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天使なメイドと悪魔なメイド
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伯爵家のお坊ちゃまであるドコニ・デモイルの朝は早い。
「坊ちゃま、おはようございます」
カーテンが開かれ、日の光が差し込む。
……まぶしい。
転生してから1日目の朝がきた。
メイドに身の回りの世話をしてもらうのは体が慣れているので違和感はないが、やはり前世の記憶のせいなのか落ち着かない。メイドの名前はアンだ。俺よりも5歳ほど年上の15歳。オレンジ色の派手な髪をしているが優し気なお姉さんメイドで2年前ほどからドコニ・デモイルの世話をしてくれている。
そわそわそわそわ。
「今日もラスゴイ公爵家に行かれるのですか?」
「うん。モラハ様が昨日、鼻血出して体調悪くしたからお見舞いを兼ねて顔を売ってくるんだ」
俺が! ぶん殴られて! 鼻血を出した被害者だけどな!!!
加害者のお見舞いに行くなんて馬鹿げているだろ。でも、これがまかり通る世界なんだぜ。貴族社会はどこまでも鬼仕様だ。
それに、モラハ・ラスゴイの側近候補に決まっている可能性が高いとはいえ、父親の表情を見て推測をしたにすぎない。本当に側近になれるのか確かめてこようと思う。近くで様子が見れないとなると今後モラハ・ラスゴイの死を回避するという目的のある俺が困るからな。
「ドコニ様もお顔に青あざができていらっしゃるのですから、無理はなさらないでください。替えの貼り薬をご用意いたしますね」
なんという優しさだ! 天使か!!?
この世界に魔物や魔王はいても天使はいない。エルフはいるだろうけど。あ、なんか異世界っぽいな。この世界でもエルフなんて本でしか知らないけど。
◆
ヤツタネ国は三大大陸のうちのひとつ、ツラライ大陸にある真ん中の真ん中に位置する国で、三大大陸の中でもトップレベルの魔法を学ぶことができる学園を運営しており、四方八方を国に囲まれている貿易国家でもある。
そして、ヤツタネ国の中心あたりにある街ココヤバは、王都の南にある街で活気があり豊かな街並みをしている。気温は暑くもなく、寒くもない過ごしやすい気候で日本で言えば春がずっと続いているような地域になる。
目に優しい石造りの建物が立ち並び、石畳の道は水はけをよく考えられているのか水が溜まることはなく衛生的だ。
祭りは年に2度開催され、多くの観光客が訪れる街でもある。
俺はそんな街を馬車に揺られながら、モラハ・ラスゴイの家へ向かっていた。
その途中で見かけた一人のメイド。
モラハ・ラスゴイにぶん殴られたときに俺を冷めた目で見ていたメイドだ。買い物の途中なのかカゴを片腕にかけて歩いていた。
ラスゴイ公爵家に行くついでだからとそのメイドに声をかける。
「結構です」
すげなく断られた。しかし、俺も声をかけた手前、引き下がりづらい。
「ほら、重いだろ? 一緒に乗って行ったらいいんじゃないかな?」
「お心遣いはとても嬉しいのですが、デモイル様の馬車に乗って戻っては私が叱られてしまいます」
メイドの顔には『迷惑』という言葉が書いてある気がする。
「あ、そうだよね。怒られちゃうのはまずいよね。じゃぁ、カゴだけでも持っていくよ」
「結構です」
鉄壁のガードを見せるメイドに俺は心が折れそうになった。
「あ、うん。わかった。気をつけて帰るんだよ」
「はい。ご心配頂き誠にありがとうございます」
無表情を見せるメイドは丁寧に頭を下げてラスゴイ公爵家がある方向とは別の方向へと去っていった。
忠実なんだなと俺は遠い目をしてメイドの着るフリルをじっと見送るしかできなかった。
「坊ちゃま、おはようございます」
カーテンが開かれ、日の光が差し込む。
……まぶしい。
転生してから1日目の朝がきた。
メイドに身の回りの世話をしてもらうのは体が慣れているので違和感はないが、やはり前世の記憶のせいなのか落ち着かない。メイドの名前はアンだ。俺よりも5歳ほど年上の15歳。オレンジ色の派手な髪をしているが優し気なお姉さんメイドで2年前ほどからドコニ・デモイルの世話をしてくれている。
そわそわそわそわ。
「今日もラスゴイ公爵家に行かれるのですか?」
「うん。モラハ様が昨日、鼻血出して体調悪くしたからお見舞いを兼ねて顔を売ってくるんだ」
俺が! ぶん殴られて! 鼻血を出した被害者だけどな!!!
加害者のお見舞いに行くなんて馬鹿げているだろ。でも、これがまかり通る世界なんだぜ。貴族社会はどこまでも鬼仕様だ。
それに、モラハ・ラスゴイの側近候補に決まっている可能性が高いとはいえ、父親の表情を見て推測をしたにすぎない。本当に側近になれるのか確かめてこようと思う。近くで様子が見れないとなると今後モラハ・ラスゴイの死を回避するという目的のある俺が困るからな。
「ドコニ様もお顔に青あざができていらっしゃるのですから、無理はなさらないでください。替えの貼り薬をご用意いたしますね」
なんという優しさだ! 天使か!!?
この世界に魔物や魔王はいても天使はいない。エルフはいるだろうけど。あ、なんか異世界っぽいな。この世界でもエルフなんて本でしか知らないけど。
◆
ヤツタネ国は三大大陸のうちのひとつ、ツラライ大陸にある真ん中の真ん中に位置する国で、三大大陸の中でもトップレベルの魔法を学ぶことができる学園を運営しており、四方八方を国に囲まれている貿易国家でもある。
そして、ヤツタネ国の中心あたりにある街ココヤバは、王都の南にある街で活気があり豊かな街並みをしている。気温は暑くもなく、寒くもない過ごしやすい気候で日本で言えば春がずっと続いているような地域になる。
目に優しい石造りの建物が立ち並び、石畳の道は水はけをよく考えられているのか水が溜まることはなく衛生的だ。
祭りは年に2度開催され、多くの観光客が訪れる街でもある。
俺はそんな街を馬車に揺られながら、モラハ・ラスゴイの家へ向かっていた。
その途中で見かけた一人のメイド。
モラハ・ラスゴイにぶん殴られたときに俺を冷めた目で見ていたメイドだ。買い物の途中なのかカゴを片腕にかけて歩いていた。
ラスゴイ公爵家に行くついでだからとそのメイドに声をかける。
「結構です」
すげなく断られた。しかし、俺も声をかけた手前、引き下がりづらい。
「ほら、重いだろ? 一緒に乗って行ったらいいんじゃないかな?」
「お心遣いはとても嬉しいのですが、デモイル様の馬車に乗って戻っては私が叱られてしまいます」
メイドの顔には『迷惑』という言葉が書いてある気がする。
「あ、そうだよね。怒られちゃうのはまずいよね。じゃぁ、カゴだけでも持っていくよ」
「結構です」
鉄壁のガードを見せるメイドに俺は心が折れそうになった。
「あ、うん。わかった。気をつけて帰るんだよ」
「はい。ご心配頂き誠にありがとうございます」
無表情を見せるメイドは丁寧に頭を下げてラスゴイ公爵家がある方向とは別の方向へと去っていった。
忠実なんだなと俺は遠い目をしてメイドの着るフリルをじっと見送るしかできなかった。
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