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グランド・アーク
光
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人間にとって、魔法は禁忌だ。
〈世界の秘密〉。簡単には魔法を使えないようにして、人は平和を築いてきた。
そして〈世界の秘密〉を保存しているのが魂の杖だ。その事実は人間でも魔物でも、ごく一部しか知らない。
スフィアの一族、ジルアファン家の者は、代々魂の杖の秘密を受け継いできた。
魂の杖そのものは、1つではない。
マテリアーの城にあるのと同等の力を持つ魂の杖は、マテリアーの物を含めて、全部で5本存在する。
しかし魂の杖の本来の力は、ジルアファンの血を継ぐ者にしか使う事が出来ない。
禁忌とされる魔法、それ以上の禁忌である杖の力。その力を使う資質を持つ者の一人が、スフィアなのだ。
スフィアから放たれた金色の光が、スプリガンたちに降り注いでいく。
「ヴ・・ヴ・・ププ?」
スプリガンたちは、忘れかけていた何かを思い出した。それは、妖精の気持ち。
まだ人が妖精と遊んでくれた時代の、懐かしく温かい、先祖たちの記憶だったのだや、
「プー。プピリップ」
表情からも凶暴さは薄らぎ、陽気で優しい性格が見て取れる、柔和な表情となった。
「みんな・・・分かってくれたのね」
奇跡を起こしたのはスフィアだ。しかしそれを知ってか知らずか、彼女は目に涙を浮かべながらにこやかに微笑むのだった。
ダランは、目を疑った。
ワルガーは左足だけで、翼竜槍を受け止めたのだ。
「ちっちっち。悪くはないが、甘いな」
そして、拳を連打した。
拳の幻想。その身に受けた拳は、神経を麻痺させ人に幻を見せる。
ひとつとして避ける事も出来ず、全ての打撃を浴びてダランは倒れた。
しかし次の瞬間、ワルガーも膝を付いていた。
「なっ、まさか、受け止めた衝撃で」
正確には、衝撃だけではない。摩擦で高温になった槍の刃先に触れるのは、竜の炎に触れると同じ。
受け止めたとしても、触れた時点で浴びた熱は全身火傷するレベルに等しい。
ワルガーだからこそ火傷しないだけで、体力だけはごっそりと奪われたワルガーもまた、もう戦える状態ではなかったのだった。
「キミ、大丈夫プリか?」
スプスーは、なぜかマジルを治療していた。僧侶ではないが、スプスーは回復魔法も使えるのだ。
「うっ。・・・お、お前は。なぜ私を助ける」
「ボクちんは勝ったっプ。だから、ボクちんとマーちんは友だちプリ」
無理をして、苦手なウインクを決めたスプスー。
「お人好しにも程があるだろ。私は、人を殺したと言っているだろう」
「じゃあ、もう誰も殺さなくて良いプリ」
「・・・!?」
頭のネジが足りてない、とマジルは思った。人殺しに許しを与えるばかりか、友だち呼ばわりし、しかも殺しすら辞めて良いと言う。
ただ、スプスーの言葉を聞いてだろうか、いつの間にかマジルは泣いていた。
「ずるい・・・。今まで、私、なんで、今さら」
「ごめんなさいプリ。友だちになってくれるなら、ボクちんの節穴っぷりも許してくれプよ」
もっと平和な時代なら、こんな会話は異常なのかもしれない。しかし今は人と魔物、いや、人と人さえも争いが絶えない戦の時代。
そんな中で今、一匹の妖精の勇気は一人の殺し屋の心に、一滴の温かい感情を間違いなく与えたのだった。
「・・・あれ、ここは」
ダランが目覚めたのは、スプリガンの住みかだ。スフィアやスプスーもそこにいた。
「スプリガン。ようやく会えたね」
スプスーは複雑な思いだが、ダランのその言葉に黙っていた。
今でこそ妖精らしさを取り戻した仲間たちだが、ダランに言えないような所業を山ほど積み重ねてきたのだ。
スプスーはそんな仲間たちの行いに加わってこそいなかったが、今にして思えば自らの至らなさもまたスプリガンたちの心を癒せなかった。
そう考えると、スプスーはまだ、ダランに何もかも正直にはなれないのだ。
「あれ、キミたちもいたのか」
ワルガーとマジルも、そこにいたのだ。
だが、不思議とダランは驚かなかった。
本気の戦いの後だ。たとえ敵意が失われておらずとも、今しばらくは戦える状態ではないだろう。
「おい、犬人間。マジルを助けたのはなぜだ」
ワルガーはスプスーに詰問した。心底、納得が行かないようだ。
「誰も戦わなくて良い世界が、夢なんプ」
「は?やっぱ魔物は、気違いだな。あとよ、負けたんだから俺も殺せよ。腐れ騎士でもまだ仁義はあんぞ」
「騎士に知り合いがいるのかね」
ダランに聞かれ「騎士なんていねえ。腐れ騎士だ」とだけ言い、ワルガーは壁の方を向いてしまった。
「ちなみに、ボクちんたちは犬じゃないからプリ。むしろ進化したカバだからプポポッポリ」
空気を読まないスプスーの言葉遣いは、優しくなったスプリガンたちの存在もあり、この時ばかりは幾らか場を和ませた。
マジルは、眠気で舟を漕いでいた。
一方、秘めた力を解放したスフィアは、深く眠っていた。
ダランもそうなっていたとして、おかしくはなかった。あれだけの打撃を受けてケロリとしているのだから、尋常ではない。
「あっ、ちなみにちなみに、魔物でなく妖精プリから」
スプスーのおしゃべりは、止まりそうにない。
〈世界の秘密〉。簡単には魔法を使えないようにして、人は平和を築いてきた。
そして〈世界の秘密〉を保存しているのが魂の杖だ。その事実は人間でも魔物でも、ごく一部しか知らない。
スフィアの一族、ジルアファン家の者は、代々魂の杖の秘密を受け継いできた。
魂の杖そのものは、1つではない。
マテリアーの城にあるのと同等の力を持つ魂の杖は、マテリアーの物を含めて、全部で5本存在する。
しかし魂の杖の本来の力は、ジルアファンの血を継ぐ者にしか使う事が出来ない。
禁忌とされる魔法、それ以上の禁忌である杖の力。その力を使う資質を持つ者の一人が、スフィアなのだ。
スフィアから放たれた金色の光が、スプリガンたちに降り注いでいく。
「ヴ・・ヴ・・ププ?」
スプリガンたちは、忘れかけていた何かを思い出した。それは、妖精の気持ち。
まだ人が妖精と遊んでくれた時代の、懐かしく温かい、先祖たちの記憶だったのだや、
「プー。プピリップ」
表情からも凶暴さは薄らぎ、陽気で優しい性格が見て取れる、柔和な表情となった。
「みんな・・・分かってくれたのね」
奇跡を起こしたのはスフィアだ。しかしそれを知ってか知らずか、彼女は目に涙を浮かべながらにこやかに微笑むのだった。
ダランは、目を疑った。
ワルガーは左足だけで、翼竜槍を受け止めたのだ。
「ちっちっち。悪くはないが、甘いな」
そして、拳を連打した。
拳の幻想。その身に受けた拳は、神経を麻痺させ人に幻を見せる。
ひとつとして避ける事も出来ず、全ての打撃を浴びてダランは倒れた。
しかし次の瞬間、ワルガーも膝を付いていた。
「なっ、まさか、受け止めた衝撃で」
正確には、衝撃だけではない。摩擦で高温になった槍の刃先に触れるのは、竜の炎に触れると同じ。
受け止めたとしても、触れた時点で浴びた熱は全身火傷するレベルに等しい。
ワルガーだからこそ火傷しないだけで、体力だけはごっそりと奪われたワルガーもまた、もう戦える状態ではなかったのだった。
「キミ、大丈夫プリか?」
スプスーは、なぜかマジルを治療していた。僧侶ではないが、スプスーは回復魔法も使えるのだ。
「うっ。・・・お、お前は。なぜ私を助ける」
「ボクちんは勝ったっプ。だから、ボクちんとマーちんは友だちプリ」
無理をして、苦手なウインクを決めたスプスー。
「お人好しにも程があるだろ。私は、人を殺したと言っているだろう」
「じゃあ、もう誰も殺さなくて良いプリ」
「・・・!?」
頭のネジが足りてない、とマジルは思った。人殺しに許しを与えるばかりか、友だち呼ばわりし、しかも殺しすら辞めて良いと言う。
ただ、スプスーの言葉を聞いてだろうか、いつの間にかマジルは泣いていた。
「ずるい・・・。今まで、私、なんで、今さら」
「ごめんなさいプリ。友だちになってくれるなら、ボクちんの節穴っぷりも許してくれプよ」
もっと平和な時代なら、こんな会話は異常なのかもしれない。しかし今は人と魔物、いや、人と人さえも争いが絶えない戦の時代。
そんな中で今、一匹の妖精の勇気は一人の殺し屋の心に、一滴の温かい感情を間違いなく与えたのだった。
「・・・あれ、ここは」
ダランが目覚めたのは、スプリガンの住みかだ。スフィアやスプスーもそこにいた。
「スプリガン。ようやく会えたね」
スプスーは複雑な思いだが、ダランのその言葉に黙っていた。
今でこそ妖精らしさを取り戻した仲間たちだが、ダランに言えないような所業を山ほど積み重ねてきたのだ。
スプスーはそんな仲間たちの行いに加わってこそいなかったが、今にして思えば自らの至らなさもまたスプリガンたちの心を癒せなかった。
そう考えると、スプスーはまだ、ダランに何もかも正直にはなれないのだ。
「あれ、キミたちもいたのか」
ワルガーとマジルも、そこにいたのだ。
だが、不思議とダランは驚かなかった。
本気の戦いの後だ。たとえ敵意が失われておらずとも、今しばらくは戦える状態ではないだろう。
「おい、犬人間。マジルを助けたのはなぜだ」
ワルガーはスプスーに詰問した。心底、納得が行かないようだ。
「誰も戦わなくて良い世界が、夢なんプ」
「は?やっぱ魔物は、気違いだな。あとよ、負けたんだから俺も殺せよ。腐れ騎士でもまだ仁義はあんぞ」
「騎士に知り合いがいるのかね」
ダランに聞かれ「騎士なんていねえ。腐れ騎士だ」とだけ言い、ワルガーは壁の方を向いてしまった。
「ちなみに、ボクちんたちは犬じゃないからプリ。むしろ進化したカバだからプポポッポリ」
空気を読まないスプスーの言葉遣いは、優しくなったスプリガンたちの存在もあり、この時ばかりは幾らか場を和ませた。
マジルは、眠気で舟を漕いでいた。
一方、秘めた力を解放したスフィアは、深く眠っていた。
ダランもそうなっていたとして、おかしくはなかった。あれだけの打撃を受けてケロリとしているのだから、尋常ではない。
「あっ、ちなみにちなみに、魔物でなく妖精プリから」
スプスーのおしゃべりは、止まりそうにない。
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