25 / 100
魔法の剣
賢者刀
しおりを挟む
至高の島への旅行は、テック、ショーン、アナの3人は参加した。
他にも、怪我が治ったガーンダムやラーモなどの模擬戦上位陣は、やはり参加した。
至高の島は毎年、マースドント冒険学校1年生の旅行先として定番だ。
「テック、見えてきたね。あれが至高の島だよ」
ショーンはわくわくしながら、テックに語りかけた。
至高の島。一体全体、何が至高なのか。
そんな事に思いを馳せながら、テックは参加した1年と数名の教師を載せたクルーザーに揺られていた。
「賢者刀みたいな遺物、俺も見つけてぇな」
テックたち1年を受け持つ教師の中には、テックが転入試験を受けた時の面接官もいた。
スガン=カーソム。
黒ぶち眼鏡の人とテックが密かに読んでいる、面接官だった教師の名だ。そして、テックが大の苦手とする薬草学を専門としているのがスガンなのだ。
「テックさん。ラフェンズ島にはカート反応を示す薬草があります。カート反応を示す薬草、覚えてますね」
「えっ、カート反応ってまず何でしたっけ」
「授業中に、中間試験には必ず出すと言いましたよ私は。カート反応は、トリクン試薬を何色から何色に変える反応でしたか」
「トリクン試薬。トリクン試薬だから、黄色から黒色ですか」
「それはハイパール試薬です」
スガンとしては良かれと思い、テックに本当に薬草学を得意になってほしくて色々と言うのだ。しかしテックには逆効果のようで、スガン自体をも苦手としてしまっていた。
「ははは。まあ、俺は大器晩成なんでって言うのは」
「晩成にも勉強は必須です。小さな幸せを学問で培い、大きな幸せを人生で手にする。それが人の道なのですから」
「そ、それは、そうですよ、ね」
苦手な人にテックはついつい、態度にまで出してしまう所があるのだ。
気まずい雰囲気の中、一行は至高の島に到着した。
ノジアやメルマドがあるフェセナ大陸ならば、ノジアからの船旅が最も理に適っている。単に、地理的にノジアに最も近いからだ。ノジア最大の港であるティンフシー港からだと、大体1時間もかからない。
スガンが言うラフェンズ島は、至高の島の旧称だ。十三傑テトンテスの功績により今では至高の島と改称されたが、古くから知る人々は今でもラフェンズ島と呼ぶ場合も少なくないのである。
「着いたね、テック」
「寄り道してはぐれちゃダメよ、ショーン」
「そ、それはテックだよ」
「バカ言え。俺は方向音痴なだけだ」
「余計にタチが悪いわね」
船着き場の近くには、賢者刀を握るテトンテスの像が立てられている。いかにも強い戦士という、角ばっていて、いかつい感じの顔つきのようだ。
また、賢者刀は刀とはいうが、日本刀のようなシャープなフォルムではなく、三日月刀と呼ばれる曲刀に近い。
「動き出して戦ってほしいな」
「確実に死ぬわね、そんなの」
「テックは戦いマニアだから」
「マニアじゃない。戦士なんだよ」
「はいはい、進むわよ。自由時間じゃないんだから」
賢者刀に手を伸ばして怒られているガーンダムを尻目に、一行は宿に向けて歩き出した。
賢者刀はテトンテスが見つけたとされるが、その場所は正確には明らかになっていない。至高の島の西部という、漠然とした情報が公式の発表であるから、その秘匿っぷりは並大抵ではない。
そして、その神秘性ゆえ、至高の島の西側にはいつもたくさんの冒険者で溢れ返っている。観光収入と輸入だけでやっていけるほど、至高の島の住民は生活様式が変わったのだ。
人によっては、俗っぽく賢者刀改革と呼ぶ者もいるそうした変化は、しかし多くの住民には好意的に受け止められている。
それはかつて、ラフェンズ島だった頃は未開の地という性質が強く、獣や盗賊による被害が多くて非常に住みにくかったからだと言われている。
テトンテスは、賢者刀の所有および使用が認められているらしい。
遺物で戦うなど禁則的な感じがするが、世界中央府が認めているという噂が本当ならば、テトンテスがそれだけの才能を持つという事なのかもしれない。
一方、島民の増加は断続的な紛争をもたらしているという話も実はある。
原因には諸説あるが、有力とされているのは、先住民と転入者との間の宗教の違いがあるというものだ。
島独自のサカ教は、厳しい掟がある事で有名だ。しかし転入者の大半の出身であるフェセナ大陸には精霊正教会の影響が強く、博愛主義の精霊思想がある。
博愛は厳格と、時に相容れないというのはなんとなく頷けてしまうのが、悲しい現実だ。
「宿の人は精霊主義らしいから、ほっとするよね」
「まあ、声を大にしてはいけないけど、そう、ね」
「俺、どっちかと言えばストイックだから、戦が起きたらお前らの敵だな」
「それは極端だよ、テック。戦までは望まないボクたちみたいなヤツもいるからさ」
「なんとなく毒がないか?その言い草」
「やめましょう二人とも。友情を壊しに、ここに来たんじゃないのよ」
仲良し3人組ですら、こうした価値観の違いは悩みの種だ。
そんな複雑な余韻を残しながら、一行は宿に着いたのだった。
他にも、怪我が治ったガーンダムやラーモなどの模擬戦上位陣は、やはり参加した。
至高の島は毎年、マースドント冒険学校1年生の旅行先として定番だ。
「テック、見えてきたね。あれが至高の島だよ」
ショーンはわくわくしながら、テックに語りかけた。
至高の島。一体全体、何が至高なのか。
そんな事に思いを馳せながら、テックは参加した1年と数名の教師を載せたクルーザーに揺られていた。
「賢者刀みたいな遺物、俺も見つけてぇな」
テックたち1年を受け持つ教師の中には、テックが転入試験を受けた時の面接官もいた。
スガン=カーソム。
黒ぶち眼鏡の人とテックが密かに読んでいる、面接官だった教師の名だ。そして、テックが大の苦手とする薬草学を専門としているのがスガンなのだ。
「テックさん。ラフェンズ島にはカート反応を示す薬草があります。カート反応を示す薬草、覚えてますね」
「えっ、カート反応ってまず何でしたっけ」
「授業中に、中間試験には必ず出すと言いましたよ私は。カート反応は、トリクン試薬を何色から何色に変える反応でしたか」
「トリクン試薬。トリクン試薬だから、黄色から黒色ですか」
「それはハイパール試薬です」
スガンとしては良かれと思い、テックに本当に薬草学を得意になってほしくて色々と言うのだ。しかしテックには逆効果のようで、スガン自体をも苦手としてしまっていた。
「ははは。まあ、俺は大器晩成なんでって言うのは」
「晩成にも勉強は必須です。小さな幸せを学問で培い、大きな幸せを人生で手にする。それが人の道なのですから」
「そ、それは、そうですよ、ね」
苦手な人にテックはついつい、態度にまで出してしまう所があるのだ。
気まずい雰囲気の中、一行は至高の島に到着した。
ノジアやメルマドがあるフェセナ大陸ならば、ノジアからの船旅が最も理に適っている。単に、地理的にノジアに最も近いからだ。ノジア最大の港であるティンフシー港からだと、大体1時間もかからない。
スガンが言うラフェンズ島は、至高の島の旧称だ。十三傑テトンテスの功績により今では至高の島と改称されたが、古くから知る人々は今でもラフェンズ島と呼ぶ場合も少なくないのである。
「着いたね、テック」
「寄り道してはぐれちゃダメよ、ショーン」
「そ、それはテックだよ」
「バカ言え。俺は方向音痴なだけだ」
「余計にタチが悪いわね」
船着き場の近くには、賢者刀を握るテトンテスの像が立てられている。いかにも強い戦士という、角ばっていて、いかつい感じの顔つきのようだ。
また、賢者刀は刀とはいうが、日本刀のようなシャープなフォルムではなく、三日月刀と呼ばれる曲刀に近い。
「動き出して戦ってほしいな」
「確実に死ぬわね、そんなの」
「テックは戦いマニアだから」
「マニアじゃない。戦士なんだよ」
「はいはい、進むわよ。自由時間じゃないんだから」
賢者刀に手を伸ばして怒られているガーンダムを尻目に、一行は宿に向けて歩き出した。
賢者刀はテトンテスが見つけたとされるが、その場所は正確には明らかになっていない。至高の島の西部という、漠然とした情報が公式の発表であるから、その秘匿っぷりは並大抵ではない。
そして、その神秘性ゆえ、至高の島の西側にはいつもたくさんの冒険者で溢れ返っている。観光収入と輸入だけでやっていけるほど、至高の島の住民は生活様式が変わったのだ。
人によっては、俗っぽく賢者刀改革と呼ぶ者もいるそうした変化は、しかし多くの住民には好意的に受け止められている。
それはかつて、ラフェンズ島だった頃は未開の地という性質が強く、獣や盗賊による被害が多くて非常に住みにくかったからだと言われている。
テトンテスは、賢者刀の所有および使用が認められているらしい。
遺物で戦うなど禁則的な感じがするが、世界中央府が認めているという噂が本当ならば、テトンテスがそれだけの才能を持つという事なのかもしれない。
一方、島民の増加は断続的な紛争をもたらしているという話も実はある。
原因には諸説あるが、有力とされているのは、先住民と転入者との間の宗教の違いがあるというものだ。
島独自のサカ教は、厳しい掟がある事で有名だ。しかし転入者の大半の出身であるフェセナ大陸には精霊正教会の影響が強く、博愛主義の精霊思想がある。
博愛は厳格と、時に相容れないというのはなんとなく頷けてしまうのが、悲しい現実だ。
「宿の人は精霊主義らしいから、ほっとするよね」
「まあ、声を大にしてはいけないけど、そう、ね」
「俺、どっちかと言えばストイックだから、戦が起きたらお前らの敵だな」
「それは極端だよ、テック。戦までは望まないボクたちみたいなヤツもいるからさ」
「なんとなく毒がないか?その言い草」
「やめましょう二人とも。友情を壊しに、ここに来たんじゃないのよ」
仲良し3人組ですら、こうした価値観の違いは悩みの種だ。
そんな複雑な余韻を残しながら、一行は宿に着いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる