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魂の還る惑星 第七章 Takuru-冬-
第七章 第三話
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勉強の苦手な楸矢が今から一、二年受験勉強を頑張ってなんとか入れる三流大学より、音大で四カ国語をマスターした方が良い就職先が見つかるのは間違いない。
当然、四カ国語がきっちり出来ることが大前提だが。
以前、楸矢のカリキュラム表を見せてもらったが音大で履修出来る語学はどれも椿矢が修得しているものばかりだし一般科目も教養課程の科目ならなんとかなるからレポートなどは椿矢が見てやれば問題ないだろう。
試験は本人が頑張るしかないが。
「そっかぁ」
楸矢が考え込むように腕を組んだ。一般科目、特に語学がなんとかなりそうか考えているのだろう。
「そういえば、彼女と別れられたの?」
「あ、言うの忘れてた。ごめん」
楸矢は聖子と別れたときの話をした。
「円満に別れられたなら良かったね」
「でも、俺と付き合ってなければ聖子さん、もう誰かと結婚してたかもしれないんだと思うと、ちょっと悪かったなって」
「さすがに最初から結婚目的で付き合ってたわけじゃないでしょ。それに誰でもいいから早く結婚したいって思ってたなら高校生とは付き合ってないよ」
「それならいいんだけど」
楸矢は申し訳なく思っているようだが、自らの意志で高校生と付き合っていたのだからその結果結婚が遅くなったとしてもそれは自業自得だし、最初から結婚目的で高校生の楸矢と付き合ってたなら、それはそれで普通ではないから別れて正解だ。
別れ話で冷静に謝罪と礼を言えるのも、なかなか出来ることではない。
それで大人しく引き下がったのだから相手も一応まともな人だったようだ。
「それはともかく、昨日は残念だったね」
「え?」
「柊矢君と小夜ちゃんのデートのお膳立て、失敗しちゃったでしょ」
「ああ」
楸矢は前日のことを話した。
「清美ちゃん――あ、小夜ちゃんの友達――がさ、小夜ちゃんデートしたそうだし、テーマパークも行きたそうだけど、お金がかかるところは遠慮しちゃうだろうから、最初はお金のかからないところから段階的に慣らしていけばいいって言ってたんだけどさ」
昨日のように金のかからない場所はともかく、テーマパークのように金のかかるところに慣れるまでは遠慮が先に立つだろうし、それ以外のことにも色々気を遣うだろう。
「あれに乗ってみたいけど柊兄は嫌じゃないかなとか、行列が長いから長時間並ばせることになっちゃうから止めようとか、ずっと立ってて疲れてないかなとか。しかも、食事とかでお金かかる度に柊兄に払わせちゃったって恐縮するだろうし。それに混んでるってことは他にも人がいるってことだから、柊兄以外の人達にも気を遣うってことじゃん」
小夜が人に気を遣いすぎるくらいだとは聞いていたが、そこまでとは思わなかった。
元来ムーシコスは他人に無関心だ。
小夜もかなりムーシコスらしいムーシコスだから本来なら他人には興味がないはずだ。
他人に無関心な者が周りの人に気遣うとなれば意識的に周囲に関心を向け続けていなければならないから他の人間が近くにいるときは常に気を張りつめている必要がある。
それでは知らない人が大勢いる場所はかなり苦痛だろう。
「清美ちゃんは慣れれば平気って言ってたけど、それって慣れるまでは楽しくないってことでしょ。しかも、慣れればいいけど、もしかしたら一生慣れないかもしれないんだし。柊兄はムーシカ大好きだから、家でムーシカ奏でるなら気を遣う必要ないし、小夜ちゃん自身も歌うの好きだからさ。頭ではデートに憧れてても、実際行くとなると精神的な負担が大きいから、結局二人でムーシカ奏でてるのが一番楽しいってなっちゃうんじゃない?」
椿矢は感心とも驚きともつかない表情で聞いていた。
「柊兄、それ分かってたのか知らないけど、いつもなら五月に頼んでるピアノの調律、今年は三月初めにやってもらってたんだよね。確定申告で忙しい時期なのに」
「どういうこと?」
「春休みは小夜ちゃんと毎日、一日中一緒にいられるって楽しみにしてたらしいんだ」
ヴァイオリンだけでは飽き足らず、小夜のためにピアノまで弾くつもりだったから調律の予定を早めて万全の準備を整えていたのだろう。
リストの『愛の夢』やベートーヴェンの『エリーゼのために』などピアノの楽譜がピアノの側に置いてあったそうだ。
ムーシコスは音楽とパートナー以外どうでもいいから二人で延々とムーシカを奏でていられればそれで十分なのだ。
とはいえ多少は地球の音楽も演奏すると言ってもホントにムーシカだけで満足してしまっているムーシコスのカップルを見たのは初めてだ。
榎矢はしょっちゅう沙陽を映画に誘っては断られて仕方なく同じ大学の女の子と観に行っている。
沙陽は音大の声楽科を出たんだから声楽のコンサートなら承諾してもらえるかもしれないのにバカなヤツと思って見ているが、榎矢は地球の音楽のことは知らないからよく分からないのだろう。
椿矢もそれを教えてやるほど親切ではない。
沙陽にしても大学時代からパーティ三昧でこいつ授業料のバカ高い私立の音大入って何やってんだと思っていた。
この前、楸矢に教わって初めてパーティに行くのは音楽業界の人間への顔つなぎで一種の営業活動だと知った。
だが榎矢にしろ沙陽にしろ映画やパーティを楽しんでいる。
少なくともムーシカを歌ってる時間より他の娯楽の時間の方が遥かに長い。
というか沙陽はムーシコスに拘ってるくせに悪巧みの時以外は滅多にムーシカを歌わない。
椿矢も半分は研究のためとはいえ読書が好きだから本を読んでいる時間はかなり長い。
暇さえあればムーシカを歌っているというわけではないのだ。
当然、四カ国語がきっちり出来ることが大前提だが。
以前、楸矢のカリキュラム表を見せてもらったが音大で履修出来る語学はどれも椿矢が修得しているものばかりだし一般科目も教養課程の科目ならなんとかなるからレポートなどは椿矢が見てやれば問題ないだろう。
試験は本人が頑張るしかないが。
「そっかぁ」
楸矢が考え込むように腕を組んだ。一般科目、特に語学がなんとかなりそうか考えているのだろう。
「そういえば、彼女と別れられたの?」
「あ、言うの忘れてた。ごめん」
楸矢は聖子と別れたときの話をした。
「円満に別れられたなら良かったね」
「でも、俺と付き合ってなければ聖子さん、もう誰かと結婚してたかもしれないんだと思うと、ちょっと悪かったなって」
「さすがに最初から結婚目的で付き合ってたわけじゃないでしょ。それに誰でもいいから早く結婚したいって思ってたなら高校生とは付き合ってないよ」
「それならいいんだけど」
楸矢は申し訳なく思っているようだが、自らの意志で高校生と付き合っていたのだからその結果結婚が遅くなったとしてもそれは自業自得だし、最初から結婚目的で高校生の楸矢と付き合ってたなら、それはそれで普通ではないから別れて正解だ。
別れ話で冷静に謝罪と礼を言えるのも、なかなか出来ることではない。
それで大人しく引き下がったのだから相手も一応まともな人だったようだ。
「それはともかく、昨日は残念だったね」
「え?」
「柊矢君と小夜ちゃんのデートのお膳立て、失敗しちゃったでしょ」
「ああ」
楸矢は前日のことを話した。
「清美ちゃん――あ、小夜ちゃんの友達――がさ、小夜ちゃんデートしたそうだし、テーマパークも行きたそうだけど、お金がかかるところは遠慮しちゃうだろうから、最初はお金のかからないところから段階的に慣らしていけばいいって言ってたんだけどさ」
昨日のように金のかからない場所はともかく、テーマパークのように金のかかるところに慣れるまでは遠慮が先に立つだろうし、それ以外のことにも色々気を遣うだろう。
「あれに乗ってみたいけど柊兄は嫌じゃないかなとか、行列が長いから長時間並ばせることになっちゃうから止めようとか、ずっと立ってて疲れてないかなとか。しかも、食事とかでお金かかる度に柊兄に払わせちゃったって恐縮するだろうし。それに混んでるってことは他にも人がいるってことだから、柊兄以外の人達にも気を遣うってことじゃん」
小夜が人に気を遣いすぎるくらいだとは聞いていたが、そこまでとは思わなかった。
元来ムーシコスは他人に無関心だ。
小夜もかなりムーシコスらしいムーシコスだから本来なら他人には興味がないはずだ。
他人に無関心な者が周りの人に気遣うとなれば意識的に周囲に関心を向け続けていなければならないから他の人間が近くにいるときは常に気を張りつめている必要がある。
それでは知らない人が大勢いる場所はかなり苦痛だろう。
「清美ちゃんは慣れれば平気って言ってたけど、それって慣れるまでは楽しくないってことでしょ。しかも、慣れればいいけど、もしかしたら一生慣れないかもしれないんだし。柊兄はムーシカ大好きだから、家でムーシカ奏でるなら気を遣う必要ないし、小夜ちゃん自身も歌うの好きだからさ。頭ではデートに憧れてても、実際行くとなると精神的な負担が大きいから、結局二人でムーシカ奏でてるのが一番楽しいってなっちゃうんじゃない?」
椿矢は感心とも驚きともつかない表情で聞いていた。
「柊兄、それ分かってたのか知らないけど、いつもなら五月に頼んでるピアノの調律、今年は三月初めにやってもらってたんだよね。確定申告で忙しい時期なのに」
「どういうこと?」
「春休みは小夜ちゃんと毎日、一日中一緒にいられるって楽しみにしてたらしいんだ」
ヴァイオリンだけでは飽き足らず、小夜のためにピアノまで弾くつもりだったから調律の予定を早めて万全の準備を整えていたのだろう。
リストの『愛の夢』やベートーヴェンの『エリーゼのために』などピアノの楽譜がピアノの側に置いてあったそうだ。
ムーシコスは音楽とパートナー以外どうでもいいから二人で延々とムーシカを奏でていられればそれで十分なのだ。
とはいえ多少は地球の音楽も演奏すると言ってもホントにムーシカだけで満足してしまっているムーシコスのカップルを見たのは初めてだ。
榎矢はしょっちゅう沙陽を映画に誘っては断られて仕方なく同じ大学の女の子と観に行っている。
沙陽は音大の声楽科を出たんだから声楽のコンサートなら承諾してもらえるかもしれないのにバカなヤツと思って見ているが、榎矢は地球の音楽のことは知らないからよく分からないのだろう。
椿矢もそれを教えてやるほど親切ではない。
沙陽にしても大学時代からパーティ三昧でこいつ授業料のバカ高い私立の音大入って何やってんだと思っていた。
この前、楸矢に教わって初めてパーティに行くのは音楽業界の人間への顔つなぎで一種の営業活動だと知った。
だが榎矢にしろ沙陽にしろ映画やパーティを楽しんでいる。
少なくともムーシカを歌ってる時間より他の娯楽の時間の方が遥かに長い。
というか沙陽はムーシコスに拘ってるくせに悪巧みの時以外は滅多にムーシカを歌わない。
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