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(外伝)ファンタジスタキューブ
007 怪異殺しのススメ、アナザー
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歩けばそれなりの距離も、車を使えばあっという間。
アラヤの危なげない運転で、ファミレスに似つかわしくないことこの上ない高級車が車もまばらな駐車場へ滑り込む。
「パトカー?」
サイレンの音もなく回転する赤色灯に気付いたのは、坂道の途中という立地のせいで、道より高い場所にある駐車場へ入ってしまってからだった。
くるくると回る光源は、ファミレスではなく、隣接する病院の駐車場に。
角の駐車スペースへ落ち着いた車から降りて様子を窺うと、物々しい台数のパトカーが、救急対応もしていないような個人経営の病院へ詰めかけているのが見て取れた。
「なんだろ。事件?」
「飯はいいのか?」
運転席から助手席側に回ってきたアラヤが、私が開けっぱなしにしていた跳ね上げドアを下ろして車を施錠する。
「食べる。……けど、気にならないの?」
「中の様子なら、ネットで生中継されてるぞ」
「えっ」
そんな馬鹿なと振り返った私のポケットから、アラヤはスマートフォンを引っ張り出して。暗転したディスプレイをこつこつ、ノックするよう軽く叩いた。
「イサナ、ミコトの端末に映像回せ」
〈かしこまりー〉
アラヤの指示に応えるイサナのあからさまな棒読み声は、スマートフォンのスピーカーから。
バックライトを点灯させたスマートフォンのロックが独りでに解除されると、ホーム画面が表示されて間髪入れず、見慣れた動画サイトのアプリが立ち上がる。
「NicoTubeLive……」
端末の持ち主である私が指一本触れないまま再生が始まった動画は、プレミア公開でもない正真正銘の生放送。
「ほんとに隣の映像なの?」
六インチそこそこしかない画面の向こうでは、よくできた映像作品としか思えないファンタジーな光景が繰り広げられていた。
「どうなんだ? イサナ」
〈放送の冒頭で映り込んだ背景と周辺の地理情報は一致しています〉
スピーカー越しに聞こえてくるイサナの声と口振りは、自ら提示した事実が判断の根拠に足るか否かは人による、とでも言いたげ。
イサナの立ち位置を「サポートキャラ」と認識している私は、ある程度の裏取りが取れているなら「そういうこと」なのだろうと、深く考えもせず納得した。
異能の存在を認知しておきながら、化物の実在を否定したのでは理屈に合わない。
ファンタジーとつければだいたい「なんでもあり」だと、他ならぬ私自身が認識している限り、異能がありなら化物がいても、それを日本刀で斬り殺すイケメンがいても不思議はなかった。
「イタリアンバール行く?」
「ここまで来て、か? 面倒だろ」
見事な手の平返しを鼻で笑ったアラヤは、私の手を取り無理矢理に腕を組むよう小脇に挟むと、すぐそこのファミレスへと向かって歩き出す。
「近くにいて大丈夫?」
「やばくなったら逃げればいいだろ」
「えー……」
それでいいのか、ガーディアン。
アラヤの危なげない運転で、ファミレスに似つかわしくないことこの上ない高級車が車もまばらな駐車場へ滑り込む。
「パトカー?」
サイレンの音もなく回転する赤色灯に気付いたのは、坂道の途中という立地のせいで、道より高い場所にある駐車場へ入ってしまってからだった。
くるくると回る光源は、ファミレスではなく、隣接する病院の駐車場に。
角の駐車スペースへ落ち着いた車から降りて様子を窺うと、物々しい台数のパトカーが、救急対応もしていないような個人経営の病院へ詰めかけているのが見て取れた。
「なんだろ。事件?」
「飯はいいのか?」
運転席から助手席側に回ってきたアラヤが、私が開けっぱなしにしていた跳ね上げドアを下ろして車を施錠する。
「食べる。……けど、気にならないの?」
「中の様子なら、ネットで生中継されてるぞ」
「えっ」
そんな馬鹿なと振り返った私のポケットから、アラヤはスマートフォンを引っ張り出して。暗転したディスプレイをこつこつ、ノックするよう軽く叩いた。
「イサナ、ミコトの端末に映像回せ」
〈かしこまりー〉
アラヤの指示に応えるイサナのあからさまな棒読み声は、スマートフォンのスピーカーから。
バックライトを点灯させたスマートフォンのロックが独りでに解除されると、ホーム画面が表示されて間髪入れず、見慣れた動画サイトのアプリが立ち上がる。
「NicoTubeLive……」
端末の持ち主である私が指一本触れないまま再生が始まった動画は、プレミア公開でもない正真正銘の生放送。
「ほんとに隣の映像なの?」
六インチそこそこしかない画面の向こうでは、よくできた映像作品としか思えないファンタジーな光景が繰り広げられていた。
「どうなんだ? イサナ」
〈放送の冒頭で映り込んだ背景と周辺の地理情報は一致しています〉
スピーカー越しに聞こえてくるイサナの声と口振りは、自ら提示した事実が判断の根拠に足るか否かは人による、とでも言いたげ。
イサナの立ち位置を「サポートキャラ」と認識している私は、ある程度の裏取りが取れているなら「そういうこと」なのだろうと、深く考えもせず納得した。
異能の存在を認知しておきながら、化物の実在を否定したのでは理屈に合わない。
ファンタジーとつければだいたい「なんでもあり」だと、他ならぬ私自身が認識している限り、異能がありなら化物がいても、それを日本刀で斬り殺すイケメンがいても不思議はなかった。
「イタリアンバール行く?」
「ここまで来て、か? 面倒だろ」
見事な手の平返しを鼻で笑ったアラヤは、私の手を取り無理矢理に腕を組むよう小脇に挟むと、すぐそこのファミレスへと向かって歩き出す。
「近くにいて大丈夫?」
「やばくなったら逃げればいいだろ」
「えー……」
それでいいのか、ガーディアン。
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