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しばらくして時間だけが過ぎていき、明日、俺はこの屋敷を去ることになった。
外はもう暗く虫の囀りが聞こえてくる。
10年前、まだ20歳の自分にまさか子爵家の跡継ぎの護衛に任命されるとは思っていなかった。
そして初めてアーロ様に会った日は今でも懸命に覚えている。
元々少女のように美しい美貌をしていると聞いていたが想像以上だった。そして10歳という若さにしては非常に落ち着きがあってまさに子爵家の跡継ぎに相応しいと思った。
まぁ、こんなことをいうのもあれなのだが、当時のアーロ様は捻くれていた。
美しい薔薇には棘があるというのか、あの頃は誰も信用してなくて、なんならそれを隠そうとしてなかった。アーロ様の後を付いていくとそれはもうめちゃくちゃ嫌がられた。罵声だって浴びせられた時もある。
けれどもアーロ様がどこか辛そうだと当時の俺はそう感じていた。そして若かったのもありめげずに関わっていったら次第に心を開いてくれた。
いやもう俺にだけ見せてくれる笑顔は年相応で非常に可愛らしかった。この笑顔をいつまでも守ると誓いを立てたぐらいだ。
だからこそ俺はアーロ様に惚れるべきじゃなかった。そうすればいつまでもお側に居られたのに。
なんて考えながらベッドに座っているとノック音が聞こえた。
「ルドルフ、今良いか?」
俺は慌ててドアを開けた。そこにはアーロ様が立っていた。
「お待たせしましたアーロ様、それで、ご用件は…?」
「すまないこんな時間に、その、明日お前はここから旅立つだろう?最後の夜だ。共に酒を交わしたいと思ってな。」
アーロ様は困ったように眉を下げて、薄く笑いそう言った。
「お酒ですか…本来なら立場上お断りしないといけないのですが、今日は返って無礼講になってしまいますね。なら、お言葉に甘えて。」
「そうか!なら私の部屋で飲もう。極上のワインを用意している。」
そう言ってアーロ様の部屋に移動して、ソファに座り互いにワインを交わした。テーブルにはワインとおつまみが置かれている。
極上のワインと言っていただけあって風味があり口当たりが良かった。
「すいません、ここまでしてもらって…」
「構わない。お前は10年も私の側で働いてくれた。これくらいはさせてくれ。」
アーロ様はそう言ってワイングラスを口に運んだ。その姿でさえまるで美しくつい唾を飲み込んでしまう。どんな腕の良い画家だってアーロ様を完璧に描き出すことは不可能だろう。
思わず見惚れているとアーロ様はそれに気づいたのか口角を上げた。慌てて俺はワインを飲み干す。
しばらくして酔いが回ってきた。元々そんなに強くはないとはいえ、今日はやけに酔いが早く回ってくる。
すると向かい側に座っていたアーロ様が隣に座ってきて、そして俺の顔を覗く。
「なぁ、本当に考え直したりしないか?」
「……申し訳ございません…」
「そうか…残念だ。」
段々と視界が揺れはじめてくる。それに伴って身体も重くなってきた。気づけば身体の力が抜けてきてそのまま横に倒れてしまう。
グラスが床に落ちてしまった。高級なカーペットにシミが付いてしまったと思っているとアーロ様が支えてくれた。そのままアーロ様の方を見上げる。
相変わらず美しいがどこか切なそうで、そして不気味な笑みを浮かべていた。
なんとなく嫌な予感を感じながらも気づけば俺は意識が途絶えた。
外はもう暗く虫の囀りが聞こえてくる。
10年前、まだ20歳の自分にまさか子爵家の跡継ぎの護衛に任命されるとは思っていなかった。
そして初めてアーロ様に会った日は今でも懸命に覚えている。
元々少女のように美しい美貌をしていると聞いていたが想像以上だった。そして10歳という若さにしては非常に落ち着きがあってまさに子爵家の跡継ぎに相応しいと思った。
まぁ、こんなことをいうのもあれなのだが、当時のアーロ様は捻くれていた。
美しい薔薇には棘があるというのか、あの頃は誰も信用してなくて、なんならそれを隠そうとしてなかった。アーロ様の後を付いていくとそれはもうめちゃくちゃ嫌がられた。罵声だって浴びせられた時もある。
けれどもアーロ様がどこか辛そうだと当時の俺はそう感じていた。そして若かったのもありめげずに関わっていったら次第に心を開いてくれた。
いやもう俺にだけ見せてくれる笑顔は年相応で非常に可愛らしかった。この笑顔をいつまでも守ると誓いを立てたぐらいだ。
だからこそ俺はアーロ様に惚れるべきじゃなかった。そうすればいつまでもお側に居られたのに。
なんて考えながらベッドに座っているとノック音が聞こえた。
「ルドルフ、今良いか?」
俺は慌ててドアを開けた。そこにはアーロ様が立っていた。
「お待たせしましたアーロ様、それで、ご用件は…?」
「すまないこんな時間に、その、明日お前はここから旅立つだろう?最後の夜だ。共に酒を交わしたいと思ってな。」
アーロ様は困ったように眉を下げて、薄く笑いそう言った。
「お酒ですか…本来なら立場上お断りしないといけないのですが、今日は返って無礼講になってしまいますね。なら、お言葉に甘えて。」
「そうか!なら私の部屋で飲もう。極上のワインを用意している。」
そう言ってアーロ様の部屋に移動して、ソファに座り互いにワインを交わした。テーブルにはワインとおつまみが置かれている。
極上のワインと言っていただけあって風味があり口当たりが良かった。
「すいません、ここまでしてもらって…」
「構わない。お前は10年も私の側で働いてくれた。これくらいはさせてくれ。」
アーロ様はそう言ってワイングラスを口に運んだ。その姿でさえまるで美しくつい唾を飲み込んでしまう。どんな腕の良い画家だってアーロ様を完璧に描き出すことは不可能だろう。
思わず見惚れているとアーロ様はそれに気づいたのか口角を上げた。慌てて俺はワインを飲み干す。
しばらくして酔いが回ってきた。元々そんなに強くはないとはいえ、今日はやけに酔いが早く回ってくる。
すると向かい側に座っていたアーロ様が隣に座ってきて、そして俺の顔を覗く。
「なぁ、本当に考え直したりしないか?」
「……申し訳ございません…」
「そうか…残念だ。」
段々と視界が揺れはじめてくる。それに伴って身体も重くなってきた。気づけば身体の力が抜けてきてそのまま横に倒れてしまう。
グラスが床に落ちてしまった。高級なカーペットにシミが付いてしまったと思っているとアーロ様が支えてくれた。そのままアーロ様の方を見上げる。
相変わらず美しいがどこか切なそうで、そして不気味な笑みを浮かべていた。
なんとなく嫌な予感を感じながらも気づけば俺は意識が途絶えた。
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