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「貴族学園らぶみーどぅー」を読むことになったわけ
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なぜ俺がくそ小説「貴族学園らぶみーどぅー」を読むことになったのか、その理由を挙げるとすれば、間違いなく姉の存在が大きいだろう。「腐女子」という言葉を一度は聞いたことがあるだろうか。その得体の知れない存在が、実は俺の身近にいた。
そう、俺の姉だ。
シューティングゲームをプレイしている俺の隣で、姉は何度目かの「貴族学園らぶみーどぅー」を朗読している。
いや、実は一度だけ俺も試みたことがあるのだ。「あの、お姉さま、申し訳ないのですが、朗読するなら部屋に戻ってもらえませんか……」と、小声でお願いした。すると、床に寝転がっていた姉の両足が、俺の背中にものすごい勢いで蹴りを入れてきた。
画面では弾幕を放つ敵を前にして華麗に回避していた俺だが、さすがにゲームでは避けられる弾幕も、現実で避けるのは不可能。
「あだだだだだだだだだ!」
しかも、高速蹴りで返答してくる姉など、他にいるだろうか。いたとしても、きっとごくわずかだろう。
そんな姉は、百合だろうがBLだろうが、自分が気に入ったものであればなんでも読む。読むと決めたら、ただひたすら読む。それだけだ。
純粋に「頭がおかしい」と言ったらぶっ飛ばされるに違いないが、潔いほどの変態だと思う。
「あんたは観客として聞いていればいいのよ。ところで、いま読んだ小説に登場する魔王ってどう思う?」
「魔王? やることが豪快なのに、おねぇ言葉なのが気になる」
「そうよね。なんでかしら」
しらんがな。そういう設定なんだろうよ。
「あと銀髪のオールバックで、口にピアスしてて、タトゥーを入れてるところが怖い」
魔王の外見的な特徴として、そう説明があったのだ。
「そうかしら? 外見は想像でしかないけど、袖なし着てそうね」
しらんがな。カチコミかけそうな兄ちゃんってだけだろ。古めかしい黒いマントって書いてあったからドラキュラっぽいんじゃないかと、って本当にどうでもいいわ。
姉は魔王のイラストがあったら、よかったのになぁと呟いて朗読に戻った。
俺にとっては、小説の中の魔王よりも、姉の方が魔王であり、ラスボスのような存在だ。
今思えば女神様と同類で、ちょっとというかかなりやばい部類だろうけどな。
◆
この世界は女神様が創った世界であり、俺はその世界に転生させられたわけだが、その世界の元になったのが、「貴族学園らぶみーどぅー」という小説である。姉が朗読してくれていたおかげで、大体のストーリーは把握している。これがいいことなのか悪いことなのかはわからないが。
タイトルの通り、物語の舞台は貴族が通う学園だ。主人公は光魔法の才能を見出されて魔法学園にやってきた双子。彼らは庶民の出身であるため、貴族社会のマナーを知らない。一方、学園の大半は貴族の子息たちで構成されており、いさかいが起きないよう、双子にマナーを教える役割が必要とされた。そこで手を挙げたのが、公爵令息のモラハ・ラスゴイだった。
モラハは主人公たちに貴族としてのマナーを教えるため、放課後に一緒に過ごすことになる。しかし、彼は物語の悪役である。当然ながら、庶民の相手などするつもりはなく、双子が学園を自主退学するよう嫌がらせを始める。そんな中、双子を救うのが、同じく学園に通うイケメンや美少女たちだ。彼らと親交を深めながら問題を解決し、魔物と戦い、最終的には「悪」とされる魔王を倒して物語はエンディングを迎える。
学園ものなのに、なぜ魔王を倒す展開になるのかといえば、それは剣と魔法の世界であり、「選ばれし者」感を出すための設定だろう。それが悪いわけではないが、俺がこの小説を「くそ小説」と呼ぶ理由は他にある。
タイトルから察したかもしれないが、「貴族学園らぶみーどぅー」、つまり「愛してくれ」という物語のテーマがある。この小説の主人公である双子は、姉が百合プレイヤーで、弟がBLプレイヤーだ。周囲のイケメンや美少女たちが愛を知らないため、双子が庶民の感覚で「愛とは何か」「優しさとは何か」を教えていくという展開になる。婚約者や政略結婚が当然視される貴族社会で育った彼らにとって、恋愛はさぞ斬新な感覚だろう。同性という特殊設定もあるし。
だからこそ、主人公依存が生まれてしまう。どこぞの始祖よろしく、彼らは双子を盲信し、まるで魅了でもかけられているのではないかと思うほどに付き従う。その結果、双子をいじめていたモラハ・ラスゴイや、その取り巻きである俺ドコニ・デモイル、クウ・キニナレは、双子が魔物と戦っている間に事故と見せかけて陰で「ざまぁ」されることになるのだ。
結局、なんの小説なのかと問われれば学園もので、百合とBLの恋愛ものがぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだドロドロドロドロドロドロドロと続き、魔物や魔王を倒す冒険要素がちょっとばかし入ったストーリーってこと。
だからこそ、姉が大好きなストーリーだとしても、冒険ものが好きな俺にとっては、恋愛ものがぐだぐだドロドロが長すぎて辟易するからこその「くそ小説」評価である。
なにが言いたいかって言うと学園ものより、恋愛ものじゃね?って思ったわけだ。
そう、俺の姉だ。
シューティングゲームをプレイしている俺の隣で、姉は何度目かの「貴族学園らぶみーどぅー」を朗読している。
いや、実は一度だけ俺も試みたことがあるのだ。「あの、お姉さま、申し訳ないのですが、朗読するなら部屋に戻ってもらえませんか……」と、小声でお願いした。すると、床に寝転がっていた姉の両足が、俺の背中にものすごい勢いで蹴りを入れてきた。
画面では弾幕を放つ敵を前にして華麗に回避していた俺だが、さすがにゲームでは避けられる弾幕も、現実で避けるのは不可能。
「あだだだだだだだだだ!」
しかも、高速蹴りで返答してくる姉など、他にいるだろうか。いたとしても、きっとごくわずかだろう。
そんな姉は、百合だろうがBLだろうが、自分が気に入ったものであればなんでも読む。読むと決めたら、ただひたすら読む。それだけだ。
純粋に「頭がおかしい」と言ったらぶっ飛ばされるに違いないが、潔いほどの変態だと思う。
「あんたは観客として聞いていればいいのよ。ところで、いま読んだ小説に登場する魔王ってどう思う?」
「魔王? やることが豪快なのに、おねぇ言葉なのが気になる」
「そうよね。なんでかしら」
しらんがな。そういう設定なんだろうよ。
「あと銀髪のオールバックで、口にピアスしてて、タトゥーを入れてるところが怖い」
魔王の外見的な特徴として、そう説明があったのだ。
「そうかしら? 外見は想像でしかないけど、袖なし着てそうね」
しらんがな。カチコミかけそうな兄ちゃんってだけだろ。古めかしい黒いマントって書いてあったからドラキュラっぽいんじゃないかと、って本当にどうでもいいわ。
姉は魔王のイラストがあったら、よかったのになぁと呟いて朗読に戻った。
俺にとっては、小説の中の魔王よりも、姉の方が魔王であり、ラスボスのような存在だ。
今思えば女神様と同類で、ちょっとというかかなりやばい部類だろうけどな。
◆
この世界は女神様が創った世界であり、俺はその世界に転生させられたわけだが、その世界の元になったのが、「貴族学園らぶみーどぅー」という小説である。姉が朗読してくれていたおかげで、大体のストーリーは把握している。これがいいことなのか悪いことなのかはわからないが。
タイトルの通り、物語の舞台は貴族が通う学園だ。主人公は光魔法の才能を見出されて魔法学園にやってきた双子。彼らは庶民の出身であるため、貴族社会のマナーを知らない。一方、学園の大半は貴族の子息たちで構成されており、いさかいが起きないよう、双子にマナーを教える役割が必要とされた。そこで手を挙げたのが、公爵令息のモラハ・ラスゴイだった。
モラハは主人公たちに貴族としてのマナーを教えるため、放課後に一緒に過ごすことになる。しかし、彼は物語の悪役である。当然ながら、庶民の相手などするつもりはなく、双子が学園を自主退学するよう嫌がらせを始める。そんな中、双子を救うのが、同じく学園に通うイケメンや美少女たちだ。彼らと親交を深めながら問題を解決し、魔物と戦い、最終的には「悪」とされる魔王を倒して物語はエンディングを迎える。
学園ものなのに、なぜ魔王を倒す展開になるのかといえば、それは剣と魔法の世界であり、「選ばれし者」感を出すための設定だろう。それが悪いわけではないが、俺がこの小説を「くそ小説」と呼ぶ理由は他にある。
タイトルから察したかもしれないが、「貴族学園らぶみーどぅー」、つまり「愛してくれ」という物語のテーマがある。この小説の主人公である双子は、姉が百合プレイヤーで、弟がBLプレイヤーだ。周囲のイケメンや美少女たちが愛を知らないため、双子が庶民の感覚で「愛とは何か」「優しさとは何か」を教えていくという展開になる。婚約者や政略結婚が当然視される貴族社会で育った彼らにとって、恋愛はさぞ斬新な感覚だろう。同性という特殊設定もあるし。
だからこそ、主人公依存が生まれてしまう。どこぞの始祖よろしく、彼らは双子を盲信し、まるで魅了でもかけられているのではないかと思うほどに付き従う。その結果、双子をいじめていたモラハ・ラスゴイや、その取り巻きである俺ドコニ・デモイル、クウ・キニナレは、双子が魔物と戦っている間に事故と見せかけて陰で「ざまぁ」されることになるのだ。
結局、なんの小説なのかと問われれば学園もので、百合とBLの恋愛ものがぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだドロドロドロドロドロドロドロと続き、魔物や魔王を倒す冒険要素がちょっとばかし入ったストーリーってこと。
だからこそ、姉が大好きなストーリーだとしても、冒険ものが好きな俺にとっては、恋愛ものがぐだぐだドロドロが長すぎて辟易するからこその「くそ小説」評価である。
なにが言いたいかって言うと学園ものより、恋愛ものじゃね?って思ったわけだ。
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