最強猫科のベヒーモス ~モフりたいのに、モフられる~

メイン君

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第一章 モフはモフを呼ぶ

第7話「もみじ肉、また食べたい!」

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 俺たちは今、ギルドマスターの部屋にきている。

 応接室みたいになっていて、奥の方には執務机が見える。

 頑丈そうな大きなイスに、リルが腰掛け、俺はリルの膝の上だ。
 肩の上に続き、第二の定位置だ。

 第二の故郷みたいな感じだね!

 テーブルを挟んで向かいに、ギルドマスターがいる。

 彼の後ろに、犬耳受付嬢のミーナが控えている。

 ギルドマスター……、ギルマスのおっちゃん、ガタイはいいし、眼光鋭くて怖い。
 歴戦の猛者って感じだ。
 これが何の感傷もなく人を殺せる目ってやつか……。

「俺はギルドマスターのレイモンドだ。よろしく」

「リルです。それと従魔のシュンです」

 リルは俺を持ち上げて、おっさんの前にかざす。

「クルニャン!?(近い、近い、おっちゃんが近い!)」

 近くでギロリと観察された……。

 リル、酷いよ……。

 悪気はないんだろうけどさ。

「たしかに普通のワイルドキャットじゃねーな」

 急にガハハと笑い出すギルマスのおっちゃん。

「シュンは普通じゃないですか?」

「ああ、さっき報告受けたけど、Bランクのガロン兄弟を従魔ごとのした・・・らしいじゃないか」

 さっきこの部屋を出て、廊下で報告受けてたね。
 壁越しでも聞こえる猫イヤー。

「ニャン!(ムカッとしてやったけど、後悔はしていない!)」

「おお、あいつらあれでも強さは本物だったからな。それにだ……」

 おっちゃんの声音が急に真剣になる。

「はい」

 リルが真面目な顔をしている。

「持ち込まれた黒い角。あれはなぁ……」

「あれは……?」

「フルフルっていうAランクの魔物の角だ」

「えーらんく? ふるふる?」

 リルは気づいていなかったようだ。

 俺はガルムとの戦いを通して違和感を感じて、初めから勘違いしてた可能性を考えていた

 Eランクのつもりだった鹿が、実は高ランクの可能性。

 リルのナイフが、鹿の皮に全然通らなかったしね。
 あれは上位ランクの防御力だったということだ。

「そうだ。死風デスウインドなんて呼ばれる、多くの冒険者が出会ったら死を覚悟する魔物だ」

 高ランクだとは思ったけど、まさかAランクだったとは……。
 しかも物騒な二つ名をお持ちで……。

 今思うと風刃とかだいぶ凶悪だったしね。

 続くおっちゃんの話によると、フルフルは知能が高く、人を避けて生活するものらしい。
 人に手を出すと、高ランク冒険者へ討伐依頼が出されることを本能的に分かっているらしい。

 だから街の近くの森にいても、今まで他の冒険者はフルフルに遭遇しなかったのだろうということだ。

 たしかに俺とリルが、鹿の足取りを追っていたときのことだ。
 この魔物はずいぶん勘が鋭いね~、とか言いながらテクニックを使ってあの場所に追い込んだ。
 あそこで対峙たいじしたのは、フルフルが俺たちから逃げられないと判断したからだったのか……。

「そうだったんですね~。つまりシュンが強いってことですね」

 リルの中ではそういう結論になったようだ。

 目をキラキラさせながら、強いって言われて悪い気はしないけどさ。

「ま、まあそんなところだ……」

 おっちゃん、リルに押され気味。
 
 ギルマスの仕事として、俺たちに聞きたいことがまだまだあるのだろう。
 普通じゃないワイルドキャットなんて、得体の知れないものを放置できないよね。

「そい……、シュンは本当にワイルドキャットなのか? それに片腕が変質しているようだが……」

「う~ん……、どう見てもワイルドキャットですよ? 腕がちょっとカッコイイですけど」

 リルが何を言ってるの?という顔で答える。

 何気にリルから腕がカッコイイと言われたのは初めてだ。
 変だと思われてなくて嬉しくなる。

 純粋なリルの態度に、おっちゃんは追及できないでいる。
 あ、ああ……、とか相づち打ちながら困っている。

 実は、ワイルドキャットじゃないんだよね。
 猫科には違いないけど、ファイアドレイク・キャットという種族に進化してるんだ。

 ファイアドレイク・キャット、火竜猫といったところだろうか。
 以前、死ぬ思いで倒した火竜の血肉が、俺を進化させたんだ。

 まあ、猫には違いないし、種族なんて大した問題じゃない。

 大事なのは、モフれるか、モフれないかだ!

「まあ、それは一旦おいておこう……。今回呼んだのは、フルフル討伐についてのことだ。どうやってフルフルを倒したんだ。現役時代の俺でも、単独で戦うのをためらう魔物だ」

 聞けば、ギルマスのおっちゃんは元Aランクの冒険者だったらしい。
 今も十分いかついから納得だ。

「う~ん、シュンと一緒に忍び足で少しずつ追い詰めていって、最後はシュンがズバーっと倒したんです」

 リルが、身ぶり手ぶりで伝える。

 毎度のことながら、リルの可愛い仕草に、俺の猫ハートがズバーっとやられた。

「マジか……、あれは追い詰めるだけで、Aランクの冒険者数人でパーティーを組む必要があるんだぞ。攻撃もヤバいから、数人で牽制して倒すのがセオリーだしよ……」

 おっちゃんがショックを受けている。
 後ろに立っているミーナも驚きの表情だ。

「じゃあじゃあ、シュンってAランク冒険者よりすごいのかな!」

 俺のことなのに、リルが自分のことのように嬉しそうだ。

 そして、言葉づかいが、いつもの感じに戻った。

 まあ、おっちゃんは言葉づかいとかあまり気にしないタイプだと思う。
 むしろ、商人とかの丁寧すぎる感じを嫌いそうだ。

 いやまあ、商人とか会ったことないから、勝手なイメージなんだけどさ。

「おそらくAランク冒険者と同等か、それ以上の強さだろう。ということはだ……、主人であるリルはさらに上ということか。信じられん……。種族によっては見た目と歳が違うこともあるが、それにしても……」

 長生きする種族もいるってことだろう。
 リルは見たまんま十二歳だけどね。

 ここでも従魔より主人の方が強いという考えが根本にあるようだ。

 おっちゃんの話は続く。

「それでなんだが、お前たちはすでにEランク冒険者の実力ではないと確信している。俺の権限で、Cランクまではすぐ上げられるんだが、受けてもらえないだろうか」

 おっちゃんからリルへランク上げの提案。
 Aランク冒険者の実力があるとしても、いきなりB以上に上げるのは実績がなくて難しいとのこと。

 ま、当然だね。
 Cランクへの二階級上げでも十分ありがたい。

「シュン?」

「クルニャン!(その提案に乗ろう!)」

 リルの問いかけに、肯定の気持ちをのせることクルニャ。


 ――こうして、リルは登録初日にCランク冒険者になった。
 ベテランと呼ばれるCランク冒険者に、初日の間でなってしまうなんて前代未聞とのことだ。
 さらに最年少記録でもあるらしい。

 リルのランクが上がるのは、自分のことのように嬉しいね。
 俺は従魔だから、冒険者ランクはない。
 だから、Cランク冒険者がEランク魔物を従魔にするという、ランク差の大きな珍しい組み合わせになるらしい。

 いずれにせよ、明日からの冒険者ライフが楽しみだね!

 その後、あの鹿フルフルの素材を買い取りたいと、おっちゃんから提案があった。
 どうやらフルフルの多くの部位が希少な素材で、かなり高く売れるらしい。
 皮とか、かなり防御力の高い、皮鎧とかにできるとのことだ。

 リルが皮をショルダーバッグから出し、黒い角と合わせて買い取ってもらうことにした。
 おっちゃんがメモをスラスラと書き、ミーナに買い取り費用を持ってくるように伝えた。

 さらに衝撃の事実……。

 フルフルの鹿肉、もみじ肉は超高級食材だったらしい。
 貴族や王族が食べるような、希少で美味な肉だとさ。

 そりゃ、美味いわけだよ。
 リルの料理が上手いこともあるけど、人生ならぬ猫生ねこせいで一番美味しかった。
 まあ、まだ産まれてから一ヵ月くらいだけど。

 もったいないことをした!

 川原で鹿肉を食べた後、持てる分は葉に包んでリルのショルダーバッグに入れてきた。
 けど、デカかったこともあって、半分以上を放置してきたんだよね。

 こんなことなら、引きずってでも持って帰ってくればよかったか?

 リルの方を見たら目が合った。

 考えを読まれたのか、

「シュンならまたフリフリ捕まえられるよ」

 なぐさめてくれたのかな?
 フリフリじゃなくてフルフルだけどね。
 フリフリはリルの尻尾だよ!
 
「クルニャン!(また高級もみじ肉を食べようね!)」 


 ミーナが戻ってきたところで、素材の買い取り代金を受け取った。
 お金の価値はよく分からないけど、代金の入った袋はずっしりしてて重そうだ。



 さて、今日はもう宿屋に行こうというところで問題が発生した。
 問題点に気づいたというべきだろうか。

 ギルマスのおっちゃんから、今夜の宿について聞かれた時のことだ。

「お前たち、今日この街に来たばかりらしいけど、泊るところはどうするんだ?」

「宿屋で部屋を借りようかな~と」

 おっちゃんの問いかけに、リルが答える。

「多分、どこの宿屋も部屋には従魔を入れられないぞ。従魔はだいたいが鶏舎とかで、よくて馬小屋だぞ」

 俺たちが街に来たばかりで、仲良しすぎる主人と従魔ということで、おっちゃんは教えてくれたらしい。

「じゃあ、リルもシュンと一緒に馬小屋で寝るね」

 リルが笑顔でそんなこと言う。

 なんで馬小屋で寝るのが嬉しそうなのさ!
 そりゃあ、今まで野宿が多かったけどさ。

 リルと一緒に寝れたら嬉しいけど、リルは部屋で寝てよ!
 俺は馬小屋でいいからさ!

「クルゥニャーン!(リルは部屋で! はい、決定~!)」

 身ぶり手ぶりで、リルは部屋で!を伝えようとしてる俺。
 はたからみたら、あたふたしてるようにしか見えないかもしれない。

 その時、ずっと静かにしていたミーナが話に入ってきた。

「あ、あの~……。良かったらリルさんとシュンだけど、しばらくの間だけでも、私のうちに来ませんか」

 ミーナは、この近くに広めの部屋を借りているらしい。
 人が増えても大丈夫とのことだ。

「いいんですか? シュンが一緒でも?」

「はい、私はシュンも大歓迎です」

 というわけで、俺たちは犬耳受付嬢のミーナの家にお邪魔させてもらうことになったのだ。

 リルとミーナ、これは狼と犬のシナジー効果!

 いやがうえにも、モフモフへの期待が高まるというものだ!
 いざ行かん! モフモフの地へ――。
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