揚げ物無双 ~唐揚げを作ったら美少女魔王に感激されて、なぜか魔王の座を譲り渡されてしまった~

メイン君

文字の大きさ
1 / 15

第1話「ローザベルとの出会い」

しおりを挟む
 仕事からの帰宅途中、突然視界が暗転したと思ったら、俺の目の前に赤い髪の美少女が現れた。

 俺は混乱しながらも、その姿に見とれてしまった。 
 人は可愛すぎるもの、美しすぎるものを目の当たりにすると、言葉を失うのだということを知った。

 美しく輝く真紅の髪は、まるでそれ自体が神秘的な光を発しているかのようだ。
 それはまるでルビーのようにキレイだなと思った。ルビーなんてテレビでしか見たことないけど。

 少女の顔は、まだ幼さを残しながらも驚くほど整っていて、美術品のようだなと見とれてしまった。

 俺がポカーンと口を開けて見とれていると、目の前の少女が口を開いた。

「私は第十六代魔王、ローザベル・キサラギ・バラムエル。あなたを異世界から召喚させてもらった――」

 少女の凛とした声は良く響き、可愛らしくも堂々とした立ち姿とあいまって、まるでアニメのワンシーンを見ているかのようだった。

 ただ……、少女の言っていることの意味が理解できなかった。

「…………」

 俺は頭の整理をしようと試みる。

 たしか俺は、今日も一日の仕事を終えて帰宅する途中だったはずだ。今年から社会人になったばかりで、最近やっと少し仕事にも慣れて来た。
 仕事が楽しいとは言えないが、社会で生きていくためには必要なことだと日々自分なりに頑張っていた。

 ところが、気が付いたら目の前には美少女、周囲はまるでヨーロッパ風のお城の中といった様子だ。
 まあ、ヨーロッパのお城なんて見たことないから、あくまでそんなイメージというだけだが。

 俺の服装はスーツの上下だから帰宅途中の姿のままだ。
 ふと足元を見ると、なんだか魔方陣のような紋様が書かれている。 

 このローザベルという少女の言うことが正しいなら、ラノベよろしく俺は異世界に召喚されたということだろうか。
 しかも聞き間違えじゃなければ、この14歳くらいに見える少女は、自分のことを魔王と言っていたような……。

 目の前の少女の非現実的な可愛らしさも相まって、夢の中だと言われた方が納得できる。
 通勤電車の中で、異世界転生モノばかり読んでいたから、そんな夢を見ているのだろうか。
 中学生の少女がコスプレしているところに迷い込んだのかと一瞬思ったりもした。

 しかし、なぜかこれは現実だと確信するほどのリアリティがある。

「ここは、一体……?」

 周囲を見回しても他に人はいないため、少女に質問してみる。

「ここは私の城の一室よ。人間からパク……拝借した古い魔術書を解読して召喚魔法を使ったのよ」

 言い直したけどどうやらパクった魔術書とやらを使ったようだ。なかなかお茶目なところもあるじゃないか。

「えーと……、召喚されたってことは、俺は勇者か何かってこと?? あ、でも君が魔王だって言うなら……」

「やめてよ、勇者なんて……。魔王の使徒のつもりで召喚したんだからっ」

 よくある勇者召喚が頭に浮かんだからそれを口にしたら、少女は勇者という言葉に嫌そうな顔をした。
 どうやら俺は使徒なるべきものとして、召喚されたようだ。魔王の手先みたいなものかな。

 少女は言葉を続ける。

「それに、『君』なんて失礼な呼び方すると燃やして灰にするわよ。『ローザベル様』もしくは『魔王様』と呼びなさい。あと、あなたも名を名乗りなさい」

 少女がぷんすかしてるけど、あまり怖くはない。どちらかというとその姿すら可愛らしく感じるほどだ。でも、ラノベとかだとこういう美少女魔王が凄い魔力を持っていて、凄い魔法を使ったりするから、あえて逆らったりはしないようにする。

「分かりました。魔王様。俺の名前は竜田伊月たつたいつきです。親しい人からは『いつき』と呼ばれてます。状況が分からないので、色々教えてもらえると助かります」

 言葉を返してふと気づいた。俺は非現実的なこの状況を、すでに受け入れ始めているのだった。





 魔王と名乗る少女から今の状況について簡単に教えてもらった。
 少しツンツンしてるけど、分かりやすく教えてくれたことから、根は真面目そうだなあと思った。

 現在この世界では数人の魔王が領土を巡って争っているらしい。目の前の美少女魔王もその魔王の内の一人とのことだ。
 人族の国もあるらしいけど、今は休戦中らしい。魔王同士が争って消耗するのを静観しているというのが本当のところらしいけど。

 そんな長く続いている争いに終止符を打つために、ローザベルは人族に伝わる伝説の召喚魔法を使うことにしたとのことだった。伝わる話によると、召喚魔法で召喚された異世界の人間は、特別強力な力を持ってこの世界にやってくると言われているとのことだ。ユニークスキルという、ごく一部の者が持つ力を必ず身に付けて召喚されるのだという。

 ローザベルは、その力を使って魔族を統一するのが目的だったらしい。

「早速あなたの力を見せてもらうわ」

 ローザベルが、力を示せと俺に言う。
 だが待って欲しい。俺はついさっきまでぺーぺーのサラリーマンだったのだ。
 力を見せろなんて、無茶ぶりではなかろうか。

「ち、力って言っても、俺は普通の人間だし……。分かった! ちょっと待っててくれ……ください」

 もしかしたらこの世界に転移するタイミングで何か力を得たのかもしれない。例えば、転移の定番といったら膨大な魔力だろう。

 俺はローザベルに背を向けて、部屋の壁に向かって立つ。窓が少し上にあるから、この壁の向こうは外だろう。

「何する気……?」

 ローザベルに問いかけられるが、片手を上げて静かにしているように頼む。

 ふ……、今の俺ってば、ちょっと出来る風だったんじゃね?
 勇者か使徒か知らないけど、美少女を前にしたらちょっと良い所を見せたくなるのが男ってものだろう。

 右手の平を顔に向けて構える。そして、力を右手に集中させるように意識する。

 目覚めろ……俺に眠っていた力……。

 そんな風に念じると、なんだか右手がポカポカしてきた。
 お……、これがもしかして魔力ってやつか。
 魔力が強すぎてお城の壁を壊しちゃったらゴメンな。その分活躍して返すからさ、と胸の内で独りごちる。

 行くぞ……。

「ハアァッ!!」

 壁に向けて、勢いよく右手を伸ばす。声に合わせて、魔力を前方に放つ心持ちだ。膨大な魔力をコントロールするために、左手は右手の手首をガシッと掴んでいる。

「…………」

「…………」

 静寂が部屋を満たした。

 あれ……?
 たしかに力が湧いてくるのは感じたんだけど……。

 ローザベルの方を振り返ると、こっちをジト目でにらんでいる。

「ち、違うんだ!」

「何が違うのよ……」

 男の言い訳は、いつの時代も「違う」から始まるようだ。
 
「まだちょっと力の使いかたが分からなくて!」

「そりゃそうよ。これを使って持ってるスキルを調べるんだから……」

 ローザベルの手には大きな水晶のようなものが握られている。 

 あ、そういうこと。その水晶で転移ボーナスを鑑定するってわけね。そういうの、この前ラノベで見たなあ。

 ローザベルがつかつかと俺のそばまでやってくる。

「俺にはどんな力が……?」

「待ってなさい……すぐ分かるから」

 そう言って、ローザベルは水晶を俺に向かってかかげたのだった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...