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魔法の剣
理想の人生
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クラン・暁鴉に所属したテックは、クラン経由で依頼を受けられる。
冒険者会が直接に紹介する、時間がかかる前提の長期依頼は、概してベテラン向けだ。
クランに依らず、実力がある者同士が協力して稼ぐ。これが長期依頼を受ける冒険者のニーズなのである。
長期依頼としては、魔物の巣窟を掃討するとか、凶悪な賞金首を捕らえるとかいった経験が物をいう内容が多い。
それに対して、クランが提供する依頼は小規模から中規模程度の案件だ。
1人で受けるような、探偵がするような浮気調査やペット探しもあれば、屋根裏のネズミ退治や農作業の手伝いなど、いかにも下積みといった内容まで雑多にある。
テックは、何かと山や林の所有権や畑の始末などの話ばかりのバカサの人たちが当たり前だったので、その生活の変わりように刺激された。
思っていたよりもずっと自由で、畑の前である事ない事を言ってへらへらしなくて良いというだけで、最高に解放された気分なのだ。
「テックさん、調子はどうかな」
「ヤン先輩、お疲れ様です。いやあ1人暮らしって、かなりキツいっすね」
指導にやって来たヤンと、他愛ない世間話を交わす。
「テックさんは飲みこみが早いから、こちらも教え甲斐があるよ」
ヤンは笑った。爽やかな笑顔が他の冒険者からも評判なヤンは、暁鴉のエースだ。
「ヤンさん、後でアタシたちにも色々教えてくださぁい」
「あぁ。抜け駆けだぁ、ずるぅ~い」
昔風に言うならキャピキャピのギャルみたいな女子でさえ、冒険者をする時代。
ある意味、モテてはいるのでヤンも悪い気まではしないのだろう。人一倍、面倒見が良いヤンは、人柄の良さにおいても他の冒険者とは一線を画しているのだ。
「テックくん、ちょっとノド乾かない?飲み物を買いに行こうよ」
「行きましょう。ちょうど俺も、そう思ってたんすよ~」
テックは勤勉だが、長い物には巻かれるタイプだ。実力も信頼もあるヤンに、テックは迷わずぺこぺこする世渡り願望が至る所で出てしまうのだ。
「今日は、俺の奢りで良いよ」
「え、いやいや、悪いですって。自分で出しますから、それくらい」
まるでサラリーマンかのように安い気遣いしか、テックには出来ない。だがまあ、ヤンとの師弟関係は良好のようだ。
「そうだ、テックさん。ちょっとテストしよう。今まで教えた範囲から、適当に聞くから、どんどん答えてくれ」
「うわ、学校の授業みたいですね。でも、いいですよ。お願いします。」
クランの活動にあたっては、特に試験はない。ただ、法律などのルールはやはりそれなりにあり、新人に指導するシステムも不正な活動の防止のために定められたルールから来ているのだ。
そうした成り立ちであるから、ヤンのような熱心な指導担当は、あらゆる手段を講じて冒険者としての生き方を教え込むのである。
「ヤン先輩には、理想の人生ってあります?」
ふと、テックは思った事を口にした。そうした理想があるなら、是非とも聞いてみたいという素直な気持ちがそうさせたのだ。
「そうだなあ。俺は教えるのが上手いって誉められるのが嬉しくて、教える事自体もとても楽しいんだ。だからこのまま講師を続けていけるのが、理想なんだと思ってるよ」
そして「テックさんは、どんな人生が理想かな」と切り返されたので、テックも答える空気になった。
「まず親孝行したい、ですかね。だから稼げるようになって、そこそこ人生をやっていけるように強くなる。ま、そんな感じです」
「なるほど、悪くない考えだと俺は思う。応援してるぜ。・・・あ、まずい。そろそろ会議の時間だ。じゃ、俺は席を外すけど、ゆっくり勉強していって構わないからね」
ヤンは爽やかに去って行った。それを見届けると「勉強するしかないよね」という顔で受付のお姉さんがちらちら見てきたので、テックは勉強していく羽目になったのだった。
テックの今の住まいは、冒険学校が所有している学生寮だ。そこで、テックは一人暮らしをしているのである。
家具はまだ、あまり揃えていない。調理器具や、テーブルなど最低限だけ購入し、後は必要と感じたら買えば良いと考えているようだ。
「そう言えば、おみやげ貰ったんだった」
テックはクラン長が分けてくれた、ステュデオ山の土産であるチーズ菓子を頬張った。
「うめえ」
きっと、バカサにいたままなら一生、メルマド名物のコウモリもなかくらいしか、お菓子など口にする事がなかっただろうな、とテックはしみじみした。
冒険学校の編入試験以来、刺客は襲ってこない。まさか、学生生活に慣れるまで待っているとも思えないが、来ない者にいつまでも怯えていても無意味。そう割り切り、テックは今日を迎えていた。
「来ないなら、平和で良いんだぜ。何が不満なんだ」
神託の庭。テックは冒険学校に来てからも、今まで通り稽古を付けてもらっている。
だがふと思う所があり、テックはフレイアに話しかけた。
「キジュアとかいうヤツの空間に出てこれたろ。こっちの世界に来れるなら、ババアが来いよ」
それに対するフレイアの答えは、こうだ。
「イヤだ、面倒くさい」
冒険者会が直接に紹介する、時間がかかる前提の長期依頼は、概してベテラン向けだ。
クランに依らず、実力がある者同士が協力して稼ぐ。これが長期依頼を受ける冒険者のニーズなのである。
長期依頼としては、魔物の巣窟を掃討するとか、凶悪な賞金首を捕らえるとかいった経験が物をいう内容が多い。
それに対して、クランが提供する依頼は小規模から中規模程度の案件だ。
1人で受けるような、探偵がするような浮気調査やペット探しもあれば、屋根裏のネズミ退治や農作業の手伝いなど、いかにも下積みといった内容まで雑多にある。
テックは、何かと山や林の所有権や畑の始末などの話ばかりのバカサの人たちが当たり前だったので、その生活の変わりように刺激された。
思っていたよりもずっと自由で、畑の前である事ない事を言ってへらへらしなくて良いというだけで、最高に解放された気分なのだ。
「テックさん、調子はどうかな」
「ヤン先輩、お疲れ様です。いやあ1人暮らしって、かなりキツいっすね」
指導にやって来たヤンと、他愛ない世間話を交わす。
「テックさんは飲みこみが早いから、こちらも教え甲斐があるよ」
ヤンは笑った。爽やかな笑顔が他の冒険者からも評判なヤンは、暁鴉のエースだ。
「ヤンさん、後でアタシたちにも色々教えてくださぁい」
「あぁ。抜け駆けだぁ、ずるぅ~い」
昔風に言うならキャピキャピのギャルみたいな女子でさえ、冒険者をする時代。
ある意味、モテてはいるのでヤンも悪い気まではしないのだろう。人一倍、面倒見が良いヤンは、人柄の良さにおいても他の冒険者とは一線を画しているのだ。
「テックくん、ちょっとノド乾かない?飲み物を買いに行こうよ」
「行きましょう。ちょうど俺も、そう思ってたんすよ~」
テックは勤勉だが、長い物には巻かれるタイプだ。実力も信頼もあるヤンに、テックは迷わずぺこぺこする世渡り願望が至る所で出てしまうのだ。
「今日は、俺の奢りで良いよ」
「え、いやいや、悪いですって。自分で出しますから、それくらい」
まるでサラリーマンかのように安い気遣いしか、テックには出来ない。だがまあ、ヤンとの師弟関係は良好のようだ。
「そうだ、テックさん。ちょっとテストしよう。今まで教えた範囲から、適当に聞くから、どんどん答えてくれ」
「うわ、学校の授業みたいですね。でも、いいですよ。お願いします。」
クランの活動にあたっては、特に試験はない。ただ、法律などのルールはやはりそれなりにあり、新人に指導するシステムも不正な活動の防止のために定められたルールから来ているのだ。
そうした成り立ちであるから、ヤンのような熱心な指導担当は、あらゆる手段を講じて冒険者としての生き方を教え込むのである。
「ヤン先輩には、理想の人生ってあります?」
ふと、テックは思った事を口にした。そうした理想があるなら、是非とも聞いてみたいという素直な気持ちがそうさせたのだ。
「そうだなあ。俺は教えるのが上手いって誉められるのが嬉しくて、教える事自体もとても楽しいんだ。だからこのまま講師を続けていけるのが、理想なんだと思ってるよ」
そして「テックさんは、どんな人生が理想かな」と切り返されたので、テックも答える空気になった。
「まず親孝行したい、ですかね。だから稼げるようになって、そこそこ人生をやっていけるように強くなる。ま、そんな感じです」
「なるほど、悪くない考えだと俺は思う。応援してるぜ。・・・あ、まずい。そろそろ会議の時間だ。じゃ、俺は席を外すけど、ゆっくり勉強していって構わないからね」
ヤンは爽やかに去って行った。それを見届けると「勉強するしかないよね」という顔で受付のお姉さんがちらちら見てきたので、テックは勉強していく羽目になったのだった。
テックの今の住まいは、冒険学校が所有している学生寮だ。そこで、テックは一人暮らしをしているのである。
家具はまだ、あまり揃えていない。調理器具や、テーブルなど最低限だけ購入し、後は必要と感じたら買えば良いと考えているようだ。
「そう言えば、おみやげ貰ったんだった」
テックはクラン長が分けてくれた、ステュデオ山の土産であるチーズ菓子を頬張った。
「うめえ」
きっと、バカサにいたままなら一生、メルマド名物のコウモリもなかくらいしか、お菓子など口にする事がなかっただろうな、とテックはしみじみした。
冒険学校の編入試験以来、刺客は襲ってこない。まさか、学生生活に慣れるまで待っているとも思えないが、来ない者にいつまでも怯えていても無意味。そう割り切り、テックは今日を迎えていた。
「来ないなら、平和で良いんだぜ。何が不満なんだ」
神託の庭。テックは冒険学校に来てからも、今まで通り稽古を付けてもらっている。
だがふと思う所があり、テックはフレイアに話しかけた。
「キジュアとかいうヤツの空間に出てこれたろ。こっちの世界に来れるなら、ババアが来いよ」
それに対するフレイアの答えは、こうだ。
「イヤだ、面倒くさい」
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