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一章
103 えろグロ入ります
金属の音が一つ、二つ。
微細な光が刃の輪郭を照らす。
ぞっとするほど慎重に、まるで儀式のような手つきで真城はそれを扱い、無言のまま蓮に手を伸ばす。温かくも冷たくもない、その指先に触れられるだけで呼吸が詰まった。
「元々、産毛程度にしか生えてなかったからすぐ終わったね」
微笑を含んだ声が耳に届いた瞬間、蓮は奥歯を噛み締めた。
痛みはない。ただ、全身を這い回るような羞恥と、終わりのない絶望だけがあった。
森内の「準備できました」という報告が響くと、蓮は自分の心臓の音がそれに負けじと耳に打ちつけてくるのを感じた。
「ありがとう。……じゃあ、このままお腹から行こっか」
吐息と変わらない声が落ちた。
逃げられないという現実が、目の前で熱を持って近づいてくる。
蓮は、恐怖でかすれた喉の奥から、かすかに言葉をこぼした。けれど、それは誰にも届かない。
地下の空間に響くのは、焼けた金属の軋みと、誰かの狂った呼吸音だけだった――。
その日、地下の一室に響いていたのは、ひとりの少年があげる痛切な叫び声だった。
それは怒号でも泣き声でもない、ただ純粋に苦痛の極みに晒された人間が、無意識に喉の奥から搾り出す音。
鋭くもかすれ、時折喉が裂けるように掠れて、やがて途切れる。再び絞られる――その繰り返し。
耳を塞いでも染み込んでくるような、そんな声だった。
部屋には肉が焦げる匂いが漂い、金属が赤熱する乾いた音が空気を貫いていた。
地上では決して嗅ぐことのない臭気。鉄と皮膚、火と汗が混じりあったそれは、地下という密閉された空間の中で重く沈殿し、時間の経過すら鈍らせていた。
叫び声がようやく止んだ時、そこにはひとつの「しるし」が刻まれていた。
蓮の腹部には淫紋めいた模様が赤黒く焼き付けられ、肌の奥まで染み込むようにくっきりと跡を残していた。
そして臀部には、akiomi――その名が、くっきりと彫り込まれていたという。
それは火傷とともに、もう二度と消えない形で。
彼がどうなったのか、どれだけの痛みを味わったのかを正確に知る者は少ない。
ただ、その日蓮が部屋に入って以降、地下に入った者の足音はひときわ静かで、誰もが無言でその場を通り過ぎた。
森内は何も語らず、柳も一切その件に触れなかった。
真城自身が、その後何を思っていたのかも不明だ。
ただひとつだけ、事実として記録できるのは――
その日、地下で何かが「終わり」、そして何かが「始まった」ということだけである。
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