『万物異転、猫が世界の史を紡ぐ【出会い編】 ~出会ってすぐにモフられる~』

メイン君

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第22話 激突

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「ガストマ……」

 アルフレッドが呟いた傭兵団長の名前。歳はアルフレッドと同じくらいだろうか。茶色の髪が、獅子の鬣を彷彿とさせる。呼吸が苦しくなるほどの威圧感……あれは人なのか?
 おそらく隣に居るのが副団長のザールだろう。

 相手との距離は三十メートル程で、洞窟の入口は草木に覆われている為、向こうからは見にくくなっているはずだが、こちらを見通されてる気分になる。

 戦ったら、まず勝てないだろう事が分かる圧倒的な雰囲気。
 悔しいがリルでも無理だろう。 

「ほお、ザールが見た通り三人いるようだな」

 ガストマが言ってるのは、おそらく昨日の鳥から見てたという事だろう。

「リル殿、俺が奴等の気を引いてる間に、逃げて伯爵領まで行って欲しい」

 アルフレッドが囮になることをリルに囁く。

「無理です。周囲を囲まれています。あのニ人に背を向けて脱出できるとは思えません」

 俺には分からないが、リルがそう言うなら他にも近くにいるのだろう……
 状況を打開できるイメージが浮かばず、焦燥感だけが増していく……

「…………」

 アルフレッドが動けずにいる。クレアを見ると、青褪めて震えている……
 クソッ! 

「なあ! 誰か手柄欲しいヤツはいねえか! チョロっと三人とも捕まえてくれよ!」

 そうガストマが呼びかける。

「俺に任せてもらおう!!」

 ガストマの後方からスキンヘッドのゴツい男が出てきた。背は百九十センチくらいあるだろうか。手には鉄製の棍みたいな物を持っている。

「おい、分かっているだろうな」

 ガストマがスキンヘッドに問いかける。

「もちろんでさあ! 殺さないように捕まえますよ」

「ちっ……」

 ガストマが舌打ちした。

「それを言ってどうするのです?」

 ザールがスキンヘッドを冷徹な声音で責める。

「あ!? すいません!」

「まあいい……結果は変わらん」

 ガストマとのやり取りが終わり、スキンヘッドが近付いてくる……距離は十メートルといったとこ……

「グアッ!?」

 リルが放った矢がスキンヘッドの肩に刺さった。
 弓を構えて矢を放つまでの動作が、ほんの一瞬だった。

 スキンヘッドは矢が来るとは思ってなかったようで反応できなかったようだ。
 棍を取り落とし、もう片方の手で矢を抜こうとした所で……

「ヲッ!?」

 飛び出したリルがナイフをスキンヘッドの首に突き刺した。
 すぐ離れたリルに遅れて、スキンヘッドが血を撒き散らしながらその場に崩れる。

「ほお、そこの獣人なかなかやるなあ! まぁ結果は変わらんがな! 俺がやろう」

 いつの間にかダチョウから降りていたガストマが悠々と近付いてくる。
 その威圧感に周囲の景色が揺らいでるように見える。

 ――ピシッ! 

 リルが放った矢をガストマが剣で切り捨てた!? いつの間に抜いた?

「活きがいいねえ、それに良く見ると可愛い顔してるじゃねえか。そう言えば王都で獣人女の奴隷を欲しがってた変態貴族がいたなぁ」

 下卑た笑みを浮かべながら、近付いてくる。
 頭に血が上るのが自分でも分かる。けど……俺が出ていっても邪魔になるだけだ……

「お前もそこの親子共と一緒に奴隷にしてやろう」

「ハアッ!!」

 アルフレッドが飛び出し、ガストマに向け袈裟斬りに剣を振り下ろす。

「ほぉ」

 ガストマは余裕の顔で一歩後ろに避ける。

「ハッ!!」

 振り下ろした剣を勢いそのまま上に向けて切り返す。燕返し!?

「よっ」

 ガストマはそれすら見切り躱す……。

「クッ!?」

 躱したはずのガストマが手で顔の前を払い、大きく後ろに飛びのいた。

「雷魔法を斬撃に合わせて飛ばす奴なんて久しぶりに見たな」

 ガストマは手が痺れたかのように、払った手を振っている。

「なんて奴……」

 アルフレッドが顔を歪めている。おそらく今のはとっておきの一撃だ……

「さて、終わりにするか……結局、結果は変わらん!」

 ガストマがアルフレッドの懐に一気に踏み込んだ。
 その瞬間、リルがガストマの横からナイフで突きを放つ。

「グァッ!?」

「――ッ」

 ガストマは片手でアルフレッドの剣を握っている手を抑え、もう片方の手で首に打撃を加えた。
 同時にリルの顎を横から爪先で蹴り込んだ。

 二人が同時に崩れる……

 目の前が怒りで真っ赤になる。気づいた時にはガストマの顔に飛び掛かっていた。
 奴の言うとおり、何も結果が変わらないと理解しているのに、飛び掛かっていた……

「――ッ」

 手の甲で払われた。ただそれだけで弾き飛ばされ茂みに突っ込んだ……

「さあ、終わりだ! こいつらは3人共奴隷にする! 縛って傷をつけないように運べ!!」

 俺は数にも入らないのか……
 リ……ル…………
 ガストマの声が聞こえる中で、俺は意識を失った――――
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