多数集結中!」
「襲撃か?」
「恐らくは」
見張り役と護衛隊長のやり取りに、他の騎士達は緊張も露に息を呑む。
不安気な若い騎士達とは対照的に落ち着いた様子で席を立った呼葉は、宝杖フェルティリティを装備すると、正面の出入り口に向かった。
「せ、聖女様、どちらに?」
「迎え撃つ。パークスさん、さっそく働いて貰うわよ?」
「お待ちを! ここは慎重に、まずは相手の出方を見るべきでは?」
いきなり迎撃に出ようとする呼葉を、護衛の騎士達は止めようとするが、呼葉は相手の準備が整う前に叩く方が安全だと説く。
「丈夫な砦にでもいるならともかく、この宿って要人警護目的の防護対策もされてないみたいだし、下手に籠城して火でも放たれたら大変だよ?」
襲撃者――イスカル神官長とグリント支配人の目的は聖女一行の抹殺だ。全てを失う破滅を前に、高級宿を一軒燃やしてその憂いを安全に始末出来るなら、彼等は迷わずやるだろう。
「という訳で集結中の武装集団に奇襲を仕掛けます。シド君は裏口を警戒。アレクトールさん達はこの場で待機。護衛隊長と騎士一人を残して残りは迎撃。覚悟を決めた人から順に付いて来て」
粛々と指示を出して歩き出した呼葉に、護衛騎士の予備装備を借りて武装したパークスが続く。戸惑うように顔を見合わせた若い騎士達は、やがて一人、また一人と呼葉の後を追うのだった。
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