116 / 144
魂の還る惑星 第七章 Takuru-冬-
第七章 第十話
しおりを挟む
楸矢でさえイスかテーブル同然なのだから小夜に関係してるとはいえ、たった一度会っただけの他人など床みたいなものだろう。
それでもそこまで読めるなら他人に関心があれば名探偵になれたかもしれない。
まぁ、普通の人間からしたら、なんでもかんでも見透かしてくる相手とは関わりたくないだろうが。
楸矢君、イスかテーブル扱いでラッキーだったんじゃ……。
「小夜のお母さんがクレーイス・エコーだったってことは?」
「それだと、小夜ちゃんだけ助けてお母さん助けなかったことの説明がつかないよ」
柊矢が考え込むような表情でリストに目を落とした。
接点のある人物がいたかどうか記憶を辿っているのだろう。
「そういえば、小夜ちゃん、帰還派のやらかしの後で狙われたのは交通事故に遭いかけたときと、この前の呪詛だけ?」
「俺が知ってるのはそれだけだな。小夜一人の時にあったことは心配掛けないように、俺には言わない可能性があるから断言は出来ないが、小夜の友達に楸矢に気がある子がいるから何かあれば楸矢に教えるだろう」
「君達兄弟は特に危険な目には遭ってないよね?」
椿矢は楸矢からは何も聞いていない。
「俺は特にないな。楸矢は知らんが」
聞いてないじゃなくて知らない、か。
多分、今日帰っても楸矢君に聞いたりしないんだろうな……。
楸矢に対する態度の一端が垣間見えた気がした。確かにこれはイスかテーブルだ。
これでも以前よりは意識が向いてきているというのだから地球人的要素の方が強い楸矢にはキツいだろう。
地球人にとって家族は特別な存在だし、関心を示さなかったとしても冷たかったわけではないようだから、こういう性格の兄でも楸矢にとっては大切な相手だ。
柊矢は自分のスマホを手に取った。
「リストのコピーをもらえるか。こっちでも調べてみる」
椿矢がデータを送ると柊矢は立ち上がった。
「一つ聞いてもいい?」
「なんだ」
「なんで沙陽と付き合ってたの?」
弟でさえイスかテーブル扱いの人間がよく沙陽の存在に気付いたな、と思ったのだ。
「あいつに付き合って欲しいって言われたんだ」
声楽のコンクールを聴きに行ったとき印象に残っていた相手だったから承諾した。
「付き合ってみたら面倒くさい女で後悔したがな」
音楽以外に興味がない柊矢からしたら、それ以外――デートなど――を要求してくる沙陽は面倒以外の何物でもなかったのだろう。
交際相手でもイスかテーブル扱いなのは同じか……。
ムーシコスにとって人間はパートナーとそれ以外の二種類しかいないがここまで露骨なのも珍しい。
そして〝それ以外〟扱いだった沙陽はパートナーとは思われていなかったということだ。
それでよく一時的にでもクレーイス・エコーになれたものだが。
小夜とさえデートもしないでムーシカを奏でてるくらいなのだからパートナーでもない相手と出掛けるなど時間の無駄としか思えないのだろう。
確かデートすっぽかしたことがあるとか言ってたっけ。
それでも交際を承諾したのは沙陽がムーソポイオスだったからだろう。
当時はそうと知らなかったとしてもコンクールで歌声を聴いて無意識に気付いたのかもしれない。
とはいえムーソポイオスなら誰でもいいわけではないからパートナーにはなれなかったのだ。
沙陽、二股掛けてなくても遠からず振られてたみたいだな……。
楽しそうに喋っている楸矢と清美の後ろを小夜が歩いていた。
柊矢から急用が出来たから楸矢を行かせるというメッセージが来たので清美を夕食に招待していいか訊ねたら構わないという返事だったので誘ったのだ。
「楸矢さん、香奈の親戚の家、海の側だって知ってました?」
清美が楸矢と並んで歩きながら言った。
「へぇ、そうなんだ。でも、海水浴はまだ無理だよね」
「海水浴は夏になったら行きましょうよ」
「いいね」
「海水浴の前に水着買いに行きますから一緒に行きませんか? 楸矢さん、選んで下さいよ」
「いいよ。清美ちゃんの水着姿、楽しみだな~」
「やだ~。楸矢さん、変な妄想しないで下さいね~」
男の人に水着姿見せるなんて信じられない……。
二人の後ろを歩きながら話を聞いていた小夜は真っ赤になって俯いた。
しかし清美や楸矢が痛い痛いと文句を言っていた気持ちがよく分かった。
確かに聞いてる方はいたたまれない。
でも、柊矢さんと私はこんなに痛い話してないと思うんだけど……。
小夜は溜息を吐いた。
「そうだ。小夜、進路のこと、楸矢さんに話してみなよ」
「進路? 俺じゃ役に立たないよ。俺、音楽科のことしか分からないし」
「小夜の件はむしろ楸矢さんにしか分かりませんよ」
「小夜ちゃん、音大行きたいの?」
楸矢が振り返って訊ねた。
「いえ、そうじゃないんです」
小夜は首を振ってから清美を横目で睨んだ。
居候が申し訳ないから出ていきたいなんて言ったって楸矢さんは遠慮する必要ないって言うだけなのに。
「じゃ、どこ行きたいの?」
「それは……まだ決めてなくて……」
小夜の答えに楸矢が清美の方を向いた。
「いつまでも居候してるのは申し訳ないから、出ていくためにはどこの大学に行ったらいいかで悩んでるんだそうです」
清美が答えた途端、楸矢が笑い始めた。
「清美! なんで楸矢さんまで笑うんですか!」
「まで?」
「あたしも笑っちゃったんで」
清美の言葉に楸矢がまた笑い出した。
「だから、なんで笑うんですか!」
「小夜ちゃんさぁ、お医者さんとか先生とかなりたいものがあるなら柊兄は反対しないよ。多分ね。自衛官とか警察官みたいな危険な仕事は許してくれないだろうけど。でも、なりたいものがないなら就職先は柊兄一択でしょ」
それでもそこまで読めるなら他人に関心があれば名探偵になれたかもしれない。
まぁ、普通の人間からしたら、なんでもかんでも見透かしてくる相手とは関わりたくないだろうが。
楸矢君、イスかテーブル扱いでラッキーだったんじゃ……。
「小夜のお母さんがクレーイス・エコーだったってことは?」
「それだと、小夜ちゃんだけ助けてお母さん助けなかったことの説明がつかないよ」
柊矢が考え込むような表情でリストに目を落とした。
接点のある人物がいたかどうか記憶を辿っているのだろう。
「そういえば、小夜ちゃん、帰還派のやらかしの後で狙われたのは交通事故に遭いかけたときと、この前の呪詛だけ?」
「俺が知ってるのはそれだけだな。小夜一人の時にあったことは心配掛けないように、俺には言わない可能性があるから断言は出来ないが、小夜の友達に楸矢に気がある子がいるから何かあれば楸矢に教えるだろう」
「君達兄弟は特に危険な目には遭ってないよね?」
椿矢は楸矢からは何も聞いていない。
「俺は特にないな。楸矢は知らんが」
聞いてないじゃなくて知らない、か。
多分、今日帰っても楸矢君に聞いたりしないんだろうな……。
楸矢に対する態度の一端が垣間見えた気がした。確かにこれはイスかテーブルだ。
これでも以前よりは意識が向いてきているというのだから地球人的要素の方が強い楸矢にはキツいだろう。
地球人にとって家族は特別な存在だし、関心を示さなかったとしても冷たかったわけではないようだから、こういう性格の兄でも楸矢にとっては大切な相手だ。
柊矢は自分のスマホを手に取った。
「リストのコピーをもらえるか。こっちでも調べてみる」
椿矢がデータを送ると柊矢は立ち上がった。
「一つ聞いてもいい?」
「なんだ」
「なんで沙陽と付き合ってたの?」
弟でさえイスかテーブル扱いの人間がよく沙陽の存在に気付いたな、と思ったのだ。
「あいつに付き合って欲しいって言われたんだ」
声楽のコンクールを聴きに行ったとき印象に残っていた相手だったから承諾した。
「付き合ってみたら面倒くさい女で後悔したがな」
音楽以外に興味がない柊矢からしたら、それ以外――デートなど――を要求してくる沙陽は面倒以外の何物でもなかったのだろう。
交際相手でもイスかテーブル扱いなのは同じか……。
ムーシコスにとって人間はパートナーとそれ以外の二種類しかいないがここまで露骨なのも珍しい。
そして〝それ以外〟扱いだった沙陽はパートナーとは思われていなかったということだ。
それでよく一時的にでもクレーイス・エコーになれたものだが。
小夜とさえデートもしないでムーシカを奏でてるくらいなのだからパートナーでもない相手と出掛けるなど時間の無駄としか思えないのだろう。
確かデートすっぽかしたことがあるとか言ってたっけ。
それでも交際を承諾したのは沙陽がムーソポイオスだったからだろう。
当時はそうと知らなかったとしてもコンクールで歌声を聴いて無意識に気付いたのかもしれない。
とはいえムーソポイオスなら誰でもいいわけではないからパートナーにはなれなかったのだ。
沙陽、二股掛けてなくても遠からず振られてたみたいだな……。
楽しそうに喋っている楸矢と清美の後ろを小夜が歩いていた。
柊矢から急用が出来たから楸矢を行かせるというメッセージが来たので清美を夕食に招待していいか訊ねたら構わないという返事だったので誘ったのだ。
「楸矢さん、香奈の親戚の家、海の側だって知ってました?」
清美が楸矢と並んで歩きながら言った。
「へぇ、そうなんだ。でも、海水浴はまだ無理だよね」
「海水浴は夏になったら行きましょうよ」
「いいね」
「海水浴の前に水着買いに行きますから一緒に行きませんか? 楸矢さん、選んで下さいよ」
「いいよ。清美ちゃんの水着姿、楽しみだな~」
「やだ~。楸矢さん、変な妄想しないで下さいね~」
男の人に水着姿見せるなんて信じられない……。
二人の後ろを歩きながら話を聞いていた小夜は真っ赤になって俯いた。
しかし清美や楸矢が痛い痛いと文句を言っていた気持ちがよく分かった。
確かに聞いてる方はいたたまれない。
でも、柊矢さんと私はこんなに痛い話してないと思うんだけど……。
小夜は溜息を吐いた。
「そうだ。小夜、進路のこと、楸矢さんに話してみなよ」
「進路? 俺じゃ役に立たないよ。俺、音楽科のことしか分からないし」
「小夜の件はむしろ楸矢さんにしか分かりませんよ」
「小夜ちゃん、音大行きたいの?」
楸矢が振り返って訊ねた。
「いえ、そうじゃないんです」
小夜は首を振ってから清美を横目で睨んだ。
居候が申し訳ないから出ていきたいなんて言ったって楸矢さんは遠慮する必要ないって言うだけなのに。
「じゃ、どこ行きたいの?」
「それは……まだ決めてなくて……」
小夜の答えに楸矢が清美の方を向いた。
「いつまでも居候してるのは申し訳ないから、出ていくためにはどこの大学に行ったらいいかで悩んでるんだそうです」
清美が答えた途端、楸矢が笑い始めた。
「清美! なんで楸矢さんまで笑うんですか!」
「まで?」
「あたしも笑っちゃったんで」
清美の言葉に楸矢がまた笑い出した。
「だから、なんで笑うんですか!」
「小夜ちゃんさぁ、お医者さんとか先生とかなりたいものがあるなら柊兄は反対しないよ。多分ね。自衛官とか警察官みたいな危険な仕事は許してくれないだろうけど。でも、なりたいものがないなら就職先は柊兄一択でしょ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─
あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」
没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。
しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。
瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。
「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」
絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。
嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる