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第四章 ヴォルフリートの裏の顔
49 護衛騎士グリム
グリム――そう名乗っているが、その正体はテオバルト。
彼の任務はただ一つ。ヴォルフリート=ド=ノワール第二王子を常に傍らで彼を守り抜くことだった。
条件は三つ。
一つ、王子を必ず守り切ること。
二つ、同い年もしくは歳が近いこと。
三つ、護衛であると同時に、王子の「良き友」となれること。
王はその条件を満たす者を求め、騎士志望が憧れる国内随一のエリート中のエリートが揃う養成機関――騎士養成学校の中から候補を厳選した。厳格な適性検査に始まり、体術・剣術・座学の試験、さらには人格面を確認するための幾度もの面談。ふるいにふるいをかけ、そして最後に残ったのがたまたまヴォルフリートと同い年のテオバルトだった。
そして二人は出会った瞬間から打ち解けた。
互いに強烈なDom性を持ち、相手の「泣き顔にしか興奮できない」という歪んだ共通点まで抱えていたからだ。主人と護衛というよりは、もはや対等な友――いや、危ういほど似通った性癖を分かち合える唯一無二の存在だった。
ある日、ヴォルフリートは惚けた顔のまま、とんでもないことを口にした。
「ルクレール公爵令嬢の従者……レオナール・ルクレールに、一目惚れした」
その瞬間、テオバルトは心底「最悪だ」と思った。
以来、ヴォルフリートは一度は足を洗ったはずの第二図書館へ「エーベル」と偽名を用いて通うようになった。もちろん護衛であるテオバルトも、仕方なく「グリム」を名乗り、その後を追う。
第二図書館には暗黙の了解があった。誰が誰か、正体に勘づいても口にしてはならない――鉄の掟だ。だが、スカーレットとシルヴァ。二人の存在はあまりに異質で、すぐに周囲から「誰なのか」察せられていた。
苛烈でヒステリックな女王気質、強烈な言葉と立ち振る舞い――それは誰が見てもアナスタシア・ルクレールその人。
その影に控え、物静かで掴みどころのない雰囲気を放つ従者――レオナール。
誰も口には出さない。だが皆、理解していた。
テオバルトはアナスタシアが嫌いだった。
わがままで高飛車、話が通じず、気に入らなければすぐに癇癪を起こす。そんな女が、自分の主であり親友であるヴォルフリートに恋心を寄せている――考えるだけで吐き気がする。
だが、その嫌悪は昨日、音を立てて崩れた。
アナスタシアが公衆の面前でSub Dropに陥った時、応急処置として彼女を跪かせた。その一瞬――涙に濡れ、必死に命令に縋るアナスタシアの姿が網膜に焼きついた。
あの顔は忘れられない。これまで幾人ものSubとプレイをしてきたが、彼女ほど相性が噛み合った相手はいなかった。
プレイ後の満足感は桁違いで、心の奥底から震えるような「支配の愉悦」を得た。
それ以来、アナスタシアが頭から離れなくなった。
彼の任務はただ一つ。ヴォルフリート=ド=ノワール第二王子を常に傍らで彼を守り抜くことだった。
条件は三つ。
一つ、王子を必ず守り切ること。
二つ、同い年もしくは歳が近いこと。
三つ、護衛であると同時に、王子の「良き友」となれること。
王はその条件を満たす者を求め、騎士志望が憧れる国内随一のエリート中のエリートが揃う養成機関――騎士養成学校の中から候補を厳選した。厳格な適性検査に始まり、体術・剣術・座学の試験、さらには人格面を確認するための幾度もの面談。ふるいにふるいをかけ、そして最後に残ったのがたまたまヴォルフリートと同い年のテオバルトだった。
そして二人は出会った瞬間から打ち解けた。
互いに強烈なDom性を持ち、相手の「泣き顔にしか興奮できない」という歪んだ共通点まで抱えていたからだ。主人と護衛というよりは、もはや対等な友――いや、危ういほど似通った性癖を分かち合える唯一無二の存在だった。
ある日、ヴォルフリートは惚けた顔のまま、とんでもないことを口にした。
「ルクレール公爵令嬢の従者……レオナール・ルクレールに、一目惚れした」
その瞬間、テオバルトは心底「最悪だ」と思った。
以来、ヴォルフリートは一度は足を洗ったはずの第二図書館へ「エーベル」と偽名を用いて通うようになった。もちろん護衛であるテオバルトも、仕方なく「グリム」を名乗り、その後を追う。
第二図書館には暗黙の了解があった。誰が誰か、正体に勘づいても口にしてはならない――鉄の掟だ。だが、スカーレットとシルヴァ。二人の存在はあまりに異質で、すぐに周囲から「誰なのか」察せられていた。
苛烈でヒステリックな女王気質、強烈な言葉と立ち振る舞い――それは誰が見てもアナスタシア・ルクレールその人。
その影に控え、物静かで掴みどころのない雰囲気を放つ従者――レオナール。
誰も口には出さない。だが皆、理解していた。
テオバルトはアナスタシアが嫌いだった。
わがままで高飛車、話が通じず、気に入らなければすぐに癇癪を起こす。そんな女が、自分の主であり親友であるヴォルフリートに恋心を寄せている――考えるだけで吐き気がする。
だが、その嫌悪は昨日、音を立てて崩れた。
アナスタシアが公衆の面前でSub Dropに陥った時、応急処置として彼女を跪かせた。その一瞬――涙に濡れ、必死に命令に縋るアナスタシアの姿が網膜に焼きついた。
あの顔は忘れられない。これまで幾人ものSubとプレイをしてきたが、彼女ほど相性が噛み合った相手はいなかった。
プレイ後の満足感は桁違いで、心の奥底から震えるような「支配の愉悦」を得た。
それ以来、アナスタシアが頭から離れなくなった。
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