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「突然のことで申し訳ございません、護衛騎士を辞めさせていただくことになりました。」
灰色の雲が空を覆い隠す午後、薄暗い執務室で俺【ルドルフ】は、護衛対象である【アーロ】様に退職を切り出した。
アーロ様は生活に必要な魔法石が取れる領地を持つオルレアンという子爵家の跡取りだ。
20歳で次期当主に相応しい実力を持っているお方だ。彼が10歳の時に護衛として付くことになった。
長身でユリのようなしなやかな白い髪で紫陽花のように鮮やかな青紫色の瞳を持っている。
そして何よりもアーロ様の最大な特徴はその生まれつきの美貌だった。儚さを感じさせるその美貌は老若男女問わず惹かれてしまう。
しかしその美貌を手に入れたいという欲望を抱く者達は少なくなかった。その為子供の頃は誘拐はもちろん、不貞行為を働こうとした者がいたぐらいだ。
その為アーロ様は誰にも心を開こうとしない。
俺以外は。
そんなアーロ様は俺の突然の報告を聞いて表情がこわばった。
「は?なんで、急に…?」
椅子に座っていたアーロ様は行き良いよく立ち上がり俺の方に向かってきた。そして俺の肩を強く握る。
「ずっと側に居るって言っていたじゃないか?!」
冗談と思いたい気持ちが青紫色の瞳から伝わってくる。俺はその瞳から逃げるように視線を下にずらした。
「その点は本当に申し訳ないと思っています…けれども、アーロ様の護衛をすることに限界を感じまして。これ以上アーロ様に迷惑をかけたくないのです…」
「そんなことはない!!お前は充分強いし迷惑だと思ったことはないっ!!」
アーロ様は必死に擁護してくる。
実際俺は今年で30になる。もう若いと呼べる年齢ではなくなってきたし以前よりも力が減ってきたと実感している。このままではいざという時にアーロ様を守ることが出来ないと感じ始めてきたのだ。
でも、本当の理由はそれじゃない。
俺はアーロ様に想いを寄せている。男で護衛騎士でありながらアーロ様に恋愛感情を抱いてしまったのだ。
はじめの頃はただ側に居るだけで充分だった。生涯アーロ様に従うつもりだった。青紫色の瞳が俺を見てくれる。それだけで幸福を感じていたというのに。
なのに段々と手に入ることが出来ないという黒い感情が心を追い尽くし始めた。
アーロ様をまるで飾り物のように我が物にしたいという人達と同じになっていくことに気づいてしまった。
嫌われたくない。アーロ様は俺だけ信頼してくれている。
けどこれ以上は限界だった。
ならばこのまま辛い思いをするならばアーロ様から離れてしまえば良い。そう判断してしまった。
わかっている。自分がいかに愚かだということを。自分が嫌われたくないという理由でアーロ様から離れるのだから。
「もう決めたことです、どうかご理解ください。旦那様には既にお伝えしています。」
軽く突き放すかのように俺はそう言った。
「っ…そうか。」
アーロ様は手を離し後ろを振り返った。窓に雨粒が当たる音が響き始めた。
灰色の雲が空を覆い隠す午後、薄暗い執務室で俺【ルドルフ】は、護衛対象である【アーロ】様に退職を切り出した。
アーロ様は生活に必要な魔法石が取れる領地を持つオルレアンという子爵家の跡取りだ。
20歳で次期当主に相応しい実力を持っているお方だ。彼が10歳の時に護衛として付くことになった。
長身でユリのようなしなやかな白い髪で紫陽花のように鮮やかな青紫色の瞳を持っている。
そして何よりもアーロ様の最大な特徴はその生まれつきの美貌だった。儚さを感じさせるその美貌は老若男女問わず惹かれてしまう。
しかしその美貌を手に入れたいという欲望を抱く者達は少なくなかった。その為子供の頃は誘拐はもちろん、不貞行為を働こうとした者がいたぐらいだ。
その為アーロ様は誰にも心を開こうとしない。
俺以外は。
そんなアーロ様は俺の突然の報告を聞いて表情がこわばった。
「は?なんで、急に…?」
椅子に座っていたアーロ様は行き良いよく立ち上がり俺の方に向かってきた。そして俺の肩を強く握る。
「ずっと側に居るって言っていたじゃないか?!」
冗談と思いたい気持ちが青紫色の瞳から伝わってくる。俺はその瞳から逃げるように視線を下にずらした。
「その点は本当に申し訳ないと思っています…けれども、アーロ様の護衛をすることに限界を感じまして。これ以上アーロ様に迷惑をかけたくないのです…」
「そんなことはない!!お前は充分強いし迷惑だと思ったことはないっ!!」
アーロ様は必死に擁護してくる。
実際俺は今年で30になる。もう若いと呼べる年齢ではなくなってきたし以前よりも力が減ってきたと実感している。このままではいざという時にアーロ様を守ることが出来ないと感じ始めてきたのだ。
でも、本当の理由はそれじゃない。
俺はアーロ様に想いを寄せている。男で護衛騎士でありながらアーロ様に恋愛感情を抱いてしまったのだ。
はじめの頃はただ側に居るだけで充分だった。生涯アーロ様に従うつもりだった。青紫色の瞳が俺を見てくれる。それだけで幸福を感じていたというのに。
なのに段々と手に入ることが出来ないという黒い感情が心を追い尽くし始めた。
アーロ様をまるで飾り物のように我が物にしたいという人達と同じになっていくことに気づいてしまった。
嫌われたくない。アーロ様は俺だけ信頼してくれている。
けどこれ以上は限界だった。
ならばこのまま辛い思いをするならばアーロ様から離れてしまえば良い。そう判断してしまった。
わかっている。自分がいかに愚かだということを。自分が嫌われたくないという理由でアーロ様から離れるのだから。
「もう決めたことです、どうかご理解ください。旦那様には既にお伝えしています。」
軽く突き放すかのように俺はそう言った。
「っ…そうか。」
アーロ様は手を離し後ろを振り返った。窓に雨粒が当たる音が響き始めた。
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