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魔王がでたぞー!(賢者/レンジャー)
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なぜだ。なぜこうなった?!
目の前にいる魔王を俺は凝視しながら迎撃せざるをえない状況に泣きたくなっていた。
◇
少し時間は遡り……。
ドラゴンに運ばれている俺とモラハ様は空の散歩をこれでもかと堪能させられていた。
そもそも連れ去られる理由もわからないし、終着点もわからないのでそろそろ自分で降車場所を決めないとと考えているところだった。
「ジョブ変更:賢者」
『我即神也……、我守護する者也、我魔法防壁を築く者也』
俺はぼそぼそとお決まりの神もどきなセリフを呟いていく。『守護』は物理攻撃やダメージを軽減し、『魔法防壁』は魔法によるダメージを軽減だ。ダメージが対象指定だから、攻撃魔法を放ってもこちらへの被害はないと思うものの念のためかけておく。
『雷帝の眷属の力、九天雷……』
唱えた瞬間ドラゴンに九つの雷が立て続けに落ちた。羽ばたきが止まり重力で落下する。『九天雷』は言葉の通り天から雷を九つ対象に落としダメージを与える魔法だ。
黒焦げになったドラゴンは俺たちの縄を足に引っ掛けたまま急降下していく。
「な、なんどぁぁああああああああっ?!」
モラハ様が叫びながら俺の背骨を折る勢いで抱きしめてきた。
「ぐふぉぉっ!!」
ドラゴンに殺される前にお前に殺されるわっ! 力加減考えろやぼけぇっ!
俺は血反吐を吐きながら知恵の輪を解くように縄をはずした。
賢者のジョブを使用している間は空中浮遊ができるようなので、落下して地面に打ち付けられることはないはずだ。
案の定、ドラゴンが墜落してくのを見ながら俺たちはゆっくりと降下していく。
地面につくと安心したのかモラハ様は気を失ってしまったが、おとなしくなったのでよかったと思う。
「ジョブ変更:ドコニ・デモイル!」
俺は元に戻り、周囲を確認する。森の中ではあるがどこの森なのかわからない。なにか最適なジョブはないだろうか。
探していくと『レンジャー』というジョブが、野外での探索やサバイバルに優れたスキルをもっているようだ。へぇ、追跡や偵察、動物との共闘などが含まれている……か。
「ジョブ変更:レンジャー!」
『わいはレンジャー! チャレンジャー! アドベンチャー!』
(……)
誰も見てないよな。こんな森の中だし。モラハ様を見れば地面に転がって意識はないことを確認する。見られていないようだとホッと胸をなでおろしたところに「ぷっ」と吹きだすような音がした。
「なにそれ?」
低い声だ。男が一人腕を胸の前で組みながら木にもたれてこちらを見ている。
目の前の男は、黒いフード付きのパーカーにラフな黒いズボンをはいており、フードをかぶっているため口元までしか見えない。唇には銀のピアスが3つ見えた。
この世界にパーカーなんてあるんだー。口にピアスとか、斬新だわー。
っていうか、こんな深い森に人っているんだな。なんか森の民って感じもしないんだけどな。むしろ前世で渋谷とかにいそうな人っぽい。
「えーと?」
「あたし迷子なのよね、助けてくれない?」
「はい?」
あ、彼の後ろに大きな影ができる。ブラックグリズリーという黒い熊が手を持ち上げて振り下ろそうとしているところだった。
男は回し蹴りをブラックグリズリーに叩き込むのを俺は呆然としてその光景を見ることとなった。ブラックグリズリーは森の木を何本かなぎ倒して彼に仕留められる。
「あはは、いきなり攻撃してくるとか怖いわよねー。よし、熊鍋にしましょう!」
後ろも振り返らずに敵を察する、お前が怖いわ!
腹を抱えながら笑い、熊を引きずってくる男の姿がなにかに重なるような気がした。
ふと前世で姉とした会話が蘇る。
「魔王ってどう思う?」
「魔王? やることが豪快なのに、おねぇ言葉なのが気になる」
「そうよね。なんでかしら」
しらんがな。そういう設定なんだろうよ。
「あと銀髪のオールバックで、口にピアスしてて、タトゥーを入れてるところが怖い」
銀髪のオールバックはフードで見えない。しかし、口にピアスはしている。タトゥーされているという腕は露出されていないためわからない。
「えーと、あなた魔王様でいらっしゃいます?」
「そうなの?」
いや、こっちが聞いているんじゃい! 質問を疑問で返すな!
「とりあえず、フードをとってくれればわかるかもしれません」
「そういえばフードをかぶってたわねー、森って虫が多くていやよねー」と言いながらフードを後ろへ下ろした。
うん、ビンゴ。あんたさんはまぎれもなく魔王や。十代後半くらいの容姿でイケメンなところも腹が立つ。
「じゃ、俺たちはそういうことで」
「そういうことでって、どういうことで?! あ、ちょっと待って、君の後ろにいる子って、モラハ・ラスゴイ?」
俺の後ろに転がっている金髪のデブをひょいっと覗き見て魔王が言った。
「え?」
魔王ってモラハ・ラスゴイのこと知っているのか?
原作ではモラハ・ラスゴイは主人公たちが敵と混戦した際、主人公の仲間たちの罠にかかって『ざまぁ』される運命で、それを俺は回避させたいと思って努力しているわけだ。しかし、モラハ・ラスゴイが魔王に会うことなどない。しかも、モラハ・ラスゴイは今のところただの子供でしかないのだ。だって、ストーリーがまだ始まっていないんだからな。
「そっかー、野良ドラゴンに魅了をかけてモラハ・ラスゴイを始末しようとしたのに失敗しちゃってたんだー」
今までの謎を全部説明してくれて理解できた!! っていうか、お前のせいかよ!?
「な、なんのために?!」
「『貴族学園らぶみーどぅー』で主人公たちの邪魔をするからよ。先に殺しておけばスムーズに物語が進むでしょ? それを眺めるのを楽しみにしているのよね」
それって、自分が転生者だって教えていることをわかっているんだろうか。
「ストーリーを改変しようとしてるのか?」
「彼女たちのラブラブイチャイチャが見られればいいし。そこに邪魔者いらないでしょ?」
「お前魔王だよな。最終的に殺されるんじゃないのか?」
悪役を始末するよりも主人公である双子を殺した方が魔王だって助かるのではないだろうか。それよりもイチャイチャラブラブが見たいために悪役の始末を優先させるなんてな。どうかしてるぜ。
「へぇ? 君は知っているんだね。この世界のこと。この物語のことを。転生者かなぁ?」
片手に闇魔法なのか真っ黒い渦を出現させた。
うげっ、こいつマジでやばい奴だわっ! 子供相手に大人げなくない?! あ、子供殺すような奴だった。話し合いよりも前に攻撃態勢に入るとか頭おかしすぎだろっ?!!
目の前にいる魔王を俺は凝視しながら迎撃せざるをえない状況に泣きたくなっていた。
◇
少し時間は遡り……。
ドラゴンに運ばれている俺とモラハ様は空の散歩をこれでもかと堪能させられていた。
そもそも連れ去られる理由もわからないし、終着点もわからないのでそろそろ自分で降車場所を決めないとと考えているところだった。
「ジョブ変更:賢者」
『我即神也……、我守護する者也、我魔法防壁を築く者也』
俺はぼそぼそとお決まりの神もどきなセリフを呟いていく。『守護』は物理攻撃やダメージを軽減し、『魔法防壁』は魔法によるダメージを軽減だ。ダメージが対象指定だから、攻撃魔法を放ってもこちらへの被害はないと思うものの念のためかけておく。
『雷帝の眷属の力、九天雷……』
唱えた瞬間ドラゴンに九つの雷が立て続けに落ちた。羽ばたきが止まり重力で落下する。『九天雷』は言葉の通り天から雷を九つ対象に落としダメージを与える魔法だ。
黒焦げになったドラゴンは俺たちの縄を足に引っ掛けたまま急降下していく。
「な、なんどぁぁああああああああっ?!」
モラハ様が叫びながら俺の背骨を折る勢いで抱きしめてきた。
「ぐふぉぉっ!!」
ドラゴンに殺される前にお前に殺されるわっ! 力加減考えろやぼけぇっ!
俺は血反吐を吐きながら知恵の輪を解くように縄をはずした。
賢者のジョブを使用している間は空中浮遊ができるようなので、落下して地面に打ち付けられることはないはずだ。
案の定、ドラゴンが墜落してくのを見ながら俺たちはゆっくりと降下していく。
地面につくと安心したのかモラハ様は気を失ってしまったが、おとなしくなったのでよかったと思う。
「ジョブ変更:ドコニ・デモイル!」
俺は元に戻り、周囲を確認する。森の中ではあるがどこの森なのかわからない。なにか最適なジョブはないだろうか。
探していくと『レンジャー』というジョブが、野外での探索やサバイバルに優れたスキルをもっているようだ。へぇ、追跡や偵察、動物との共闘などが含まれている……か。
「ジョブ変更:レンジャー!」
『わいはレンジャー! チャレンジャー! アドベンチャー!』
(……)
誰も見てないよな。こんな森の中だし。モラハ様を見れば地面に転がって意識はないことを確認する。見られていないようだとホッと胸をなでおろしたところに「ぷっ」と吹きだすような音がした。
「なにそれ?」
低い声だ。男が一人腕を胸の前で組みながら木にもたれてこちらを見ている。
目の前の男は、黒いフード付きのパーカーにラフな黒いズボンをはいており、フードをかぶっているため口元までしか見えない。唇には銀のピアスが3つ見えた。
この世界にパーカーなんてあるんだー。口にピアスとか、斬新だわー。
っていうか、こんな深い森に人っているんだな。なんか森の民って感じもしないんだけどな。むしろ前世で渋谷とかにいそうな人っぽい。
「えーと?」
「あたし迷子なのよね、助けてくれない?」
「はい?」
あ、彼の後ろに大きな影ができる。ブラックグリズリーという黒い熊が手を持ち上げて振り下ろそうとしているところだった。
男は回し蹴りをブラックグリズリーに叩き込むのを俺は呆然としてその光景を見ることとなった。ブラックグリズリーは森の木を何本かなぎ倒して彼に仕留められる。
「あはは、いきなり攻撃してくるとか怖いわよねー。よし、熊鍋にしましょう!」
後ろも振り返らずに敵を察する、お前が怖いわ!
腹を抱えながら笑い、熊を引きずってくる男の姿がなにかに重なるような気がした。
ふと前世で姉とした会話が蘇る。
「魔王ってどう思う?」
「魔王? やることが豪快なのに、おねぇ言葉なのが気になる」
「そうよね。なんでかしら」
しらんがな。そういう設定なんだろうよ。
「あと銀髪のオールバックで、口にピアスしてて、タトゥーを入れてるところが怖い」
銀髪のオールバックはフードで見えない。しかし、口にピアスはしている。タトゥーされているという腕は露出されていないためわからない。
「えーと、あなた魔王様でいらっしゃいます?」
「そうなの?」
いや、こっちが聞いているんじゃい! 質問を疑問で返すな!
「とりあえず、フードをとってくれればわかるかもしれません」
「そういえばフードをかぶってたわねー、森って虫が多くていやよねー」と言いながらフードを後ろへ下ろした。
うん、ビンゴ。あんたさんはまぎれもなく魔王や。十代後半くらいの容姿でイケメンなところも腹が立つ。
「じゃ、俺たちはそういうことで」
「そういうことでって、どういうことで?! あ、ちょっと待って、君の後ろにいる子って、モラハ・ラスゴイ?」
俺の後ろに転がっている金髪のデブをひょいっと覗き見て魔王が言った。
「え?」
魔王ってモラハ・ラスゴイのこと知っているのか?
原作ではモラハ・ラスゴイは主人公たちが敵と混戦した際、主人公の仲間たちの罠にかかって『ざまぁ』される運命で、それを俺は回避させたいと思って努力しているわけだ。しかし、モラハ・ラスゴイが魔王に会うことなどない。しかも、モラハ・ラスゴイは今のところただの子供でしかないのだ。だって、ストーリーがまだ始まっていないんだからな。
「そっかー、野良ドラゴンに魅了をかけてモラハ・ラスゴイを始末しようとしたのに失敗しちゃってたんだー」
今までの謎を全部説明してくれて理解できた!! っていうか、お前のせいかよ!?
「な、なんのために?!」
「『貴族学園らぶみーどぅー』で主人公たちの邪魔をするからよ。先に殺しておけばスムーズに物語が進むでしょ? それを眺めるのを楽しみにしているのよね」
それって、自分が転生者だって教えていることをわかっているんだろうか。
「ストーリーを改変しようとしてるのか?」
「彼女たちのラブラブイチャイチャが見られればいいし。そこに邪魔者いらないでしょ?」
「お前魔王だよな。最終的に殺されるんじゃないのか?」
悪役を始末するよりも主人公である双子を殺した方が魔王だって助かるのではないだろうか。それよりもイチャイチャラブラブが見たいために悪役の始末を優先させるなんてな。どうかしてるぜ。
「へぇ? 君は知っているんだね。この世界のこと。この物語のことを。転生者かなぁ?」
片手に闇魔法なのか真っ黒い渦を出現させた。
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