最強猫科のベヒーモス ~モフりたいのに、モフられる~

メイン君

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第一章 モフはモフを呼ぶ

第6話「肩の上が定位置だよ」

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 ガルムは壁にぶつかったきり起きてこない。

 だいぶ加減したから、生きてはいるはず……。

「クルニャン?(これって勝ちだよな?)」

 鹿よりもだいぶ弱かったガルムに、勝利の実感が薄い。

 こういう時の立会人。

 ハンズの方を見てみる。

 俺の勝ちでいいんだよね?

「何今の動き。全然見えなかった……」

 ハンズが口をパクパクしながら呟いている。

 これは演出じゃなくて、本当に見えていなかったのだと俺も気づく。

 さすがの俺も、あることを勘違いしていたんじゃないかと思い始めている。

 そんな中、空気を読まない奴らがいた。

「てめえ、なにインチキしやがった!」

「そうだそうだ、ガルムがワイルドキャットなんかに負けるはずないんだ! ウヒッ」

 ガロン兄弟が文句を言いながらこっちに歩いてきた。

 もうついでだ。

 ここでしっかりオ・ハ・ナ・シをつけておきたい。

 俺は奴らを挑発することにした。

 猫らしく……。

「フニャ~(たいくつであくびが出そうだ)」

 寝転がり、お腹を無防備にさらし、足で首筋をカリカリする。

 こいよこいよ!
 馬鹿にしてるよ~!

 そんな雰囲気を演出する。

「舐めやがってこのクソ猫がっ!」

「兄ちゃん、Bランクの本気を見せつけてやろうよ!」

 予想以上に上手く挑発にかかる。

 兄が剣を抜き、弟がこん棒を構え近づいてくる。
 そして、同時に俺めがけて振り下ろす。

 遅い……。

 鹿の角を使ったあのかち上げ・・・・に比べたら、本当にあくびが出そうだ。

 相手のふところへ全力で飛び込む。
 踏み込みだけは全力。 

 ガロン兄弟は完全に俺を見失っている。

 兄に向かって、三割くらいの力でジャンピング猫パンチ!

「――グエッ!?」

 くの時になってふっ飛び、倒れているガルムの隣に落ちる。

 デブの弟の方へは、同じく力を抑えたジャンピング後ろ足キーック!

「――ブウッ!?」

 これもふっ飛び、兄の上にズシンと落ちる。
 兄弟ともに気絶したのか起きてこない。

 これで、さっきのがマグレじゃないと、観客の人たちにも分かってもらえただろう。

「シュン!! すごいすごい! Bランク冒険者を一撃なんて!」

 リルがこっちに向かってくる。
 尻尾をフリフリ近づいてくるのを見て、癒される。

 モフモフってマジ癒し系だよね。

 自分がモフモフなことを忘れてそんなことを思った。

 しばしの静寂ののち、観客席がガヤガヤし始める。

「なあ、ちょっと一発俺を殴ってくれないか? どうやら俺は夢を見ているようだ」
「安心しろ、俺もだ。Eランクのワイルドキャットの動きが全く追えなかった」
「可愛いのに強い……、あんなにかわいいのに……」

 観客がみな信じられないものを見た、という顔をしている。

「ち、ちょっ! 君たちはいったい……」

 ハンズが声をかけてきた。
 その声は動揺しているようだ。

 そういえば居たんだっけ。
 忘れてたよ。

 立会人なんだから、ちゃんと勝敗の宣言してほしいものだ。

「き、君たちは何者なんだ??」

「リルたちは……、う~ん、なんだろね? 仲良し?」

 リルはそう言って、俺を持ち上げ、自身の肩に乗せる。

 手足をプラーンとさせたまま、なすがまま運ばれた俺。

「クルニャン!(俺たちは俺たちだよね!)」

 リルの肩の上は俺の定位置!

 観客のガヤガヤが収まらない。

「おいおい、あの嬢ちゃんが、あの従魔の主人ってことだろ?」
「従魔……、魔物は自分より強い相手にしか従わないから、つまり……」
「あの狼っ娘は、あの猫より強いってことよね……」
「とんでもない新人が入ってきたわね」
「今のうちにお近づきにならなきゃ。どっちも可愛いし」

 会話が聞こえる。

 へ~、魔物って自分より強い相手にしか従わないんだ。
 そりゃそうか。

 俺は自分からリルと一緒にいるから、例外なんだろうね……。

 リルが俺より強いと勘違いされる分には、今回みたいに絡んでくる奴が、これからはいなくなっていいかもね。

「リルたちの勝ちでいい?」

 リルがハンズに聞く。

「あ、ああ……、君たちの勝ちだ……」

 ハンズが勝利をみとめてくれる。

「シュン、やったね!」

 リルが、肩に乗ってる俺の首筋に顔を埋めてくる。

 グリグリとモフられる俺。

 戦いが終わるまでは、心配かけちゃったかな?

 今は存分にモフるがいい!

「クルニャ~(一件落着かな?)」

 まだ、何かあったような気もするけど……。

 
 少し気を抜いていたところで、階段の方から誰かが駆け下りてくる音が聞こえる。
 
 誰だろう?と思っていると、犬耳受付嬢のミーナが訓練場にやってきた。

 ああ、そうだった。
 討伐の報告したところから、話がれにれて、こんなことになっていたんだった。

「リルさ~ん!」

 ミーナはリルの名前を呼びながら駆け寄ってくる。

 急いで来たのか、ミーナの息が上がっている。

 なんとなく、舌を出してハァハァする犬が頭に浮かんだ。

「ミーナさん、大丈夫ですか?」

「わたしは大丈夫ですけど、こっちは大丈夫でしたか?」

 カウンターにいた受付嬢に、決闘の話を聞いてきたとのことだ。
 ミーナは壁際の犬と兄弟を見て、ポカーンと口を開けている。

「はい大丈夫です! リルにはシュンがいますから」

 あいかわらず嬉しいことを言ってくれる。

「あれってそのニャンコがやったの??」

 ミーナは、積まれている兄弟を見ながら、頭にクエスチョンを浮かべている。

 この犬耳お姉さま、「ニャンコ」と呼ぶなんて猫好きではなかろうか。

 モフってもいいよ! 美人さん歓迎だよ!

「そうですよ。今ちょうど終わったから、上に戻ろうと思ってたとこです」

 ミーナが、へ~とか言いながら俺をジロジロ見てくる。

 観察されるのって、なんか恥ずかしいね……。

 水浴びしてないし、毛玉もありそうだから、ジロジロ見ないで……。

 その後すぐに、ミーナさんは仕事モードに戻り、

「リルさん、さっきのつのの件で、ギルドマスターと会ってほしいのです」

「ルゥニャー!(ギルドマスターだと!?)」

 ミーナの言葉に、俺はマッタリモフモフ生活が遠ざかっていく気がしたのだった。
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