目付きの悪い俺が黒猫に振り回されてます。

海野(サブ)

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前編

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  それから数週間近く経った。特にトラブルなどなく平和に過ごせている。客観的に見れば、だが。

「ただいま。」

「おかえりーシロウ。」

 変わらずクロは家に居座っている。なんなら当たり前のように我が家のようにくつろいでいる。
 
「シロウー、お腹空いたー。」

「へいへい、今から作るから待ってろ。」

 俺はカバンを床に置いて、袖を捲り上げてエプロン付けてキッチンに立つ。
 
「今日のご飯は何?」

「今日は安かったシャケの切り身を使ってムニエルにする予定だ。」

「わーおいしそー!シロウってほんとなんでも作れるよね。」

「ま、まぁ元々自炊してたからある程度なら…」

 カフェで働いているのもあるが、俺は元々料理するのは好きだ。今はネットで調べればいろんなレシピがヒットするし、近くに安いスーパーがあって割と早い時間に割引してくれたりするから節約になる。
 まぁ、一番の理由は外食に行きたくとも目つきの悪さで店員や周りの客を怖がらせるから仕方なくという面もあるが。
 とりあえずあらかた料理は完成して食べることに。

「いただきまーす!」

 クロは丁寧に手を合わせてフォークを使って夕飯を食べていた。
 俺も食べようとした時、テレビの特番でとあるパフェが紹介されて一旦手を止めてテレビを見ることに集中した。

『こちら今話題のいちごパフェ、いちごの甘さと生クリームの甘さが良い感じにマッチして美味しいです!』

 グルメリポーターが丁寧にいちごパフェを紹介している。大きめの器にイチゴのゼリーと生クリームが交互に入っており、その上にはイチゴ味とバニラ味のアイスが乗っており、更には旬のいちごをこれでもかというぐらいに沢山乗っていた。
 映えそうだし何より美味しそうだ。こう見えて案外甘いものは好きだからこういうスイーツは気になってつい見てしまう。

「気になってるの?」

「え、あ、いや、別に…」

 俺は興味ないふりしてご飯を食べ始める。

「ふーん?いいじゃん食べに行けば。」

「何を言ってるんだよ…テレビで紹介されたなら店すごい混むだろうし、女性客ばっかりで浮くだろ…な、なによりこんな目付きの悪い俺なんか行ったら嫌がれるだろ…。」

 行かない理由がずらずらと口に出る。けど前半はただの言い訳で、後半は本音だ。
 出来るだけ人と接触しないように心がけている。買い物だって基本ネットで置き配かセルフレジある店にしか行かないようにしている。

「ふーん?まぁ周りの目が気になるのはわかるけどね。けどもったいないなー。そうやって周りに遠慮なんてしてたらつまらなくない?」

「つ、つまらないって…そんなことは…」

「ほんとうに?」

 クロの目が真っ直ぐと俺を見る。相変わらず全て見透かされているような錯覚になる。
 つまらないわけではない、今はネットが万能過ぎてむしろ昔よりかは過ごしやすい。
 けど、本当はもっと自由に動きたい。周りの目なんて気にせずに堂々としていたい。
 
「…ちょっとだけ、つまらないとは思う…」

「そっか、じゃあシロウ、明日この店一緒に行こうよ♪」

「はぁっ!?なんでそうなる!?」

 突然の提案に俺は思わず大きな声を出してしまう。

「いいじゃん、何事も楽しくきままに、深く考えないで行動すれば良いんだよ。それに1人は無理でも誰かと一緒なら行けるんじゃない?嫌ならいいけど。」

 クロはニコッと笑みを浮かべる。
 確かに、目付きの悪い男が1人でいるより、誰かと一緒に、しかも甘い顔の整った奴と一緒なら緩和されるだろうか。

「け、けどお前化け猫が現れたってネットで拡散されて、最悪実験施設とかに…」

「あぁ、その心配は大丈夫だよ?ほら。」

 ぽんっと音と共に、クロの猫耳と尻尾が消えた。そして耳が人間と同じ形をしていた。全体的に人間らしい雰囲気が出ている。

「この姿でもなれるんだよ。どう?」

「お、おう…すごいな…耳が人間と同じだ。」

「ベロもそうだよ、ほらぁ?ザァラザァラしれないれそ?試しに舐めてあげようか?」

「や、やめろっ!!!!」

「あはは、じゃあ決まりだね?」

 いつのまにか一緒に出かけることになってしまったようだ。不安が大きいが、少しだけ、楽しみにしている自分が居た。


 
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