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最終話 魔王様は俺のモノ
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ミレーニアは、ブレスの直撃を受け地面に墜落する。
「ミレ!!」
ダイチはよじ登っていた邪竜から飛び降り、ブレスの直撃したミレーニアの所に向かう。
『ミレーニア、なんで避けないのよ!』
オリカも焦っている様子だが、ミレーニアの場所までの移動の補助をしっかりと行っている。
ミレーニアの所にダイチが辿り着く。
ミレーニアの体は、炭のように黒ずんでプスプスと煙が出ている。
意識も無いようでグッタリとしている。
ダイチはミレーニアを抱きかかえて呼びかける。
オリカは邪竜の動向に注意を払っている。先ほどの一撃がとっておきだったのか、邪竜は力を溜めるようにジッとしているようだ。すぐにでも動き出しそうではあるが。
「ミレ! ミレ!! どうして!?」
「……ぅ、ん……。……ダイチ?」
ミレーニアがわずかに意識を取り戻す。
「ミレ……、どうして避けないんだよ……」
悲痛そうに絞り出すように問いかける。仮に理由が分かったとしても、直撃を受けた事実は変わらない。
「ダイチ……、私が避けたら、多分後方にある魔王城に直撃してたはずよ……」
「そんなっ……」
魔王城の方角にダイチは目を向ける。たしかに先ほどのブレスの威力で魔王城に直撃していたら、一撃で崩壊するまであった。
「ちょっともう無理かもしれないわ。でも最後にダイチを守れて良かったわ……」
体力が尽きそうなところに直撃を受けたからかもしれない。ミレーニアは今までになく口調が弱々しい。
「最後とか言うなよ……」
ダイチは自身の非力さ、無力さゆえにミレーニアが犠牲になったと思っている様子だ。
「ふふっ……、最後と言えばさ……、最後のお願いっていうのをしてもいいかしら?」
なんとか微笑もうとしている感じが痛々しい。
「なんだよ……?」
「私のことを『俺のモノ』って言ってほしいの。実はちょっとオリカちゃんのことが羨ましかったんだよね……」
照れた様子でそんなことを言うミレーニア。
「……、分かった」
ふと何か可能性に思い至ったかのように、ダイチが決意をした表情になる。
今まではできるイメージが持てなかったことだが……。
「…………」
ミレーニアは静かにダイチを見つめている。
「ミレ、お前は俺のモノだ。これからずっと、ミレーニア・アドラメリアは俺のモノだ」
ダイチはミレーニアを抱きしめ口づけをする。
ずっと前から伝えたかった想いを込めるかのように、ダイチは優しくミレーニアを抱きしめる。
ミレーニアの目尻から涙がこぼれる。
(お前は俺のモノだ)
突然、ミレーニアの体が輝きだした。
一瞬、周囲を眩い光が包み、その光はダイチに吸い込まれていく。
「ミレ……」
ミレーニアに声をかけたところで、ダイチはミレーニアに力強く抱きしめられた。
ダイチの腕の中のミレーニアの傷は完全に癒えていた。
「ダイチ、死にそうだよ……」
「所有権魔法が成功して、傷は癒えたんじゃないのか」
人に使ったのは初めての魔法、やはり何か失敗でもしたのかと、ダイチは不安そうだ。
「嬉しくて死にそうなのよ! 私はダイチのモノなのよ」
「お前なあ……」
とりあえず成功したようで、ダイチはホッとしたようだ。
「ダイチに抱きしめられてるのが、凄く名残惜しいけど、今はアイツをチャチャっと倒してくるね」
そう言って、ミレーニアは起き上がる。
「おい、チャチャってそんな簡単な相手がじゃないだろ」
「ううん、今ならなんでもできる気がするわ。ダイチの魔法のおかげか、魔王城の魔力が私に流れ込んでくるのよ」
ミレーニアは「今ならもしかしたら……」と空間の裂け目に手を突っ込む。
取り出したのは漆黒の大剣。
その禍々しくも優美な様は、およそ他の剣とは一線を画するものだ。
『あ、サタン君!』
オリカが剣を見て叫ぶ。
空中に浮くように存在するその漆黒の大剣が、わずかに振動する。
『お、久しぶりの外だぜ。あれ? なんでルシフェル姉ちゃんがいるんだ?』
サタンと呼ばれた大剣が言葉を発する。
『わたしは「オリカ」よ。間違わないでくれる』
鎧から一本、槍のようなものが出て、大剣の方に向いている。
『お、オリカな、分かったからそのウエポンブレイクの槍をこっちに向けないでくれ』
大剣が「姉ちゃん、相変わらずコエーよ」とブツブツ呟いている。
「今ならできる気がしたけど、魔剣サタンを出すことができたみたい」
ミレーニアがダイチに向かって嬉しそうに告げる。
『おお、嬢ちゃん、久しぶりに会ったらずいぶん大きくなったな。前は俺の魔力の吸い上げに耐え切れず気絶しちゃったもんな。それで暫くは出てこないようにしてたんだけどさ』
「魔王城のおかげで今は魔力の余裕があるわ。サタン、わたしに力を貸して!」
『へえ……、何だか楽しそうなことになってるじゃん。いいぜ嬢ちゃん、思う存分振るってくれ』
スイーっと魔剣サタンがミレーニアの手に収まる。
『ミレーニア、さっき気づいたんだけど、あの邪竜は一部オリハルコンでできているわ』
鱗が剥がれて露出していた部分をダイチが指摘し、それをオリカが感知したようだ。
「もしかしたら、あの邪竜は純粋な生物じゃなくて、大きな動く武器って言った方が正しいのかもしれないな」
ダイチは戦っている最中の違和感からも、その結論の方がしっくりくる様子だ。
『多分だけど、胸の部分に何かがある感じがしたわ。狙うならそこかも』
「わたしに任せて。今ならきっとアイツを倒せるから」
ミレーニアは半ば確信しているかのようだ。
「ミレ……」
「ダイチ、行ってくるね。さっきは最高に嬉しかったわ」
魔剣サタンをたずさえて、ミレーニアは邪竜に向かって飛び立っていく。
ちょうど邪竜も充填が終わったかのように、再び動き出す。
相対する両者。
長く続いた戦いの結末が近いことを予感させる。
邪竜が先に動く。
威力が高めの黒きブレス、ご丁寧に魔王城に向かう角度まで再現されている。
「サタン、いくよ!」
ミレーニアは大剣に魔力を注ぎ、ブレスを切り払うように振り下ろす。
魔剣サタンから生じた衝撃波が、邪竜のブレスを押し返し、霧散させていく。
さらに衝撃波の余波が邪竜まで届き、邪竜を揺らす。
完全にミレーニアの方が押し勝っている形だ。
「これで終わりよ!」
ミレーニアは両手で大剣を水平に構える。
切っ先を邪竜に向け、突きの構えだ。
ミレーニアから紫色の輝きが生じ、周囲は蜃気楼のように空気が揺らいでいる。
「ハアアッ!!!」
邪竜アジ=ダハーカの胸の部分に向けて、ミレーニアが加速していく。
ミレーニアの突きが邪竜の胸に激突する。
次の瞬間には、邪竜の背中からミレーニアが飛び出した。
邪竜の胸には、衝撃波の影響か、ミレーニアの体以上に大きな穴が開いていて、反対側の空が見通せる。
「ミレ、やったな」
ダイチは腕に少し痛みを感じているようだ。
それはつまり邪竜との激突で、ミレーニアは腕の少しの痛みで済んでいるということだ。
『ガガオ……』
邪竜が金属をすり合わせたような音を口から発し、前のめりに倒れていく。
そして、邪竜は轟音とともに地面に倒れ伏す。
「ダイチー! やったわー!」
空からダイチに向かって、ミレーニアが手を振っている。
「本当にやっちまったな」
『これはさすがに、わたしも驚きよ』
伝説の竜を打ち倒した魔王様を見て、嬉しいやら驚くやらのダイチだった。
■■■
邪竜アジ=ダハーカは自律型の大型武器だったようで、その後、ダイチがこれを「所有権設定」することに成功した。
アジ=ダハーカは、名前を改め「守護竜ファフニール」として、魔王城および各地の防衛にあたっていくことになる。
ファフニールはなぜか、ダイチよりミレーニアの言うことの方を聞くという噂が流れるが、はたして真偽はどうであろうか。
今回の侵攻に関して、帝国側は邪竜アジ=ダハーカがとっておきの切り札だったようで、これを打倒した魔王側は帝国軍を簡単に押し返すことができた。
帝国もまさか邪竜が打倒されるとは思っていなかったのだろう。
魔王の臣下たちの何人かは、ミレーニアに逆侵攻を提案するが、「一般の国民たちが悪いわけじゃないよ、今度こっそりと帝国の重臣会議に、潜入しちゃいましょ」とミレーニアがニヤリと笑ったのを見て、臣下たちはそれに敬服し、そして畏怖するのだった。
魔王領には再び平和が訪れたのだった。
■■■
「おい、ミレ。今月分も金貨数枚分足りないぞ」
ダイチの部屋で、ミレーニアが今月分の魔王城の家賃を払うところだ。
「あれー? 今月はお取り寄せはしなかったはずなんだけどなぁ……?」
ミレーニアは指先でおでこをグリグリしている。何かを思い出そうとしているのだろうか。
ミレーニアの後ろに立っているメイド服姿のリンスが、何かを思い出したかのようにポンっと手を打つ。
「ミレーニア様、昨日お城に来てた行商人から、チョコレートなるものを買っていましたね」
「あっ……」
ミレーニアは何かを思い出したかのようだ。
リンスの言葉は続く。
「あのお菓子を好きな人にあげる、そんな習慣があるとか、その時期がもうすぐ来るとか、行商人の方に勧められていましたね」
「あうぅ……」
「『これで意中のあの人もイチコロ、二人に甘いひと時を』ってところで、行商人の話に飛びつき、チョコレートを買い占めていたような……」
リンスが行商人の売り言葉を真似する。
「そうだったわ……、あの時は家賃の支払いが迫っていることはすっかり忘れていたわ……」
ミレーニアがため息をつく。
「ミレ……」
「違うのよっ! ダイチのことを忘れていたわけじゃないのよ。むしろダイチのことを想うあまり……ああ」
「ったく、しょうがないな……」
あたふたするミレーニアを見て、ダイチはため息をつく。
「あ、今度こそ体で支払うよ! なんと言っても、私はもうダイチのモノなんだからねっ」
ミレーニアは顔を真っ赤にして、宣言する。
魔王様の周囲は本日もドタバタ賑やかであった。
(こんな日々が続くのは悪くないかもな)
―――― END ――――
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最後までお読みいただきありがとうございました。
読者様方のアクセスが励みになり、完結まで書くことができました。
作者として、登場キャラクターに愛着があるので、機会があったら続きを書きたいとも思っています。
繰り返しになりますが、ありがとうございました。
↓良かったら連載中のこちらもご覧ください↓
『ドラゴンすら眠らせる俺の睡眠魔法 ~ダメ可愛い美少女にはシエスタを~』
http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/859099501/
「ミレ!!」
ダイチはよじ登っていた邪竜から飛び降り、ブレスの直撃したミレーニアの所に向かう。
『ミレーニア、なんで避けないのよ!』
オリカも焦っている様子だが、ミレーニアの場所までの移動の補助をしっかりと行っている。
ミレーニアの所にダイチが辿り着く。
ミレーニアの体は、炭のように黒ずんでプスプスと煙が出ている。
意識も無いようでグッタリとしている。
ダイチはミレーニアを抱きかかえて呼びかける。
オリカは邪竜の動向に注意を払っている。先ほどの一撃がとっておきだったのか、邪竜は力を溜めるようにジッとしているようだ。すぐにでも動き出しそうではあるが。
「ミレ! ミレ!! どうして!?」
「……ぅ、ん……。……ダイチ?」
ミレーニアがわずかに意識を取り戻す。
「ミレ……、どうして避けないんだよ……」
悲痛そうに絞り出すように問いかける。仮に理由が分かったとしても、直撃を受けた事実は変わらない。
「ダイチ……、私が避けたら、多分後方にある魔王城に直撃してたはずよ……」
「そんなっ……」
魔王城の方角にダイチは目を向ける。たしかに先ほどのブレスの威力で魔王城に直撃していたら、一撃で崩壊するまであった。
「ちょっともう無理かもしれないわ。でも最後にダイチを守れて良かったわ……」
体力が尽きそうなところに直撃を受けたからかもしれない。ミレーニアは今までになく口調が弱々しい。
「最後とか言うなよ……」
ダイチは自身の非力さ、無力さゆえにミレーニアが犠牲になったと思っている様子だ。
「ふふっ……、最後と言えばさ……、最後のお願いっていうのをしてもいいかしら?」
なんとか微笑もうとしている感じが痛々しい。
「なんだよ……?」
「私のことを『俺のモノ』って言ってほしいの。実はちょっとオリカちゃんのことが羨ましかったんだよね……」
照れた様子でそんなことを言うミレーニア。
「……、分かった」
ふと何か可能性に思い至ったかのように、ダイチが決意をした表情になる。
今まではできるイメージが持てなかったことだが……。
「…………」
ミレーニアは静かにダイチを見つめている。
「ミレ、お前は俺のモノだ。これからずっと、ミレーニア・アドラメリアは俺のモノだ」
ダイチはミレーニアを抱きしめ口づけをする。
ずっと前から伝えたかった想いを込めるかのように、ダイチは優しくミレーニアを抱きしめる。
ミレーニアの目尻から涙がこぼれる。
(お前は俺のモノだ)
突然、ミレーニアの体が輝きだした。
一瞬、周囲を眩い光が包み、その光はダイチに吸い込まれていく。
「ミレ……」
ミレーニアに声をかけたところで、ダイチはミレーニアに力強く抱きしめられた。
ダイチの腕の中のミレーニアの傷は完全に癒えていた。
「ダイチ、死にそうだよ……」
「所有権魔法が成功して、傷は癒えたんじゃないのか」
人に使ったのは初めての魔法、やはり何か失敗でもしたのかと、ダイチは不安そうだ。
「嬉しくて死にそうなのよ! 私はダイチのモノなのよ」
「お前なあ……」
とりあえず成功したようで、ダイチはホッとしたようだ。
「ダイチに抱きしめられてるのが、凄く名残惜しいけど、今はアイツをチャチャっと倒してくるね」
そう言って、ミレーニアは起き上がる。
「おい、チャチャってそんな簡単な相手がじゃないだろ」
「ううん、今ならなんでもできる気がするわ。ダイチの魔法のおかげか、魔王城の魔力が私に流れ込んでくるのよ」
ミレーニアは「今ならもしかしたら……」と空間の裂け目に手を突っ込む。
取り出したのは漆黒の大剣。
その禍々しくも優美な様は、およそ他の剣とは一線を画するものだ。
『あ、サタン君!』
オリカが剣を見て叫ぶ。
空中に浮くように存在するその漆黒の大剣が、わずかに振動する。
『お、久しぶりの外だぜ。あれ? なんでルシフェル姉ちゃんがいるんだ?』
サタンと呼ばれた大剣が言葉を発する。
『わたしは「オリカ」よ。間違わないでくれる』
鎧から一本、槍のようなものが出て、大剣の方に向いている。
『お、オリカな、分かったからそのウエポンブレイクの槍をこっちに向けないでくれ』
大剣が「姉ちゃん、相変わらずコエーよ」とブツブツ呟いている。
「今ならできる気がしたけど、魔剣サタンを出すことができたみたい」
ミレーニアがダイチに向かって嬉しそうに告げる。
『おお、嬢ちゃん、久しぶりに会ったらずいぶん大きくなったな。前は俺の魔力の吸い上げに耐え切れず気絶しちゃったもんな。それで暫くは出てこないようにしてたんだけどさ』
「魔王城のおかげで今は魔力の余裕があるわ。サタン、わたしに力を貸して!」
『へえ……、何だか楽しそうなことになってるじゃん。いいぜ嬢ちゃん、思う存分振るってくれ』
スイーっと魔剣サタンがミレーニアの手に収まる。
『ミレーニア、さっき気づいたんだけど、あの邪竜は一部オリハルコンでできているわ』
鱗が剥がれて露出していた部分をダイチが指摘し、それをオリカが感知したようだ。
「もしかしたら、あの邪竜は純粋な生物じゃなくて、大きな動く武器って言った方が正しいのかもしれないな」
ダイチは戦っている最中の違和感からも、その結論の方がしっくりくる様子だ。
『多分だけど、胸の部分に何かがある感じがしたわ。狙うならそこかも』
「わたしに任せて。今ならきっとアイツを倒せるから」
ミレーニアは半ば確信しているかのようだ。
「ミレ……」
「ダイチ、行ってくるね。さっきは最高に嬉しかったわ」
魔剣サタンをたずさえて、ミレーニアは邪竜に向かって飛び立っていく。
ちょうど邪竜も充填が終わったかのように、再び動き出す。
相対する両者。
長く続いた戦いの結末が近いことを予感させる。
邪竜が先に動く。
威力が高めの黒きブレス、ご丁寧に魔王城に向かう角度まで再現されている。
「サタン、いくよ!」
ミレーニアは大剣に魔力を注ぎ、ブレスを切り払うように振り下ろす。
魔剣サタンから生じた衝撃波が、邪竜のブレスを押し返し、霧散させていく。
さらに衝撃波の余波が邪竜まで届き、邪竜を揺らす。
完全にミレーニアの方が押し勝っている形だ。
「これで終わりよ!」
ミレーニアは両手で大剣を水平に構える。
切っ先を邪竜に向け、突きの構えだ。
ミレーニアから紫色の輝きが生じ、周囲は蜃気楼のように空気が揺らいでいる。
「ハアアッ!!!」
邪竜アジ=ダハーカの胸の部分に向けて、ミレーニアが加速していく。
ミレーニアの突きが邪竜の胸に激突する。
次の瞬間には、邪竜の背中からミレーニアが飛び出した。
邪竜の胸には、衝撃波の影響か、ミレーニアの体以上に大きな穴が開いていて、反対側の空が見通せる。
「ミレ、やったな」
ダイチは腕に少し痛みを感じているようだ。
それはつまり邪竜との激突で、ミレーニアは腕の少しの痛みで済んでいるということだ。
『ガガオ……』
邪竜が金属をすり合わせたような音を口から発し、前のめりに倒れていく。
そして、邪竜は轟音とともに地面に倒れ伏す。
「ダイチー! やったわー!」
空からダイチに向かって、ミレーニアが手を振っている。
「本当にやっちまったな」
『これはさすがに、わたしも驚きよ』
伝説の竜を打ち倒した魔王様を見て、嬉しいやら驚くやらのダイチだった。
■■■
邪竜アジ=ダハーカは自律型の大型武器だったようで、その後、ダイチがこれを「所有権設定」することに成功した。
アジ=ダハーカは、名前を改め「守護竜ファフニール」として、魔王城および各地の防衛にあたっていくことになる。
ファフニールはなぜか、ダイチよりミレーニアの言うことの方を聞くという噂が流れるが、はたして真偽はどうであろうか。
今回の侵攻に関して、帝国側は邪竜アジ=ダハーカがとっておきの切り札だったようで、これを打倒した魔王側は帝国軍を簡単に押し返すことができた。
帝国もまさか邪竜が打倒されるとは思っていなかったのだろう。
魔王の臣下たちの何人かは、ミレーニアに逆侵攻を提案するが、「一般の国民たちが悪いわけじゃないよ、今度こっそりと帝国の重臣会議に、潜入しちゃいましょ」とミレーニアがニヤリと笑ったのを見て、臣下たちはそれに敬服し、そして畏怖するのだった。
魔王領には再び平和が訪れたのだった。
■■■
「おい、ミレ。今月分も金貨数枚分足りないぞ」
ダイチの部屋で、ミレーニアが今月分の魔王城の家賃を払うところだ。
「あれー? 今月はお取り寄せはしなかったはずなんだけどなぁ……?」
ミレーニアは指先でおでこをグリグリしている。何かを思い出そうとしているのだろうか。
ミレーニアの後ろに立っているメイド服姿のリンスが、何かを思い出したかのようにポンっと手を打つ。
「ミレーニア様、昨日お城に来てた行商人から、チョコレートなるものを買っていましたね」
「あっ……」
ミレーニアは何かを思い出したかのようだ。
リンスの言葉は続く。
「あのお菓子を好きな人にあげる、そんな習慣があるとか、その時期がもうすぐ来るとか、行商人の方に勧められていましたね」
「あうぅ……」
「『これで意中のあの人もイチコロ、二人に甘いひと時を』ってところで、行商人の話に飛びつき、チョコレートを買い占めていたような……」
リンスが行商人の売り言葉を真似する。
「そうだったわ……、あの時は家賃の支払いが迫っていることはすっかり忘れていたわ……」
ミレーニアがため息をつく。
「ミレ……」
「違うのよっ! ダイチのことを忘れていたわけじゃないのよ。むしろダイチのことを想うあまり……ああ」
「ったく、しょうがないな……」
あたふたするミレーニアを見て、ダイチはため息をつく。
「あ、今度こそ体で支払うよ! なんと言っても、私はもうダイチのモノなんだからねっ」
ミレーニアは顔を真っ赤にして、宣言する。
魔王様の周囲は本日もドタバタ賑やかであった。
(こんな日々が続くのは悪くないかもな)
―――― END ――――
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一気に読みましたが主人公が靡かない所が凄く良かったです!あれで照れないのはある意味凄い
ご感想ありがとうございます!
また、ご指摘ありがとうございました。
その方が自然な感じですね。
ありがたく採用させていただきます。
なかなか面白い作品ですね
期待してます
ありがとうございます!
頑張ります。