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魔法の剣
疾風
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テックは、ここ最近は冒険者としての活動に馴染むため、初歩的な依頼をこまめに受けるようにしている。
もちろん、失敗する事もある。猫探しを引き受け、本当に似たような猫が3回見つかり依頼主に届けた。しかし飼い主である依頼主には全く別の猫と分かり、3回目には悪ふざけと勘違いされた結果、灰皿を目に投げられたことがある。
また、ゴブリン退治においてまたしても苦戦した結果、依頼を諦めた事もある。低級の魔物でしかないゴブリンだが、リーダー格であるホブゴブリンがいたのだ。
魔物はその総合的な強さに応じて低級、中級、高級に分けられる。
実は冒険者にも似たような分類があるのだが、それはテックの冒険にはまだ、それほど関わらないので説明を省く。
ホブゴブリンは、ゴブリンより一回り大きい。ホブゴブリンとは別の、ゴブリンリーダーと呼ばれるゴブリンの上位種もいてややこしい。共に低級に属してはいるが、そもそも低級にもピンからキリまでいる。
級による分類は見直しが求められているほど大まかな目安でしかない。200年以上も昔の、まだ魔物がそこまで知られていなかった時代の初歩的な分類であるため、魔物が研究され多岐に渡る種類が確認された現代においては不合理とも言えるのだ。
ゴブリンとホブゴブリンはその代表として知られており、ホブゴブリンの方がゴブリンより、基本的に強い。
秋田犬と柴犬くらいは違っている。見た目は似たようなものだが、種として違うゴブリンなのだ。
賢さもホブゴブリンが上回るため、少数のホブゴブリンがボスとなり、ゴブリンをこき使うという生態は、珍しい事ではない。
だがテックは、そうした情報を知らないために、痛い目に遭ったというわけである。
もっとも、依頼の区分が間違っていたという背景もある。冒険者会側の調査不足で、ホブゴブリンがいる場合は初心者用の依頼に出してはいけないのだ。
つまりギルドの不手際なのだが、多忙によるこうしたミスは想定されてもいる。現に、ゴブリン退治の依頼ならば「ホブゴブリンを発見した場合は無理に戦わず、速やかに帰還してください」という注意書きはある。
依頼を受けた冒険者にも、ちゃっかり責任を課しているのだ。
ただ、皆さんも経験はあると思うのは、書類における細かい説明など、そもそも見ないだろう。
つまり、テックもそうだったのだ。
その結果、ホブゴブリンの入れ知恵で、挟み撃ちを受けたテックは、背後から奇襲を受け、そこそこの怪我を負ってしまったのだ。
生まれて初めての入院。
全治2週間。
無理に動くと傷口が開くため、テックの通院の希望は即刻、跳ねられた。
その間は、勉強くらいは許可されたが、戦闘訓練など出来るわけはない。
けれども、ノジアだからこその大病院に入院出来たため、テックは悪い気はしなかった。
ヤンがギルドからの謝罪も兼ね、見舞いに訪れた。また、別日には冒険学校で出来た友人であるショーンとアナも、面会にやって来た。
「テック、体調はどう?」
「かなり良いよ。もう退院したい」
「聞いてよ。ショーンったら、メロンは高いからってキウイしか買わせてくれなかったの」
「皮剥き面倒すぎない?」
「そ、それはアナがちゃんと止めなかったから」
テックたちは笑い合った。こんな会話だけで生きていけたらという儚い希望と共に、楽しい時間は過ぎていった。
退院後、テックは新しい戦い方を練習し始めた。
ムオルは、いつ再びテックの前に現れるか分からない。依頼を通して乱戦を学ぶ事は出来ても、敵は速さからしてテックを上回るのだ。
疾風飛び。
目指す動きに、テックはもう名前を与えていた。ステップを刻んでフットワークを最大限に高める移動法。テニスなどで行う、足踏みからの跳躍移動を更に素早く行うという動作が、テックが到達したい技だ。
しかし、一朝一夕で出来る動きでない事はすぐに分かった。動きその物は単純でも、足腰への負担はかなり大きい。
勉強や依頼、剣の稽古もこなさなければならないため、毎日の疲労はかなりのものとなった。
〈錆の者〉ムオルは、静かに佇んでいた。
刺客たちは、魂の杖の化身だ。
1本の魂の杖につき、一柱の化身が生まれた。
化身を生んだのは、大魔王ワレスでもなければゾーンでもない。
魂の杖そのものだ。
今、黒界の中にはムオルの他に二柱の刺客がいた。片方は、テックと一戦を交えたシーバース。もう片方は、生まれたばかりでまだ名前を持たない。
「反魔法だ。勇者が使うのはおそらく、魔法の対を為す剣。だから我々、魔法生物は敗北しているのだろう」
ムオルは二度の戦いで、テックが火や氷といった属性を使いながらも刺客を倒したという点に注目した。
魂の杖が持つ、大魔法の力。その化身に、下位互換である魔法は通用しないはずだからだ。
「なんや、よう分からんがなあ、要するに奴さんは強いんやな」
シーバースは、仕組みを知っても勝てなければ無意味と言わんばかりに、何もない暗闇を蹴ったのだった。
もちろん、失敗する事もある。猫探しを引き受け、本当に似たような猫が3回見つかり依頼主に届けた。しかし飼い主である依頼主には全く別の猫と分かり、3回目には悪ふざけと勘違いされた結果、灰皿を目に投げられたことがある。
また、ゴブリン退治においてまたしても苦戦した結果、依頼を諦めた事もある。低級の魔物でしかないゴブリンだが、リーダー格であるホブゴブリンがいたのだ。
魔物はその総合的な強さに応じて低級、中級、高級に分けられる。
実は冒険者にも似たような分類があるのだが、それはテックの冒険にはまだ、それほど関わらないので説明を省く。
ホブゴブリンは、ゴブリンより一回り大きい。ホブゴブリンとは別の、ゴブリンリーダーと呼ばれるゴブリンの上位種もいてややこしい。共に低級に属してはいるが、そもそも低級にもピンからキリまでいる。
級による分類は見直しが求められているほど大まかな目安でしかない。200年以上も昔の、まだ魔物がそこまで知られていなかった時代の初歩的な分類であるため、魔物が研究され多岐に渡る種類が確認された現代においては不合理とも言えるのだ。
ゴブリンとホブゴブリンはその代表として知られており、ホブゴブリンの方がゴブリンより、基本的に強い。
秋田犬と柴犬くらいは違っている。見た目は似たようなものだが、種として違うゴブリンなのだ。
賢さもホブゴブリンが上回るため、少数のホブゴブリンがボスとなり、ゴブリンをこき使うという生態は、珍しい事ではない。
だがテックは、そうした情報を知らないために、痛い目に遭ったというわけである。
もっとも、依頼の区分が間違っていたという背景もある。冒険者会側の調査不足で、ホブゴブリンがいる場合は初心者用の依頼に出してはいけないのだ。
つまりギルドの不手際なのだが、多忙によるこうしたミスは想定されてもいる。現に、ゴブリン退治の依頼ならば「ホブゴブリンを発見した場合は無理に戦わず、速やかに帰還してください」という注意書きはある。
依頼を受けた冒険者にも、ちゃっかり責任を課しているのだ。
ただ、皆さんも経験はあると思うのは、書類における細かい説明など、そもそも見ないだろう。
つまり、テックもそうだったのだ。
その結果、ホブゴブリンの入れ知恵で、挟み撃ちを受けたテックは、背後から奇襲を受け、そこそこの怪我を負ってしまったのだ。
生まれて初めての入院。
全治2週間。
無理に動くと傷口が開くため、テックの通院の希望は即刻、跳ねられた。
その間は、勉強くらいは許可されたが、戦闘訓練など出来るわけはない。
けれども、ノジアだからこその大病院に入院出来たため、テックは悪い気はしなかった。
ヤンがギルドからの謝罪も兼ね、見舞いに訪れた。また、別日には冒険学校で出来た友人であるショーンとアナも、面会にやって来た。
「テック、体調はどう?」
「かなり良いよ。もう退院したい」
「聞いてよ。ショーンったら、メロンは高いからってキウイしか買わせてくれなかったの」
「皮剥き面倒すぎない?」
「そ、それはアナがちゃんと止めなかったから」
テックたちは笑い合った。こんな会話だけで生きていけたらという儚い希望と共に、楽しい時間は過ぎていった。
退院後、テックは新しい戦い方を練習し始めた。
ムオルは、いつ再びテックの前に現れるか分からない。依頼を通して乱戦を学ぶ事は出来ても、敵は速さからしてテックを上回るのだ。
疾風飛び。
目指す動きに、テックはもう名前を与えていた。ステップを刻んでフットワークを最大限に高める移動法。テニスなどで行う、足踏みからの跳躍移動を更に素早く行うという動作が、テックが到達したい技だ。
しかし、一朝一夕で出来る動きでない事はすぐに分かった。動きその物は単純でも、足腰への負担はかなり大きい。
勉強や依頼、剣の稽古もこなさなければならないため、毎日の疲労はかなりのものとなった。
〈錆の者〉ムオルは、静かに佇んでいた。
刺客たちは、魂の杖の化身だ。
1本の魂の杖につき、一柱の化身が生まれた。
化身を生んだのは、大魔王ワレスでもなければゾーンでもない。
魂の杖そのものだ。
今、黒界の中にはムオルの他に二柱の刺客がいた。片方は、テックと一戦を交えたシーバース。もう片方は、生まれたばかりでまだ名前を持たない。
「反魔法だ。勇者が使うのはおそらく、魔法の対を為す剣。だから我々、魔法生物は敗北しているのだろう」
ムオルは二度の戦いで、テックが火や氷といった属性を使いながらも刺客を倒したという点に注目した。
魂の杖が持つ、大魔法の力。その化身に、下位互換である魔法は通用しないはずだからだ。
「なんや、よう分からんがなあ、要するに奴さんは強いんやな」
シーバースは、仕組みを知っても勝てなければ無意味と言わんばかりに、何もない暗闇を蹴ったのだった。
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