10 / 25
夜の剣戟
しおりを挟む
10歳の子供相手に魅了や幻覚を使ってくるメイドを前にして、モラハ様を待っている俺はなんとかメイドとの会話を成立させようと努めていた。
「あの、今日はいい天気ですね」
「そうですね」
話が続かんな。そうだ話を変えよう。
「モラハ様ってどういう方ですか? お稽古を頑張っているようですが」
「えぇ、えぇ、昨日は頭に血が上ってしまったのか鼻血をだされたのに、今日も休むことなくお稽古をがんばっていらっしゃいます。モラハ様は誤解をされやすいのです。それに」
え? まだ話が続くだと……?! あんなに口が数が少なかったのにモラハ様のこととなると饒舌になるのかよ!
メイドから紡がれる言葉はとまらない。
「お心が優しく繊細でいらっしゃいますので、……モラハ様に無礼を働く輩はわたくしがしっかりと観察し、ふさわしい御仁か見極めさせていただいております」
そういって俺に再度強い視線を送ってくる。ぞわぞわした感覚が再び襲ってきた。
>『魅了無効』を取得しました。
>『幻覚無効』を取得しました。
「……」
また魅了と幻覚をかけていたらしい。このメイド、もう頭おかしい人決定だろ。この世界こんなやつらでいっぱいなのか? スキルがあがったのは嬉しいけどさ。
特定の効果無効は耐性の上位スキルだろうけど、すぐにスキルを取得できるのはレベルがないことと関係しているのだろうか。うん、わからん。
「聞いておりますか?」
「え、うん。聞いてますよ。モラハ様のたゆまぬ努力されるお姿は素晴らしいと思います」
「えぇ、えぇ、そうでしょう! デモイル様はわかっていらっしゃる。……それでは今日はお帰りにならず、モラハ様とお過ごしくださいませ。決してモラハ様を部屋から外に出してはなりません。いいですか? ご友人としてモラハ様と夜は部屋でお話をしてくださいませ」
「……」
え? なんでそうなる? 魅了にかかったと思っているのか? それとも今日は何かあるのか?
こんな調子で毎回魅了をかけたり、幻覚かけてモラハ様の行動を制限させているのだろうか。っていうか、俺はどうすりゃいいんだろ。とりあえず、魅了と幻覚にかかったふりをしておけば正解か?
「わかりました」
そう俺が言うと、満足そうにメイドは頷いた。
「では、モラハ様がいらっしゃる部屋へ行きなさい。デモイル伯爵家には使いをだしておきます」
俺がガゼボから出て邸へ向かう姿を見ると、メイドはその場から立ち去ってしまった。
えーと、邸のどこへ行けばいいんだっけ? わかんねぇよ!
豪華な装飾品が飾られた邸内をウロウロしていると廊下の正面からモラハ様がやってきた。
「また、人形みたいな状態できやがったな。俺と話なんてできないくせに近寄ってくるんじゃねぇ!」
「いやいや、ちょっとモラハ様。人形じゃありませんよ、俺はドコニ・デモイルです。昨日は大変失礼いたしました。体調はいかがですか?」
「……ん? なんか今日はうつろな目をしていないな。頭は大丈夫か?」
首を捻るモラハ様に俺の方こそ、頭は大丈夫か?と聞きたい。
「もちろん、大丈夫ですよ。モラハ様のお家で今日はお泊りすることになりました」
「そ、そうなのか? 俺と一緒に遊ぶんだな?」
「なにして遊びましょうか」
「そうだな。木馬遊び、ボールゲーム、チェス、クエイツ、タッグ、鷹狩り……」
ドコニ・デモイルの知識をもってしても、木馬遊びとチェスくらいしかわからなかった。
「ボールゲームってなんですか?」
「ボールを蹴って遊ぶんだ。そんなことも知らないのか?」
「へぇ、物知りですね。じゃぁクエイツとタッグは?」
「クエイツは、輪っかを的に向かって投げるゲームで、タッグは相手を捕まえるゲームだ。捕まえたら交代だな」
「外で遊ぶようなものは今日はやめておきましょう。モラハ様のお部屋でできるゲームはチェスですかね?」
「いい天気なのに外で遊ばないのか?」
「もう夕方ですし、夜はたくさん遊べますよ。メイドの方が夕食を運んでくれるそうです」
モラハ様の両親は昨日のパーティーが終わるとすぐに城の近くにある邸へと帰ってしまったそうで、この邸にはいないと聞いている。
「そうか。時々お前のようなやつが俺と一緒に過ごそうとするんだが、話を聞いているんだか、人形みたいで気味が悪かったんだよな。お前は普通のやつでよかったよ」
あのメイドは魅了と幻覚で人をモラハ様へ送り込んでいたらしい。なにそれ怖い。なんのためにしているんだかもわからないし、やっぱり怖い。
ベッドの上でカードゲームをして遊んでいたが、夜遅くなると遊び疲れたのかモラハ様はベッドの上で丸まって寝てしまった。でぶが丸まって寝た姿を見ても可愛くはない。見る人が見れば、だんご虫みたいで可愛いのかもしれないが。
そう思っていると、外から剣戟の音がかすかに聞こえた。
誰かがラスゴイ公爵家の庭で戦っているようだった。
「あの、今日はいい天気ですね」
「そうですね」
話が続かんな。そうだ話を変えよう。
「モラハ様ってどういう方ですか? お稽古を頑張っているようですが」
「えぇ、えぇ、昨日は頭に血が上ってしまったのか鼻血をだされたのに、今日も休むことなくお稽古をがんばっていらっしゃいます。モラハ様は誤解をされやすいのです。それに」
え? まだ話が続くだと……?! あんなに口が数が少なかったのにモラハ様のこととなると饒舌になるのかよ!
メイドから紡がれる言葉はとまらない。
「お心が優しく繊細でいらっしゃいますので、……モラハ様に無礼を働く輩はわたくしがしっかりと観察し、ふさわしい御仁か見極めさせていただいております」
そういって俺に再度強い視線を送ってくる。ぞわぞわした感覚が再び襲ってきた。
>『魅了無効』を取得しました。
>『幻覚無効』を取得しました。
「……」
また魅了と幻覚をかけていたらしい。このメイド、もう頭おかしい人決定だろ。この世界こんなやつらでいっぱいなのか? スキルがあがったのは嬉しいけどさ。
特定の効果無効は耐性の上位スキルだろうけど、すぐにスキルを取得できるのはレベルがないことと関係しているのだろうか。うん、わからん。
「聞いておりますか?」
「え、うん。聞いてますよ。モラハ様のたゆまぬ努力されるお姿は素晴らしいと思います」
「えぇ、えぇ、そうでしょう! デモイル様はわかっていらっしゃる。……それでは今日はお帰りにならず、モラハ様とお過ごしくださいませ。決してモラハ様を部屋から外に出してはなりません。いいですか? ご友人としてモラハ様と夜は部屋でお話をしてくださいませ」
「……」
え? なんでそうなる? 魅了にかかったと思っているのか? それとも今日は何かあるのか?
こんな調子で毎回魅了をかけたり、幻覚かけてモラハ様の行動を制限させているのだろうか。っていうか、俺はどうすりゃいいんだろ。とりあえず、魅了と幻覚にかかったふりをしておけば正解か?
「わかりました」
そう俺が言うと、満足そうにメイドは頷いた。
「では、モラハ様がいらっしゃる部屋へ行きなさい。デモイル伯爵家には使いをだしておきます」
俺がガゼボから出て邸へ向かう姿を見ると、メイドはその場から立ち去ってしまった。
えーと、邸のどこへ行けばいいんだっけ? わかんねぇよ!
豪華な装飾品が飾られた邸内をウロウロしていると廊下の正面からモラハ様がやってきた。
「また、人形みたいな状態できやがったな。俺と話なんてできないくせに近寄ってくるんじゃねぇ!」
「いやいや、ちょっとモラハ様。人形じゃありませんよ、俺はドコニ・デモイルです。昨日は大変失礼いたしました。体調はいかがですか?」
「……ん? なんか今日はうつろな目をしていないな。頭は大丈夫か?」
首を捻るモラハ様に俺の方こそ、頭は大丈夫か?と聞きたい。
「もちろん、大丈夫ですよ。モラハ様のお家で今日はお泊りすることになりました」
「そ、そうなのか? 俺と一緒に遊ぶんだな?」
「なにして遊びましょうか」
「そうだな。木馬遊び、ボールゲーム、チェス、クエイツ、タッグ、鷹狩り……」
ドコニ・デモイルの知識をもってしても、木馬遊びとチェスくらいしかわからなかった。
「ボールゲームってなんですか?」
「ボールを蹴って遊ぶんだ。そんなことも知らないのか?」
「へぇ、物知りですね。じゃぁクエイツとタッグは?」
「クエイツは、輪っかを的に向かって投げるゲームで、タッグは相手を捕まえるゲームだ。捕まえたら交代だな」
「外で遊ぶようなものは今日はやめておきましょう。モラハ様のお部屋でできるゲームはチェスですかね?」
「いい天気なのに外で遊ばないのか?」
「もう夕方ですし、夜はたくさん遊べますよ。メイドの方が夕食を運んでくれるそうです」
モラハ様の両親は昨日のパーティーが終わるとすぐに城の近くにある邸へと帰ってしまったそうで、この邸にはいないと聞いている。
「そうか。時々お前のようなやつが俺と一緒に過ごそうとするんだが、話を聞いているんだか、人形みたいで気味が悪かったんだよな。お前は普通のやつでよかったよ」
あのメイドは魅了と幻覚で人をモラハ様へ送り込んでいたらしい。なにそれ怖い。なんのためにしているんだかもわからないし、やっぱり怖い。
ベッドの上でカードゲームをして遊んでいたが、夜遅くなると遊び疲れたのかモラハ様はベッドの上で丸まって寝てしまった。でぶが丸まって寝た姿を見ても可愛くはない。見る人が見れば、だんご虫みたいで可愛いのかもしれないが。
そう思っていると、外から剣戟の音がかすかに聞こえた。
誰かがラスゴイ公爵家の庭で戦っているようだった。
10
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる