4 / 15
第4話「唐揚げは剣よりも強し」
しおりを挟む
「私の支配下全てのものがイツキのものよ。もちろん、魔王の座もね」
魔王っ娘は、何を言っているのだろうか。
唐揚げが美味しかったからあなたの軍門に下ります、ということだろうか。
そんな話は聞いたことがないし、想像も納得もできない。
「ち、ちょっと待ってくれ! 魔王様、唐揚げだったら俺をコックとして雇ってくれればいつだって食べられますよ!」
コックとして雇われるというのは、我ながら名案だ。
平和な日本で暮らしてきた俺にとって、戦わずに異世界で生活できるのは有難いことだろう。
うっかり戦場に駆り出された日には、流れ魔法にでも当たって、簡単に死んでしまう自信がある。
「イツキ……、私のことはローザと呼んで欲しい。もう、あなたが魔王よ」
ローザベルの眼差しはいたって真剣だ。
くっ……、可愛いじゃないか。
パッチリした可愛らしい目で訴えてきて、つい頷いてしまいそうだ。
「待て、待て! 唐揚げを美味しく食べてくれたのは凄く嬉しいけど、だから魔王にっていうのは話が飛躍しすぎだろ」
「あのね、“からあげ”は私が今まで食べたものの中で一番美味しかった。それも二番目に大差をつけての一番よ。間違いなくイツキの“からあげ”は最強よ!! 私の炎魔法よりも遥かに凄いことよ」
「だからって、美味しさと人を従える強さは関係ないでしょ?」
「ううん、同じだよ。私は“からあげ”を食べて、『ああ……、この人には勝てないな……』と思っちゃった。この人に従いたいなって思っちゃったんだ……」
「いやいやいや……、たかが食べ物が美味しいってだけだろ?」
「イツキは自分の価値を分かってない! 一度あの“からあげ”を食べてしまった私は、どこかの国のせいでイツキの“からあげ”を食べられなくなるとしたら、その国を滅ぼす自信がある!」
そんな理由でどこかの国を滅ぼさないでくれ……。
うーん、全く理解できない。
食糧のために戦争が起こるというのは、地球の歴史でもあったことらしいけど、それとこれとはだいぶ話が違う。
この子が、ちょっと変わっているのだろうか?
ペットが餌付けされる感じなのだろうか……、などとちょっと失礼なことを考えてしまう。
あとこれは俺の勝手なイメージだけど、魔族って自分より強いものにしか従わない的な感じじゃん。
ローザベルは良くても、今までローザベルに従ってきた部下たちや市民たちは絶対受け入れないだろう。
「魔王ってそんな簡単に人にあげられるものじゃないだろ。それに俺は自慢じゃないけど、戦ったら超弱いんだぞ」
「それは大丈夫! イツキに敵対する奴は、私が全部焼き尽くすからっ! そ、そうだ!」
ローザベルは名案が浮かんだとばかりに、手をポンと叩いたと思ったら恥ずかしそうにモジモジし始めた。
「……どうしたの?」
何やらちょっと照れているローザベルに恐る恐る聞いてみる。
「……あのね。イツキが魔王になってね……」
「…………」
とりあえず黙って続きを聞いてみる。
「私がイツキの妻になるの!」
「…………」
「毎日美味しい“からあげ”を食べて、全部が上手くいく気がするわ。考えただけで幸せね!」
唐揚げに囲まれてるところを想像しているのだろうか。
ローザベルが満面の笑みを浮かべて、そんなことを言う。
さすがに毎日唐揚げばかり食べてたら胃がもたれそうだ……。
と、突っ込むところはそこじゃないな。
なんで、俺はさっき出会ったばかりの美少女に求婚?されているのだろう。
美味しいものを食べられるとかで結婚しちゃうの?とか、お城のコックに作ってもらえばいいだけじゃね?とか、俺の頭の中は混乱の極みだ。
「ちょっと待ってくれ! 結婚なんてすぐできるもんじゃないだろう」
「そ、そうだよね……」
ローザベルはなんだか残念そうだ。俺が悪いことをしてるような気がしてくるから不思議だ。
そりゃあこんな可愛い子から好意を寄せられれば嬉しいけど、きっと今は雰囲気に流されてはいけない時だ。
「魔王のことだって、ローザは良くても臣下の皆は納得しないんじゃないかな」
唐揚げが美味しかったなんて理由で、納得するわけがない。
ローザと呼ぶのは少し緊張したけど、呼ぶと“魔王様”よりも合ってる気がした。
けど、ローザと呼ばれた瞬間に嬉しそうにするのは反則だろう。俺の心臓の鼓動は、少し……、いや大きく跳ね上がった。
「じゃあ皆が納得したら、イツキはそれで良いんだねっ!」
その後、ああだこうだとやり取りを繰り返したけど、結局その場は俺が折れて、皆を納得させられるなら良いということになった。
どうせ、皆を納得させられるわけがないからね。
説得できなければローザベルも諦めてくれるだろうと、俺は考えたのだった。
魔王っ娘は、何を言っているのだろうか。
唐揚げが美味しかったからあなたの軍門に下ります、ということだろうか。
そんな話は聞いたことがないし、想像も納得もできない。
「ち、ちょっと待ってくれ! 魔王様、唐揚げだったら俺をコックとして雇ってくれればいつだって食べられますよ!」
コックとして雇われるというのは、我ながら名案だ。
平和な日本で暮らしてきた俺にとって、戦わずに異世界で生活できるのは有難いことだろう。
うっかり戦場に駆り出された日には、流れ魔法にでも当たって、簡単に死んでしまう自信がある。
「イツキ……、私のことはローザと呼んで欲しい。もう、あなたが魔王よ」
ローザベルの眼差しはいたって真剣だ。
くっ……、可愛いじゃないか。
パッチリした可愛らしい目で訴えてきて、つい頷いてしまいそうだ。
「待て、待て! 唐揚げを美味しく食べてくれたのは凄く嬉しいけど、だから魔王にっていうのは話が飛躍しすぎだろ」
「あのね、“からあげ”は私が今まで食べたものの中で一番美味しかった。それも二番目に大差をつけての一番よ。間違いなくイツキの“からあげ”は最強よ!! 私の炎魔法よりも遥かに凄いことよ」
「だからって、美味しさと人を従える強さは関係ないでしょ?」
「ううん、同じだよ。私は“からあげ”を食べて、『ああ……、この人には勝てないな……』と思っちゃった。この人に従いたいなって思っちゃったんだ……」
「いやいやいや……、たかが食べ物が美味しいってだけだろ?」
「イツキは自分の価値を分かってない! 一度あの“からあげ”を食べてしまった私は、どこかの国のせいでイツキの“からあげ”を食べられなくなるとしたら、その国を滅ぼす自信がある!」
そんな理由でどこかの国を滅ぼさないでくれ……。
うーん、全く理解できない。
食糧のために戦争が起こるというのは、地球の歴史でもあったことらしいけど、それとこれとはだいぶ話が違う。
この子が、ちょっと変わっているのだろうか?
ペットが餌付けされる感じなのだろうか……、などとちょっと失礼なことを考えてしまう。
あとこれは俺の勝手なイメージだけど、魔族って自分より強いものにしか従わない的な感じじゃん。
ローザベルは良くても、今までローザベルに従ってきた部下たちや市民たちは絶対受け入れないだろう。
「魔王ってそんな簡単に人にあげられるものじゃないだろ。それに俺は自慢じゃないけど、戦ったら超弱いんだぞ」
「それは大丈夫! イツキに敵対する奴は、私が全部焼き尽くすからっ! そ、そうだ!」
ローザベルは名案が浮かんだとばかりに、手をポンと叩いたと思ったら恥ずかしそうにモジモジし始めた。
「……どうしたの?」
何やらちょっと照れているローザベルに恐る恐る聞いてみる。
「……あのね。イツキが魔王になってね……」
「…………」
とりあえず黙って続きを聞いてみる。
「私がイツキの妻になるの!」
「…………」
「毎日美味しい“からあげ”を食べて、全部が上手くいく気がするわ。考えただけで幸せね!」
唐揚げに囲まれてるところを想像しているのだろうか。
ローザベルが満面の笑みを浮かべて、そんなことを言う。
さすがに毎日唐揚げばかり食べてたら胃がもたれそうだ……。
と、突っ込むところはそこじゃないな。
なんで、俺はさっき出会ったばかりの美少女に求婚?されているのだろう。
美味しいものを食べられるとかで結婚しちゃうの?とか、お城のコックに作ってもらえばいいだけじゃね?とか、俺の頭の中は混乱の極みだ。
「ちょっと待ってくれ! 結婚なんてすぐできるもんじゃないだろう」
「そ、そうだよね……」
ローザベルはなんだか残念そうだ。俺が悪いことをしてるような気がしてくるから不思議だ。
そりゃあこんな可愛い子から好意を寄せられれば嬉しいけど、きっと今は雰囲気に流されてはいけない時だ。
「魔王のことだって、ローザは良くても臣下の皆は納得しないんじゃないかな」
唐揚げが美味しかったなんて理由で、納得するわけがない。
ローザと呼ぶのは少し緊張したけど、呼ぶと“魔王様”よりも合ってる気がした。
けど、ローザと呼ばれた瞬間に嬉しそうにするのは反則だろう。俺の心臓の鼓動は、少し……、いや大きく跳ね上がった。
「じゃあ皆が納得したら、イツキはそれで良いんだねっ!」
その後、ああだこうだとやり取りを繰り返したけど、結局その場は俺が折れて、皆を納得させられるなら良いということになった。
どうせ、皆を納得させられるわけがないからね。
説得できなければローザベルも諦めてくれるだろうと、俺は考えたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる