最強猫科のベヒーモス ~モフりたいのに、モフられる~

メイン君

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第二章 

第50話「狐っ娘を連れてこう」

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 こちらに向かってくる狐っ娘と、それを追いかけてくる騎士五人。

 今の段階では、狐っ娘が悪い可能性もあるけど……。
 基本的に、俺はモフっ娘の味方だよ。

 そんなことを思ってると、ちょうど良く?騎士の一人が叫んだ。

「大人しく捕まれ! この見通しのいい街道で逃げられるものか!」

 騎士は狐っ娘を怒鳴るように本性をあらわす。

「いや~。ママー、パパー!」

 狐っ娘は涙ぐみながら必死に走っている。

 別の騎士がさらに言葉を発する。

「お前の親もあっちで待ってる! 大人しくつかまれ!」

 騎士たちは、嫌な笑みを浮かべて追いかけている。
 高価そうな鎧を身に付けていなかったら、完全に盗賊と間違えそうだ……。

 さて……。

「ニャーン?(ボス、どうするっすか?)」

 ミケが聞いてくるけど、きっと俺がどうするかは分かってるはずだ。

 狐っ娘は、あとちょっとで俺たちのところまで来る。

「クルニャン(ここを動くなよ)」

 ミケたちに指示を出したところで、騎士の集団の横に全速力で移動する。
 何が起こったかすら気づかせないつもりだ。

「クルルニャー(くらえ、雷撃サンダーボルト!)」

 狐っ娘に当たらないように気をつけながら、騎士たちに雷魔法を見舞う。
 一応殺さないように、グリフォンに使ったものよりも数段威力を落とした。

「「「――っ!?!?」」」

 体勢を崩して馬から落ちる騎士たち。
 突然のことに何が起こったのか分からないといった様子だ。

「ま、魔物の……襲撃……か!?」

 四人は意識を失ったけど、一人はフラフラしながらも周囲を見回そうとしている。

 今は見られるわけにはいかない。

 もう一度、雷撃サンダーボルトを食らわせたところで、そいつも今度こそ気を失った。

「えっ? えっ!?」

 狐っ娘は、追跡者がいきなり倒れたことで驚いている。
 周囲には猫しかいないもんね。
 肩で息をしながらキョロキョロと周りを見回している。

 狐っ娘はかなり幼く、人族でいうと六、七歳くらいに見える。
 薄茶色の狐耳とボリューム感のある尻尾が、とても可愛らしい。

「クルニャン(もう大丈夫だよ)」

 言葉は伝わらないだろうけど、少しでも安心させたいと狐っ娘に向かって鳴いてみた。

「ね、猫ちゃん?」

 首をかしげられた。
 よく考えたら、グリフォンの羽毛をかぶってるんだった。
 それでも、疑問符がつきながらも猫だと思われるのは、ちょっと進歩したかもしれない。
 
「ニャーン!(さすがボスっす! しびあこっす!)」

 ミケたち五匹の猫たちが近くに寄って来た。
 ミケが嬉しそうに声をかけてきた。

「クルニャ?(何だよ、しびあこって?)」

 俺の質問に、ミケとは別の猫が答えてくれる。
 カルビという名の猫だ。

「ニャン(しびれる、あこがれるの略です。まあ、しびれてるのはあいつらですが)」

 カルビは、倒れている騎士たちの方を鼻で指した。

 …………。

 上手いこと言ったというような得意気な顔をしてるけど、全然上手くないからな……。
 
 そんなことより。

「クルニャーン?(何があったの?)」

 狐っ娘を安心させるために、その足にスリスリと頭をこすりつける。

「きゃはっ。もしかして猫ちゃんが、あたちを助けてくれたの?」

 舌ったらずな声で聞いてくる。

「クルルゥゥ(そうだよ、俺たちはモフっ娘の味方だよ)」

 狐っ娘が、やさしく頭をなでなでしてくれる。
 逃走の緊張が解けたのか、少し笑顔になっている。
 やっぱり女の子は笑顔が一番だね。

 しかし、何かを思い出したのか、すぐに狐っ娘の笑顔がくもる。
 
「パパとママがつかまっちゃった……。あたちを逃がすために……」

 狐っ娘が泣きそうになる。
 その姿を見て、原因であろう騎士とそれに指示を出した奴に怒りがわいてきた。
 
「クルニャー!(行くよ! その、パパとママの捕まってる場所に!)」

 言葉が伝わらないから行動で示す。

 俺は以前、幼女を背に乗せたように、狐っ娘を背に乗せる。
 足の間から頭を通して肩車をする要領だ。
 落ちないように尻尾を背もたれにする。

 結構バランスを取るのが難しいけど、狐っ娘自身もバランス感覚が良いのか、とても安定している。

「ね、猫ちゃん?」

 突然のことに、狐っ娘は不思議そうにしている。

「クルニャン!(行くよ! 俺はシュン。君の名前は何ていうの?)」

 俺の背中に乗っている狐っ娘に、顔だけ向けて問いかける。
 言葉は通じないだろうけど、真剣さは伝わるはずだ。

「もしかして、助けてくれるの? あたちね、レンカっていうの」

 狐っ娘が名前を教えてくれる。
 レンカか……、良い名前だね。

 俺の言葉が通じたわけではないだろう。
 コミュニケーションを取ろうと思ったら、まず名前を伝えるのは子供も同じだ。 

「クルニャー!(みんな、行くぞ!)」

 猫たちに指示を出して、レンカが逃げて来た方角に進む。
 そっちに村があるはずだ。

「ニャン!(了解っす!)」

 レンカを背に乗せた俺を、囲むように猫たちがついてくる。

 人の気配を感じたら、隠れないとな。
 まあ村まで遠くはないだろう。 


◇◇◇


 村の近くまでやってきた。

 状況を把握するために、村のそばの林の中に隠れて様子をうかがってるところだ。
 村の様子が分からないと、何をすべきかも分からないからね。

 レンカにも草木に隠れるように、しゃがんでもらっている。
 村の様子を見るために飛び出して行かないか心配だったけど、さわぐこともなく大人しくしている。
 見た目の歳以上に冷静な子のようだ。

「ママ……」

 いや……、尻尾を膨らませて手を強く握りしめてるところを見ると、頑張って耐えてるんだろう。

「クルルゥゥ……(大丈夫だよ……)」

 少しでもレンカの心の支えになろうと、レンカにくっつきながら村の観察をすることにした。

 遠巻きながら村の様子を見てて分かったことがある。

 どうやら侯爵の拠点の街から、この村に騎士や兵士が派兵されてきているようだ。
 その目的は異端審問の名の元、獣人たちを連れ去ることのようだ。
 聞こえて来た兵士たちの言葉からすると、獣人を奴隷として扱うために、拠点の街に連れていくとのことだ。

 レンカの親は、なんとかレンカだけでも逃がそうと、身をていして村を脱出させたみたいだ。
 結局それがバレて、すぐに追手がかかったというわけだ。

 様子を見ている途中で、雷撃を食らわせた騎士たちも村に戻ってきた。
 特に慌てた様子もなく、「なんか魔物の襲撃うけちまったみたいだ。まあ、俺たち神聖騎士に恐れをなして逃げちまったみたいだけどよ」と言っていた。
 レンカ一人逃がしても大きな問題はなかったらしい。

 そう言えば、追いかけてるときも、まるで狩りを楽しむようにしてたな。
 遊びのつもりで追い回してたのかもしれない。
 だんだん、ムカついてきた……。

 どうやら獣人たちを街へ連れて行くのは明日らしい。
 間に合ったというわけだ。

 夜になったら、襲撃の時間だね。
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