悪役令息の三下取り巻きに転生したけれど、チートがすごすぎて三下になりきれませんでした

あいま

文字の大きさ
21 / 25

魔王を迎撃?(マーチャント)

しおりを挟む
 そして今、魔王を迎撃せざるをえない状況に至っている。

 迎撃と言っても攻撃をするつもりはない。魔王が仕掛けてきたのは、ある意味自己都合だ。

 大きな闇魔法を目の前に振りかぶっている魔王に俺は待ったをかける。

『魔王様お待ちください。本当によろしいのですか?』

 ここで戦い始めたら俺の方が分が悪い。モラハ様を守りながら戦うのは今の俺ではなんとかなるような問題じゃない。魔王の攻撃なんて一撃食らえば即死ものだ。

「なにがよ」
『貴方が始末しようとしているモラハ・ラスゴイのことです』

 魔王が本来のストーリーを逸脱するのは構わないが、俺と命が繋がっているモラハ様の死を回避できない状況に陥らせないでほしい。頑張っている俺の努力が報われないだろ。

 魔王には延々とモラハ様を始末した際のデメリットを説明していく。

『推測になりますがストーリー通りの進行でない場合本来あるべきイベントが起きないわけですから、双子の主人公を取り巻く登場人物の影響は計り知れません。例えば、悪役から主人公を守ろうとしていた登場人物との接点の消失にはじまり、好意の有無による関係値の行動心理にまでおよび「あー、わかった。わかった」さらには』

 魔王が手のひらをひらひら振りながら俺の言葉を遮る。

「悪役も主人公からしてみれば、必要悪ってことね。もともとのシナリオがあるわけだし。悪役も主人公にとって大事なスパイスってわかったわよ。どのみち、悪役のそいつは死ぬ運命にあるもんね」

 死なせねぇけどな。

『ご理解いただけて恐縮です』

 ジョブをマーチャントに変更しておいて良かった……!!! 商人系のスキルが充実しているから、説得が成功したのかもしれない。相手が少し疑問に思ったくらいでは説得を失敗させる脅威にはならないってことがわかった。交渉に関係するスキルMaxだしな。

「ねぇ、あたしが最初に言ったこと覚えてる?」

 なんだっけ?

 そう思ったが口からはぺらぺらと魔王が言っていた言葉が滑るようにでてくる。

『えぇ、もちろんです。道に迷われてしまったとお聞きしております。転生者という特殊な状況を鑑みるに帰る場所もないというところでしょうか』
「うん。そうなの。元の世界に戻れるのかもわからないし、性別まで変わってるし。あたし魔王なんでしょ? 鏡がないから自分のことなんてわからないじゃない? できることと言ったら、魅了のような魔法を使ったり、戦ってみたりするくらいなのよね」

 じゃぁ、そもそもどうやって野良ドラゴンに魅了をかけたんだよ。っていうか、聞き捨てならない言葉がちらっとでたな。

『どのようにして神にも等しいドラゴンに魅了をかけたのかとても興味があります』

 ないない。全然興味ない。さっさと魔王の前から立ち去りたい!

「気になるわよね。来たばっかりでこの世界のスキルが使えるなんて不思議に思うわよね。魅了については、女神様に教えてもらったのよ。話がとっても長くなっちゃったけど、雑談なんてそんなものよね。まさか魔王に転生してるなんて思わなかったけど。とにかく女神様に異世界に転移させてもらったら、目の前にドラゴンがいるじゃない? それで、「貴族学園らぶみーどぅー」の世界ってあたし教えてもらっていたわけよ。とりあえず、魅了かけるでしょ」

 とりあえずで、普通はドラゴンに魅了なんてかけねーよ?! アホなの?

『なるほど。そうだったんですね。ちなみに可愛らしい話し方も転生前からですか?』
「そうよ。男性になったとしても前世の記憶があるからすぐに変えるのは難しいわね……」

 ひっかかってた言葉がでてきた。そうだよ、魔王の前世の性別って女の子だったの?! わぁ、可哀想……って、全然、可哀想じゃねーよ。悪役っていうだけで子供の時に始末しようなんて考えてドラゴンをよこしてくるくらいだからな。こいつは元々頭おかしい女の子だったんだ。

『それはご苦労されましたね』

 俺が苦労しまくったけどな?! マーチャントってジョブはフェミニストっていうか優しすぎじゃねぇの?!

「迷子になってから一日もたってないけどね!」

 少しは苦労しろよ、元女の子。

『戻る場所もないとなると心細いことでしょう。それでは居場所を提供する代わりに是非あなた様の類まれなる力をおかしくださいませ』

 え? 何言っちゃってんの?! やめて? 本当にやめて?! 金の匂いでもかぎつけたのか?! マーチャントおおおおおっ!!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...