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EP01「女魔術師、奴隷を買う」
SCENE-021 >> 博愛には程遠い
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満足に息が吸えなくて苦しいのと、締め上げられる物理的な痛みでだんだん朦朧としてきた意識を、ばたんっ、とけたたましく開いた扉の音が呼び戻す。
「クラカ!」
お節介な精霊が知らせでもしたのだろう。ハイメが部屋に飛び込んでくると、私のことを締め上げていた腕の力が不意に緩んだ。
「ぁっ……」
喉がひゅっ、と音を立てるほどの勢いで流れ込んできた空気に、私は思わず噎せ返ってしまう。
げほげほと咳をするたび、涙が出るほど体が痛くて堪らなかったけど。咳が治まるにつれ、骨が軋むような痛みは少しずつ治まっていった。
酸欠なのと、咳のしすぎで疲れてしまって。噎せているうちに背中が丸まり、半ば起き上がりかけていた体から力を抜くと、ぐったりもたれかかった私の肩を、ラルの手が怖々と掴んでくる。
首環を壊されたくらいで我を忘れるような奴隷のくせに、私のことをやんわり引き離そうとしてきたから。それを咎めるようにペシリと叩いて、弾かれたよう肩から離れていった手を捕まえた。
「クラカ……」
声をかけられ、顔を上げると。ベッドのすぐ傍まで来ていたハイメが心配で堪らそうに私の様子を窺っていた。
こんなことで私がどうにかなるはずないと、わかっているくせに。
「呼んでないわよ」
私が思いっきり不機嫌な声を出すと、ハイメも私に負けないくらいの顰めっ面で、これでもかと重苦しい息を吐き出した。
「許しも得ず部屋へ入ったことは謝ります。ですが……」
ハイメの物言いたげな視線が、ラルに体を預けている私と、大人しく下敷きにされているラルの間を往復する。
気怠い体に鞭打ってずり上がった私が見るな、とばかりラルの頭を抱え込んでその視線を遮れば、察しのいいエルフは貴族を相手に平民がするよう控えめに目を伏せ、ラルとその上に乗っかっている私から、あからさまにならない程度にそっと視線を外した。
「そんなことをしても、ただ苦しいだけですよ」
それでも止まらないお小言に、うんざりと息を吐く。
「性善説の権化みたいな『精霊上がり』の価値観を押しつけないでよ。その濁った目には私が砂糖とスパイスと素敵な何かでできてるふわふわした女の子に見えてるのかもしれないけどね、現実はそんなに甘くはないの」
ただ苦しいだけかは私が決めることだ。
「悪い魔女に捕まったかわいそうな奴隷を助けたいっていうんじゃないなら、もう出て行って」
「クラカ……」
そっぽを向いた私が対話すら拒否する姿勢を崩さないでいると。そのうち根負けしたハイメは、重い体を引きずるような足取りで、最初から招かれてもいない部屋を出て行った。
「どうか、ご自愛ください。……誰も、あなたが苦しむことなど望んではいないのですから」
最後にそんな捨て台詞を残して。
「クラカ!」
お節介な精霊が知らせでもしたのだろう。ハイメが部屋に飛び込んでくると、私のことを締め上げていた腕の力が不意に緩んだ。
「ぁっ……」
喉がひゅっ、と音を立てるほどの勢いで流れ込んできた空気に、私は思わず噎せ返ってしまう。
げほげほと咳をするたび、涙が出るほど体が痛くて堪らなかったけど。咳が治まるにつれ、骨が軋むような痛みは少しずつ治まっていった。
酸欠なのと、咳のしすぎで疲れてしまって。噎せているうちに背中が丸まり、半ば起き上がりかけていた体から力を抜くと、ぐったりもたれかかった私の肩を、ラルの手が怖々と掴んでくる。
首環を壊されたくらいで我を忘れるような奴隷のくせに、私のことをやんわり引き離そうとしてきたから。それを咎めるようにペシリと叩いて、弾かれたよう肩から離れていった手を捕まえた。
「クラカ……」
声をかけられ、顔を上げると。ベッドのすぐ傍まで来ていたハイメが心配で堪らそうに私の様子を窺っていた。
こんなことで私がどうにかなるはずないと、わかっているくせに。
「呼んでないわよ」
私が思いっきり不機嫌な声を出すと、ハイメも私に負けないくらいの顰めっ面で、これでもかと重苦しい息を吐き出した。
「許しも得ず部屋へ入ったことは謝ります。ですが……」
ハイメの物言いたげな視線が、ラルに体を預けている私と、大人しく下敷きにされているラルの間を往復する。
気怠い体に鞭打ってずり上がった私が見るな、とばかりラルの頭を抱え込んでその視線を遮れば、察しのいいエルフは貴族を相手に平民がするよう控えめに目を伏せ、ラルとその上に乗っかっている私から、あからさまにならない程度にそっと視線を外した。
「そんなことをしても、ただ苦しいだけですよ」
それでも止まらないお小言に、うんざりと息を吐く。
「性善説の権化みたいな『精霊上がり』の価値観を押しつけないでよ。その濁った目には私が砂糖とスパイスと素敵な何かでできてるふわふわした女の子に見えてるのかもしれないけどね、現実はそんなに甘くはないの」
ただ苦しいだけかは私が決めることだ。
「悪い魔女に捕まったかわいそうな奴隷を助けたいっていうんじゃないなら、もう出て行って」
「クラカ……」
そっぽを向いた私が対話すら拒否する姿勢を崩さないでいると。そのうち根負けしたハイメは、重い体を引きずるような足取りで、最初から招かれてもいない部屋を出て行った。
「どうか、ご自愛ください。……誰も、あなたが苦しむことなど望んではいないのですから」
最後にそんな捨て台詞を残して。
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