ドラゴンすら眠らせる俺の睡眠魔法 ~ダメ可愛い美少女にはシエスタを~

メイン君

文字の大きさ
16 / 21

第16話「赤と黒」

しおりを挟む

 レーカがドラゴン形態に変化へんげしてくれた。

 黒ドラゴンに立ちはだかる、あかきドラゴン。

 味方だと思うと、これほど心強いものはない。

 仲間だと思うと、ことさらに格好良く見える。

 宝石よりも綺麗なあかい輝きに目を奪われ、硬さを見せつけながらも獰猛に躍動する姿に心を奪われる。

 気づいてしまった。

 ああ……、俺はレーカに憧れているんだな……。

 だけど、今は戦闘中。
 あまり見とれている場合ではない。

 セシルさんを見ると、自身のピンチを助けられたことが分かっているのかポーっとしている。

 レーカが男だったら、完全に惚れるところだもんね。

赤と黒ルージュ ノワール
 どこの世界でもよく敵対する色だけど、
 レーカは問題なく勝てそうだね」

 アルには危機感が全くうかがえない。
 レーカの方が強いと確信しているからかな。

 それは俺も同感だ。
 
 どちらも人族が相手にするには、強大すぎる存在だ。
 けど、どちらが強いかはある程度は本能で分かる。

 俺なんかが分かるくらいに、レーカと黒ドラゴンには差があるのだろう。

 今の俺にできることは、レーカの戦いの邪魔にならないことだ。
 少し寂しいけどね。

『ネロたちは少し離れてて!
 あたしだけで大丈夫だから』

 おお! レーカの声だ。

 いつもより反響しているような声音だ。
 ドラゴンの姿でも喋れたんだね。

 レーカの言葉に従いその場を離れるべく、セシルさんの手を引く。

 セシルさんを安全な場所まで逃がしたら、戦いの場に戻るつもりだ。

 睡眠魔法が必要な場面が出てくるかもしれないからね。

『グルォオオオ!』

 黒ドラゴンがレーカに体当たりをしかける。

 レーカはそこにカウンターで尻尾を叩きつけた。

 ゴンっとおよそ生物同士がぶつかったとは思えない鈍い音を立て、黒ドラゴンが弾き飛ばされる。

『グルゥ……』

 黒ドラゴンは、地面に這いつくばりうめき声を上げる。

 そこにレーカが追い打ちをかけようとしているのか、何か力が集まっていくのが感じられる。
 魔法を撃つ時のタメに似ている。

 レーカがより赤く輝き、離れている俺にも熱量が伝わってくる。

 おそらく炎系の攻撃だろう。

 それも大概のモノ・・を消滅させるような規模の……。

 その時、急にアルが大声で叫んだ。

「レーカ! 待って!!
 その黒いドラゴンは殺さないで!」

 アルの叫び声を聞いたレーカは、小さくコクンと頷くとエネルギーの収束を解いた。

 そして、黒ドラゴンに近づき上から手で地面に抑えつけた。

『ネロっ!』

 俺を呼ぶレーカの声。
 黒ドラゴンを眠らせろということだろう。

 黒ドラゴンは殺されるところを止められたことを理解しているかのように、大人しく睡眠魔法にかかってくれた。

 終わってみればレーカの圧勝だった。





「どうしたものか……」

 これからどうするか、集まって話すところだ。

 レーカはドラゴンのままの姿。
 セシルさんは俺の隣でソワソワしていて、アルは俺の隣でプカプカ浮いている。

 黒ドラゴンは近くで眠っている。
 睡眠魔法を強めにかけたから、ちょっとのことでは目を覚まさないだろう。

 本当はすぐにでもこのタナリアの森を出た方が良いのかもしれないけど、この森のことが気にならないと言えば嘘になる。

 “好奇心はも殺す”ってアルが言ってたしなあ。

 そんなアルは、レーカを止めてたな。

「アル、そこの黒いドラゴンを殺すのを止めてたけど、
 何か理由があるの?」

「うん、実はそこのドラゴンなんだけど、
 この森の瘴気しょうきの影響をうけて正気しょうきじゃない感じなんだ……。
 ハッ!?」

「アル……。
 ダジャレを言ってる状況じゃあ……」

 俺のジト目が止まらない。

「そんなアル君も可愛いよっ!」

 まあ、セシルさんがリラックスできたみたいだから良いけどさ。

 アルの話によると、ドラゴンは魔物の中でも理知的なことが多く、正気を取り戻したら何か話が聞けるかもしれないということだった。

 理知的ねえ……と思ってレーカの方を見たら、何かを察したのかフーっと息を吹きかけられた。
 かなりの強風で危うく吹っ飛ばされるところだったよ。

「普通じゃない感じは俺も感じたけど、
 この瘴気の原因がアルには分かるの?」

「ええとね。
 はっきりとは分からないけど、
 このタナリアの森の中心に原因になってる何かがあると思うよ」

 確かにそんな気はするよね。村長も何かが封印されているとか言ってたし。

『どうするかはネロが決めてっ』

 レーカが反響ボイスで促してくる。この反響ボイスはなんだか癖になるな……じゃなくて。

 うーん……。

 このまま帰るのもありだけど、君子危うきに……っていうけれど。

 気になって夜寝れなくなるんだよね。

 それに、スケルトンにドラゴンと、すでにだいぶ核心に近づいている気がするんだよね。

「よし! 行ってみようか!!
 それで少しでも危なそうだったら全力撤退で」

「僕はオーケーだよ」

「わたしもいいわ」

『クルォーン』

 俺の決定に、みんな賛成してくれた。

 なんだかこの冒険者パーティーっぽい感じ、ちょっと嬉しくて潤んでしまったことは内緒だ。

 とくにレーカにはね。なんだか悔しいじゃん。

 というわけで、俺たちはタナリアの森の深部目指して歩みを進める。

 黒ドラゴンをそのままにしておくのもどうかということで、レーカが引きずっていくことになった。

 首根っこをくわえられて引きずられる巨大なドラゴンの姿は、とてもシュールだった。

 通り道にある木々が、運ばれる黒ドラゴンにあたってバキバキとぎ倒されていく。

 どこからどう見ても、狩った獲物を住処すみかへと持ち帰るドラゴンの姿だった――――。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...