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第2話

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王城で働くメイドの入れ替わりはそう多くないはずなのに、バディーン殿下の周囲に限って例外のようだった。
噂では気に入ったメイドに手を出して、飽きたら捨てて、捨てられたメイドは職を辞めさせられるという。
そのような場に人を送り込むのは気が引けるけど、もし殿下に迫られたなら身を守ることを第一にするような方針にすれば安心できる。
殿下が文句を言うようなら当家が出て話をつければいい。
殿下だって公爵家である当家と事を構えたくないはず。

それと同時に現在王城で働いているメイドにも当家の利になるよう働きかける。
有益な話には情報提供料を支払うだけだから雇用関係はないし、当家との間に別の人物を挟むから当家までは辿り着きにくいはず。

これらの考えを執事に伝え、具体的にどうするかは任せる。

「疲れたわ。休憩するからお茶をお願い」
「はい」

メイドに頼んで一息入れることにする。

こんな面倒なことになったのはお父様がバディーン殿下と婚約させたから。
せめて第二王子のソーンアンダー殿下とだったなら歓迎したいところだけど、生憎ソーンアンダー殿下は既に婚約者がいる。

お父様ももっと早く動いてソーンアンダー殿下との婚約にしてくれれば良かったのに。
お父様は先を読むこともできないし、そもそも正妃の子であり第一王子だからバディーン殿下を選ぶような判断力しか持ち合わせていない。
最初からソーンアンダー殿下とは縁がなかったのだろう。

本当、お父様にも困ったものだわ。
だから私がどうにかしないと。

* * * * * * * * * *

人員の手配をする一方、婚約してしまったのだから私はバディーン殿下の婚約者として振る舞わなくてはならない。
それが望まない関係であろうとも、自分の気持ちに反したものであろうとも。

「こうして婚約が決まったけど、お互いに望んでのものではないだろう?」
「わがままが許される立場ではありませんから」
「こんな身分に生まれて不自由ばかりだ。もっと気楽な立場が良かった」

まるで自分ばかりが不幸だと言わんかのようにバディーン殿下は大げさに嘆いた。
そこまで不満があるなら自分から廃嫡を願い出ればいいのに。
それに十分に王子という立場で得られるメリットを受けているのに不満を抱くなんて自分勝手だ。
王子としての自覚がないのだろう。

「気楽な立場なら好きな相手を選べたのにな」
「……」

望まない婚約だということは理解できるけど、その婚約者が目の前にいるというのに平然と侮辱するようなことを口にする。

やはりバディーン殿下は私のようなまともな令嬢は好まないのだろう。
殿下が好きなのは派手で男好きするような品のない女性だろうから。
それか簡単に手を出せるような低い身分の相手か。
まだほとんど情報が集まっていないとはいえ、噂話等も含めて分析するとそういったことが予想できた。

「はぁ…」

私の顔を見つめた後に溜め息をつかれると私だって傷つく。
あまりにも不愉快な言動に顔だけは笑顔を浮かべる。
そうすればバディーン殿下は…満足するはずないわよね。
きっと私の表情も内心も関係なく私のことを蔑ろにするような発言ばかりだろう。

バディーン殿下がまともだと思ってはいけない。

早く証拠が集まらないかな。
証拠が集まったらどう活用しよう。
バディーン殿下に屈辱を与えるにはどうすればいいのか。

そんなことばかり考えながらバディーン殿下と過ごした。
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