アホホスト借金地獄の末に漁船か臓器か性奴隷か、もちろん性奴隷です

犬っころ

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番外編

俺が意識を飛ばすまでのVlog③

朝飯を食い終わったら、組員達が余り物をうどんとラーメンにやり出す前にすぐに膳を下げる。
俺ひとりでやるんじゃない。部屋住みの連中を引っ張り出して、一緒に皿を洗うのがいつもの流れだ。

食い物に困らないうどんとラーメンはあっという間に肥え見事なデブ猫、デブ犬へと成長してしまった。

わちゃわちゃと雑談しながら洗うので、正直うるさい。でも、そういう賑やかさが屋敷を生き返らせている気がする。
抗争で空気が重たかった頃に比べりゃ、ずっといい。

食器を洗い終えたら、次は昼の仕込み。
出汁を引いて、野菜を刻んで、米を研いで――
段取りよくやっておかないと、後で地獄を見るのは俺だからな。

ただ、仕込みだけじゃ殺風景だ。
部屋住みどもに「ご褒美」くらいあってもいいだろうと思って、ランダムに菓子を作るのが日課だ。

「なぁ、甘いもん食いたくねぇ?」

俺がそう言うと、全員の目が一斉に光った。年相応でわかりやすい、見た目はいかつくても中身はガキだ。

俺が人のことを言えたもんじゃないが、ここにいる部屋住みの連中は、だいたい似たようなもんだ。
家庭環境はろくでもない。
ネグレクト、虐待、あるいは親の愛が歪んだ形で押しつけられたせいで、まともな思い出なんて数えるほどしかない。

――愛されたことがない。
あるいは、愛し方を間違えられてきた。

だから彼らは、普通の家庭がどうやって温もりを育てているのか知らない。
親と子が並んで台所に立つなんていう“よくある休日”を、一度も経験せずに大きくなってしまったやつらばかりだ。

「おら」

俺は、適当に目の前にいた若いのの頭に手を伸ばし、超雑に、わざと髪の毛を逆立てるように撫でてやった。

「……っ、な、なんすか蓮さん!」

「クッキー作んぞ」

ぽかんと口を開けていたやつが、一瞬で顔を輝かせる。
周りも「マジか?」とざわついた。

愛されなかったなら――ここで学べばいい。
俺が“家族と一緒に休日に作りそうなもの”をわざと選ぶのは、そのためだ。

親がいなかった俺にとっても、それは憧れだった。
台所で親と肩を並べて、小麦粉まみれになりながら笑う時間。
――けど、現実は違った。

うちの親は借金を抱えて、弟の雅也を俺に押しつけるようにして蒸発した。
平日も休日も関係なく、両親は病気と戦う雅也のそばにいた。

俺は毎日一人で飯を食い一人で眠った、そんな日々の中で「親と一緒にお菓子作り」なんて夢のまた夢。

だからこそ、憧れ続けた。
「もし自分に普通の家庭があったら」と。

雅也の事を責めるつもりは決してない、いつでも俺の愛おしい弟であることに変わりは無い。

欲を言えばもっと両親の愛情を独占したかった。

だから“叶わなかった記憶”を、今ここでやり直すんだ。俺と、こいつらとで。

わちゃわちゃと代わる代わる生地を混ぜ形を作りオーブンに入れる。

――クッキーの焼ける匂いが、屋敷を暖かく包み込む。
愛され方が分からないこいつらが普通の家庭の温もりを感じられるなら、それで十分だ。



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